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第七十五話(便利屋を営む者達)
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ーー開放された窓の外、心地の良い秋風が吹いて、白いレースのカーテンが踊るように揺れた。
そこは元々芸能事務所だった空間を一年前に譲り受け、現在は便利屋事務所として使用している一軒家風の建物内。
周りに配置してある奢侈な社長机や革製のソファーは、以前の所有者が置いて行った物を有難く使わせて貰っている。観葉植物や横長の本棚も同様で、新しく増えた物を挙げるなら水槽を泳ぐアロワナくらいのものだ。
一階を事務所。二階を住居。此処で三人の仲間が依頼を協力し熟しながら、シェアハウスの様な生活を送っている。
一人目。
高級な革製のソファーに腰掛け焼き芋を頬張っている紫色のミディアムヘアに狼の耳を生やした少女。
二人目。
横長の水槽を泳ぐアロワナにエサをやる太り気味で眉も太めな丸刈り男。
三人目。
社長机で暇そうに頬杖をつく、器量の素晴らしい桃色セミロングの少女。
彼等は便利屋を生業とし、依頼が入れば些細だろうが大掛かりだろうが汚れ仕事だろうが、どんな内容でも引き受ける。ほんの数分前にも客が訪れて「捕縛」の依頼を切望されたばかりだ。先払いとして置いていった三つのジュラルミンケースの中には三億分の札束がぎっしりと詰められている。今回ターゲットとなるのは現在全世界に指名手配中の凶悪犯三名。一人に対して一億とは随分と気前が良い。
「……にしても、気が進まねーなぁ。いくら仕事とは言ってもよぉ」
風貌が見るからに胡散臭い依頼人が大金と共に置いていった手配書の一部を手に取って、吉澤大地、通称「おデブちゃん」が心の内を素直に吐露した。
彼の隣には先にソファーへ腰掛けていた先客が居て、その獣耳を生やした少女「紫紺」は指名手配中の犯人一名と瓜二つな容姿をしている。
「仕方ないでしょ。仕事として引き受けた以上は文句も愚痴も一切無し。きっぱりと割り切って心を鬼にするの。……殺しの依頼じゃなかっただけまだマシじゃない」
「そうは言うけどな……俺等が捕縛すりゃ殺しと何ら変わりやしねぇじゃねぇか。故意にじゃないにしても、この子はすでに九人の命を奪ってるって話だ。刑務所に行きゃ死刑確定だろうよ」
便利屋の所長である「桜葉つるぎ」の淡々とした口調に、デブちゃんは納得がいかない。選り好みが出来ない仕事とはいえ、大切な仲間である紫紺と同じ容姿を持つ対象を酷い目に合わせることに分かり易く躊躇してしまっている。彼の眼に映るのは屈託なく焼き芋を食べる幸せそうな少女の姿。この場にいる誰よりも食べることが大好きな紫紺は大概が無表情なのだが、何かを食べている一時だけは毎回幸せそうに顔を綻ばせる。
「この手配書の、テイル・ブラウニーって子はさ……、あの依頼人の言う通りなら紫紺の姉みたいなもんだろ。嫌何だよ、俺は……、紫紺の家族を警察に突き出すような真似をするのは……」
「家族、ね……。強ち違うとも言い切れないけれど、コンちゃんは彼女のクローンってだけで、家族でも妹でも無いんじゃない?だって二人は、一緒に暮らしたことも顔を合わせたことさえないんでしょ」
つるぎと大地が紫の髪に狼の様な耳を生やした不思議な少女と出会ったのは、今からちょうど三ヶ月程前になる。此処「株式会社ボイス」の創業者である「木ノ下歌」が「何か可愛い子いたから拾ってきたわ」と物騒な台詞を吐いてこの事務所へ勾引かして来たのが始まりだった。
