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第五十八話(テイル・ブラウニー)
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夕日色のオレンジの髪に狼のような獣耳を生やしている人外少女の名はテイル・ブラウニー。
木ノ下日影が刑務所で出会った四人目の相棒でありペアである。
夏という暑くてだるくて胸糞悪い季節だってのに、彼女は被っているフードを絶対に外そうとしない。頭に生えたファンシーな獣耳を隠そうとしているのだろうが、フードには二つの穴が空いていてその耳は丸出しだ。全くと言って意味がない。
「ねぇ、包帯取って」
「はあ?何で取らなきゃならねーんだよ。俺怪我してんだぞ。お前に噛まれて重傷負ったんだ。分かるだろ?」
「食べたいから。駄目?」
愛嬌のある顔をしてはいるが、その外見に騙されてはならない。
発言がとてつもなく狂気的である。
奉仕作業に支障をきたした相棒を自分の餌としか思っていないようだ。
口元から犬歯を覗かせている姿は獲物を狙っているライオンに近い。
「だーめ。何が「食べたいから」だ。次あんなことしたら顔面ぱんちだからな」
「酷い言い様。テイル女の子。女性に暴力はよくない」
「うるせ。獣耳の生えた化け物を女の子とは言わないだろ」
「……テイルだって好き好んで化け物になりたかった訳じゃない。そういう言い方は失礼」
日影が率直に言い放った「化け物」という一言に、テイルは分かりやすくしょんぼりと落ち込んだ。さっきまでピンと立てていた獣耳がてろんと垂れ下がっている。
その姿はまるで飼い主に叱られたペットのようだ。
「あ……悪い。化け物は流石に傷付くか。それなら、狼男ならぬ狼娘何てどうだ?」
「ネーミングセンスの欠片もない。普通に名前で呼んで」
「名前って……あの焼き菓子みたいなヘンテコな奴か?ブラウニーって呼べば良いんだな」
「どうしてラストネーム?テイルで良い」
「あっそ……了解」
後々面倒なので包み隠さずに正直に話そう。
テイルは人間の女性と野生の狼♂との間に誕生した人間と動物のハーフだそうだ。
それを本人から直接聞いた時は俺も信じられないし、信じたくも無かったが、実例が目の前に存在するんだから認めるしかない。
交尾というべきかSEXというべきか、何とも微妙な所だが、動物相手でも子供って生まれるんだな。
テイルは母親に出産後すぐに捨てられたらしいから、家族の思い出とかは一切ない。厄介な体質を持っていて、肉を定期的に摂取しないと人間としての理性が保てなくなる。
野獣のような本能が覚醒し、過去に人を襲った経験が何度かあると聞く。その際に四人程殺めてしまったようだが、テイル自身は少しも憶えておらず、気が付いたら手錠を填められていて此処に居たそうだ。
可哀想なことに「死刑」が決まっているらしい。
そんな話を聞かされてしまっては、多少の悪戯では怒る気も失せる。腕を噛みちぎられそうになったってのに何言ってんだって話かもしれないが、最後の瞬間を迎えるまでは出来るだけ優しく接してやろうと思うんだ。
人生が残り一年半か……、四人の命を奪っているとはいえ、十三歳の少女には重すぎる判決だな。
「テイル。お前死ぬのは怖くないのか?死刑執行日まであまり時間が無いんだぞ」
「別に。怖くない」
「腹を括るのが早すぎやしないか?潔いと言えば聞こえは良いのかもしれないが、俺だったら絶対に嫌だけどな。最後まで抗ってみようとは思わないのか?例えば奉仕作業を頑張るとかさ。貢献の結果によっては死刑が取り消しになる可能性だってあると思うぞ」
「そう、なの?」
こてんと首を傾げてから日影の顔を覗き込んできたテイルの顔は無表情だったが、僅かには興味を持てたようでこっちが安心させられた。
「ああ。だからさ「別に」何て強がり言ってないで、一緒に奉仕作業頑張ろうな。俺も相棒として出来る限りの協力はするから」
これから宜しくの手を差し伸べると、テイルはその手を取らずに俺の手にがぶりと噛み付いた。
……ま、この異様なスキンシップにも昨日と今日で大分慣れてきたけどさ。
照れ隠しにはちょっと激し過ぎるだろ……。