善く善く話を聞いてみれば「拾って下さい」と自ら書いたダンボールの中に入っていたと言うのだから驚きだ。道を闊歩していた途上で蠱惑的な獣耳が目に付いたらしい。
株式会社ボイスは、世界各地に点在する身寄りの無い子供達に衣食住に加えて生活費と働ける場所を無償で提供している会社だ。その業種は様々で、便利屋の他に、カフェ、飲食店、ケーキ屋、コンビニ、カラオケ店などがある。それら全ての店舗は子供達の希望を聞いてその通りに設立し、商売で得た利益は彼等のお小遣いとして全額進呈している。ほとんどボランティアみたいな感じだが、芸能界で「水嶋歌姫」として名を馳せる歌は素封家で何億もの莫大な財産がある。少しばかり寄付をするくらい大したことではない。
「ねぇコンちゃん。ちょっと聞きたいんだけど、このテイルって子に会ったことある?」
つるぎが大地から手配書を掠め取り、それを紫紺の眼前に差し出して問いかける。
紫紺は焼き芋の残滓で汚した、小さな可愛らしい口元を徐に動かして、
「ない。全450体の殺戮兵器の中に彼女は存在しない」
それだけを呟いた後、一時中断させた食事を再開した。
「ほらね。あたしの言った通り。姿形は同じでもコンちゃんとテイルちゃんは全くの別物。これで心置き無く仕事に打ち込めるってもんでしょ」
「って言われてもなぁ。俺はお前みたいに淡然と決意を変えられそうにないわ。いざこの子と対峙した時に手を出せる自信がない。何てったって、慈愛に満ち溢れて優しい色男な俺は同情の気持ちが強いからな」
「またいつもの器量自慢?おデブちゃんの何処が「優しい色男」なのよ。ほんと口だけは達者ね。どこにでもいそうでぱっとしない、ただの肥満男のくせに」
「大地はデブ。少しダイエットした方が良い」
つるぎと違って俺をファーストネームで呼んでくれて「おデブちゃん」呼ばわりしない紫紺からの「デブ」呼ばわりには少々心が傷付いた。体重100キロ越えのワガママボディはそう簡単に痩せられるものだろうか。デブにとっては紫紺の様にいくら食べようが太らない体型は羨望に値する。
「紫紺」という名はつるぎが好意で名付けた愛称だ。何度尋ねてみても「被験体No.450」と名乗り続ける彼女を不憫に感じて、紫の髪色と450という数字の語呂合わせから連想し、その新名を定着させた。
あちこちが破れてボロボロの泥だらけの衣服を着た30代後半くらいの依頼主は「三人の指名手配犯に命を狙われている」と助けを乞いにこの場所にやって来て、紫紺の姿を発見するや否や、後退り体勢を崩して驚愕と恐怖を綯交ぜにした様な酷い表情を浮かべて戦慄いていた。
彼が包み隠さず語った話が真実なら、それは唾棄すべき行為で、同情は出来ないし助ける気は更々起きないのだが、うちの所長様は金を受け取った以上依頼は遂行しなくてはならないと言う。内容を聞いていた限りじゃ、被害者と呼べるのは明らかに指名手配されている三人の方で加害者は依頼人だ。俺達がこれからおっ始めようとしているのは悪い人間に加担するという非人道的で賛成出来ない助長行為なのであるのだが……、
「テイルちゃんはあたしが相手するから、おデブちゃんは残りの二人の相手をお願いね」
「おいおい、俺はまだ協力するとは言ってないぜ?」
「はあ?何言ってるの?貴方も一応便利屋さんのお仲間でしょ。歌ちゃんに何から何までお世話になっている身分で、働かず自堕落に生活するとか恥ずかしいと思わないの?それじゃただの紐男よ」
この便利屋「ボイス」は、つるぎが歌にリクエストして企業した会社であり、元は歌が所属していた芸能事務所だった場所だ。
何やら拠点を変えるという話で、僅かばかりのリフォームを終えて、現在は俺達の自宅兼事務所となった。
ーー俺は「便利屋」ではなく、手料理をお客に振る舞えるような小洒落た「飲食店」が良いと希望を出したのだが、即刻却下された。
つるぎの素性を詳しくは知らないが、俺は元孤児で、行く当てもなく困っていた所を歌に拾われた。住む場所に働ける場所、かてて加えて毎月二人で五十万もの生活費を貰っていた。紫紺が加わってからは更に増えて、今では合計百万近くの生活費を貰っている。彼女にはいくら感謝してもしきれないし、出来ることなら少しでも稼いで少しでも金を返せたらと日々思っている。本人は度量が広いのか、そんなことは全くと言って気にしていない様子だが……、
「出来れば俺は、誰かを不幸にする様な仕事じゃなくて、草むしりとか、ゴミ屋敷の掃除やらで利益を生み出して行きたいという立派な意向があるのだが……、どうだろうか?」
「そんなちんけな仕事で得られる利益何か高が知れてるってこと、おデブちゃんだって痛いほどよく分かってるでしょ。そんなんじゃ駄目なの……!いつまで経ってもあたし達は歌ちゃんに恩返しが出来ない……!でも今回は違う。もしかしたら一世一代かも知れない大きな儲け話が飛び込んできたのに、これを見す見す逃す訳にはいかないわ。明日にでもキャンプ場に出発するからね!善は急げって良く言うでしょ!」
そう高らかに宣言するつるぎは捕縛の依頼を引き受ける気満々で大地を危険な仕事に何としても巻込もうとする。
歌のことを誰よりも心酔する大好きな思いがこちらにも伝わって来た。いつまでも拒み続ければ、やがては説得を諦めて「一人で行く」とも言い出しそうな状況だ。
確かに、このまま鳴かず飛ばずで、ずっと歌の財力に頼って左団扇で暮らしていくのもかっこ悪いってのは十分に分かってるけどさ……、
「大地の代わりに紫紺がつるぎを手伝う」
大地が分かり易くつるぎの気迫に尻込みし、葛藤に苦しんで唸っていたそんな中、静かに名乗りを上げたのは先程まで一人焼き芋を黙々と食べていた紫紺だった。
そこは元々芸能事務所だった空間を一年前に譲り受け、現在は便利屋事務所として使用している一軒家風の建物内。
周りに配置してある奢侈な社長机や革製のソファーは、以前の所有者が置いて行った物を有難く使わせて貰っている。観葉植物や横長の本棚も同様で、新しく増えた物を挙げるなら水槽を泳ぐアロワナくらいのものだ。
一階を事務所。二階を住居。此処で三人の仲間が依頼を協力し熟しながら、シェアハウスの様な生活を送っている。
一人目。
高級な革製のソファーに腰掛け焼き芋を頬張っている紫色のミディアムヘアに狼の耳を生やした少女。
二人目。
横長の水槽を泳ぐアロワナにエサをやる太り気味で眉も太めな丸刈り男。
三人目。
社長机で暇そうに頬杖をつく、器量の素晴らしい桃色セミロングの少女。
彼等は便利屋を生業とし、依頼が入れば些細だろうが大掛かりだろうが汚れ仕事だろうが、どんな内容でも引き受ける。ほんの数分前にも客が訪れて「捕縛」の依頼を切望されたばかりだ。先払いとして置いていった三つのジュラルミンケースの中には三億分の札束がぎっしりと詰められている。今回ターゲットとなるのは現在全世界に指名手配中の凶悪犯三名。一人に対して一億とは随分と気前が良い。
「……にしても、気が進まねーなぁ。いくら仕事とは言ってもよぉ」
風貌が見るからに胡散臭い依頼人が大金と共に置いていった手配書の一部を手に取って、吉澤大地、通称「おデブちゃん」が心の内を素直に吐露した。
彼の隣には先にソファーへ腰掛けていた先客が居て、その獣耳を生やした少女「紫紺」は指名手配中の犯人一名と瓜二つな容姿をしている。