近所の野良犬に噛まれた経験が何度かあるが、それと比べ物にならないくらいには強烈な一撃だ。
日影が二日続けて痛手を負ったのは言うまでもない。
木ノ下日影が刑務所で出会った四人目の相棒でありペアである。
夏という暑くてだるくて胸糞悪い季節だってのに、彼女は被っているフードを絶対に外そうとしない。頭に生えたファンシーな獣耳を隠そうとしているのだろうが、フードには二つの穴が空いていてその耳は丸出しだ。全くと言って意味がない。
「ねぇ、包帯取って」
「はあ?何で取らなきゃならねーんだよ。俺怪我してんだぞ。お前に噛まれて重傷負ったんだ。分かるだろ?」
「食べたいから。駄目?」
愛嬌のある顔をしてはいるが、その外見に騙されてはならない。
発言がとてつもなく狂気的である。
奉仕作業に支障をきたした相棒を自分の餌としか思っていないようだ。
口元から犬歯を覗かせている姿は獲物を狙っているライオンに近い。
「だーめ。何が「食べたいから」だ。次あんなことしたら顔面ぱんちだからな」
「酷い言い様。テイル女の子。女性に暴力はよくない」
「うるせ。獣耳の生えた化け物を女の子とは言わないだろ」
「……テイルだって好き好んで化け物になりたかった訳じゃない。そういう言い方は失礼」
日影が率直に言い放った「化け物」という一言に、テイルは分かりやすくしょんぼりと落ち込んだ。さっきまでピンと立てていた獣耳がてろんと垂れ下がっている。
その姿はまるで飼い主に叱られたペットのようだ。
「あ……悪い。化け物は流石に傷付くか。それなら、狼男ならぬ狼娘何てどうだ?」
「ネーミングセンスの欠片もない。普通に名前で呼んで」
「名前って……あの焼き菓子みたいなヘンテコな奴か?ブラウニーって呼べば良いんだな」
「どうしてラストネーム?テイルで良い」
「あっそ……了解」
後々面倒なので包み隠さずに正直に話そう。
テイルは人間の女性と野生の狼♂との間に誕生した人間と動物のハーフだそうだ。
それを本人から直接聞いた時は俺も信じられないし、信じたくも無かったが、実例が目の前に存在するんだから認めるしかない。
交尾というべきかSEXというべきか、何とも微妙な所だが、動物相手でも子供って生まれるんだな。
テイルは母親に出産後すぐに捨てられたらしいから、家族の思い出とかは一切ない。厄介な体質を持っていて、肉を定期的に摂取しないと人間としての理性が保てなくなる。
野獣のような本能が覚醒し、過去に人を襲った経験が何度かあると聞く。その際に四人程殺めてしまったようだが、テイル自身は少しも憶えておらず、気が付いたら手錠を填められていて此処に居たそうだ。
可哀想なことに「死刑」が決まっているらしい。
そんな話を聞かされてしまっては、多少の悪戯では怒る気も失せる。腕を噛みちぎられそうになったってのに何言ってんだって話かもしれないが、最後の瞬間を迎えるまでは出来るだけ優しく接してやろうと思うんだ。
人生が残り一年半か……、四人の命を奪っているとはいえ、十三歳の少女には重すぎる判決だな。
「テイル。お前死ぬのは怖くないのか?死刑執行日まであまり時間が無いんだぞ」
「別に。怖くない」
「腹を括るのが早すぎやしないか?潔いと言えば聞こえは良いのかもしれないが、俺だったら絶対に嫌だけどな。最後まで抗ってみようとは思わないのか?例えば奉仕作業を頑張るとかさ。貢献の結果によっては死刑が取り消しになる可能性だってあると思うぞ」
「そう、なの?」
こてんと首を傾げてから日影の顔を覗き込んできたテイルの顔は無表情だったが、僅かには興味を持てたようでこっちが安心させられた。
「ああ。だからさ「別に」何て強がり言ってないで、一緒に奉仕作業頑張ろうな。俺も相棒として出来る限りの協力はするから」
これから宜しくの手を差し伸べると、テイルはその手を取らずに俺の手にがぶりと噛み付いた。
……ま、この異様なスキンシップにも昨日と今日で大分慣れてきたけどさ。
照れ隠しにはちょっと激し過ぎるだろ……。
近所の野良犬に噛まれた経験が何度かあるが、それと比べ物にならないくらいには強烈な一撃だ。
日影が二日続けて痛手を負ったのは言うまでもない。
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