「仕方ないでしょ。仕事として引き受けた以上は文句も愚痴も一切無し。きっぱりと割り切って心を鬼にするの。……殺しの依頼じゃなかっただけまだマシじゃない」
「そうは言うけどな……俺等が捕縛すりゃ殺しと何ら変わりやしねぇじゃねぇか。故意にじゃないにしても、この子はすでに九人の命を奪ってるって話だ。刑務所に行きゃ死刑確定だろうよ」
便利屋の所長である「桜葉つるぎ」の淡々とした口調に、デブちゃんは納得がいかない。選り好みが出来ない仕事とはいえ、大切な仲間である紫紺と同じ容姿を持つ対象を酷い目に合わせることに分かり易く躊躇してしまっている。彼の眼に映るのは屈託なく焼き芋を食べる幸せそうな少女の姿。この場にいる誰よりも食べることが大好きな紫紺は大概が無表情なのだが、何かを食べている一時だけは毎回幸せそうに顔を綻ばせる。
「この手配書の、テイル・ブラウニーって子はさ……、あの依頼人の言う通りなら紫紺の姉みたいなもんだろ。嫌何だよ、俺は……、紫紺の家族を警察に突き出すような真似をするのは……」
「家族、ね……。強ち違うとも言い切れないけれど、コンちゃんは彼女のクローンってだけで、家族でも妹でも無いんじゃない?だって二人は、一緒に暮らしたことも顔を合わせたことさえないんでしょ」
つるぎと大地が紫の髪に狼の様な耳を生やした不思議な少女と出会ったのは、今からちょうど三ヶ月程前になる。此処「株式会社ボイス」の創業者である「木ノ下歌」が「何か可愛い子いたから拾ってきたわ」と物騒な台詞を吐いてこの事務所へ勾引かして来たのが始まりだった。
善く善く話を聞いてみれば「拾って下さい」と自ら書いたダンボールの中に入っていたと言うのだから驚きだ。道を闊歩していた途上で蠱惑的な獣耳が目に付いたらしい。
株式会社ボイスは、世界各地に点在する身寄りの無い子供達に衣食住に加えて生活費と働ける場所を無償で提供している会社だ。その業種は様々で、便利屋の他に、カフェ、飲食店、ケーキ屋、コンビニ、カラオケ店などがある。それら全ての店舗は子供達の希望を聞いてその通りに設立し、商売で得た利益は彼等のお小遣いとして全額進呈している。ほとんどボランティアみたいな感じだが、芸能界で「水嶋歌姫」として名を馳せる歌は素封家で何億もの莫大な財産がある。少しばかり寄付をするくらい大したことではない。
「ねぇコンちゃん。ちょっと聞きたいんだけど、このテイルって子に会ったことある?」
つるぎが大地から手配書を掠め取り、それを紫紺の眼前に差し出して問いかける。
紫紺は焼き芋の残滓で汚した、小さな可愛らしい口元を徐に動かして、
「ない。全450体の殺戮兵器の中に彼女は存在しない」
それだけを呟いた後、一時中断させた食事を再開した。
「ほらね。あたしの言った通り。姿形は同じでもコンちゃんとテイルちゃんは全くの別物。これで心置き無く仕事に打ち込めるってもんでしょ」
「って言われてもなぁ。俺はお前みたいに淡然と決意を変えられそうにないわ。いざこの子と対峙した時に手を出せる自信がない。何てったって、慈愛に満ち溢れて優しい色男な俺は同情の気持ちが強いからな」
「またいつもの器量自慢?おデブちゃんの何処が「優しい色男」なのよ。ほんと口だけは達者ね。どこにでもいそうでぱっとしない、ただの肥満男のくせに」
「大地はデブ。少しダイエットした方が良い」
つるぎと違って俺をファーストネームで呼んでくれて「おデブちゃん」呼ばわりしない紫紺からの「デブ」呼ばわりには少々心が傷付いた。体重100キロ越えのワガママボディはそう簡単に痩せられるものだろうか。デブにとっては紫紺の様にいくら食べようが太らない体型は羨望に値する。
「紫紺」という名はつるぎが好意で名付けた愛称だ。何度尋ねてみても「被験体No.450」と名乗り続ける彼女を不憫に感じて、紫の髪色と450という数字の語呂合わせから連想し、その新名を定着させた。
あちこちが破れてボロボロの泥だらけの衣服を着た30代後半くらいの依頼主は「三人の指名手配犯に命を狙われている」と助けを乞いにこの場所にやって来て、紫紺の姿を発見するや否や、後退り体勢を崩して驚愕と恐怖を綯交ぜにした様な酷い表情を浮かべて戦慄いていた。
彼が包み隠さず語った話が真実なら、それは唾棄すべき行為で、同情は出来ないし助ける気は更々起きないのだが、うちの所長様は金を受け取った以上依頼は遂行しなくてはならないと言う。内容を聞いていた限りじゃ、被害者と呼べるのは明らかに指名手配されている三人の方で加害者は依頼人だ。俺達がこれからおっ始めようとしているのは悪い人間に加担するという非人道的で賛成出来ない助長行為なのであるのだが……、
「テイルちゃんはあたしが相手するから、おデブちゃんは残りの二人の相手をお願いね」
「おいおい、俺はまだ協力するとは言ってないぜ?」
「はあ?何言ってるの?貴方も一応便利屋さんのお仲間でしょ。歌ちゃんに何から何までお世話になっている身分で、働かず自堕落に生活するとか恥ずかしいと思わないの?それじゃただの紐男よ」
この便利屋「ボイス」は、つるぎが歌にリクエストして企業した会社であり、元は歌が所属していた芸能事務所だった場所だ。
何やら拠点を変えるという話で、僅かばかりのリフォームを終えて、現在は俺達の自宅兼事務所となった。
ーー俺は「便利屋」ではなく、手料理をお客に振る舞えるような小洒落た「飲食店」が良いと希望を出したのだが、即刻却下された。
つるぎの素性を詳しくは知らないが、俺は元孤児で、行く当てもなく困っていた所を歌に拾われた。住む場所に働ける場所、かてて加えて毎月二人で五十万もの生活費を貰っていた。紫紺が加わってからは更に増えて、今では合計百万近くの生活費を貰っている。彼女にはいくら感謝してもしきれないし、出来ることなら少しでも稼いで少しでも金を返せたらと日々思っている。本人は度量が広いのか、そんなことは全くと言って気にしていない様子だが……、
「出来れば俺は、誰かを不幸にする様な仕事じゃなくて、草むしりとか、ゴミ屋敷の掃除やらで利益を生み出して行きたいという立派な意向があるのだが……、どうだろうか?」
「そんなちんけな仕事で得られる利益何か高が知れてるってこと、おデブちゃんだって痛いほどよく分かってるでしょ。そんなんじゃ駄目なの……!いつまで経ってもあたし達は歌ちゃんに恩返しが出来ない……!でも今回は違う。もしかしたら一世一代かも知れない大きな儲け話が飛び込んできたのに、これを見す見す逃す訳にはいかないわ。明日にでもキャンプ場に出発するからね!善は急げって良く言うでしょ!」
そう高らかに宣言するつるぎは捕縛の依頼を引き受ける気満々で大地を危険な仕事に何としても巻込もうとする。
歌のことを誰よりも心酔する大好きな思いがこちらにも伝わって来た。いつまでも拒み続ければ、やがては説得を諦めて「一人で行く」とも言い出しそうな状況だ。
確かに、このまま鳴かず飛ばずで、ずっと歌の財力に頼って左団扇で暮らしていくのもかっこ悪いってのは十分に分かってるけどさ……、
「大地の代わりに紫紺がつるぎを手伝う」
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