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第一話(奉仕作業。老人ホーム)
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「はぁ……やっとお昼だねぇ。疲れたぁ~」
「それには同感だが、今日という日はまだ終わった訳じゃないぞ。本番はここからだ」
俺達未成年囚人には「奉仕作業」と言って、午後の作業は「刑務作業」とは別の仕事をさせられることになっている。
大人の囚人達とは違って、社会に復帰し出所後の糧となるようにと、シャバに出て様々な仕事の手伝いに向かわされるんだ。
まあ「職場体験」と言えば聞こえは良いのかもしれないな。自然とコミュニケーション能力も身に付く。
飲食店や清掃業。介護に保育に配達員。他多数。
経験したこともない仕事を色々やらされてもう懲り懲りだ。
「老人ホームで介護士代行だって。行こう」
奉仕作業場所へは毎回護送車に乗せられて向かうことになっていて、行き同様帰りもこの車に乗って刑務所まで帰ってくる。
就業時間になったら迎えに来てくれるんだ。
「ほっほ。弱いのう、少年。ほれ、王手じゃ。またワシの勝ちじゃのぉ」
老人ホーム内、デイルーム。
面倒な仕事を全てルナに押し付け、こっちはこっちで大勢の爺婆が観戦する中、つるっぱげの爺さんの将棋の相手をして遊んでいた。
日影を三回連続で負かした老人は歓喜の声を上げる。
「てめっ、クソ爺。俺は将棋初めてまだ間もないんだぞ。少しは手加減をだな……」
「ほっほっほ。これでも手加減してやったつもり何じゃがの~。まだまだ若いもんには負けんわい」
「ちっ、飛車抜いたくらいで初心者がベテランに勝てるかよ。おい爺さん。桂馬と香車も無しで良いだろ。それくらいのハンデがありゃ次はこっちが勝つ」
「ひ~くん、何時迄も遊んでないでこっちの仕事も手伝ってよ~」
ルナのお願いに日影は聞く耳を持たず、四戦目の将棋のことで頭が一杯だった。
少年の目の前の席に向かい合う形で腰掛ける老人は、のんびりと配膳されたお茶を啜っている。
「悪いな、ルナ。爺さんや婆さんと将棋で遊んでやるのも立派な介護の仕事だ。だから、そっちは任せた」
「うぅ……ひーくんのばか~」
ルナは一人で老人達が使用するベッドのシーツ交換や洗濯。入浴の手伝い。おやつの準備。職員と一緒に行事の企画を考える話し合いに参加したりと、まるで奴隷のように働かされていた。
「ルナ~。俺にもお茶くれ。お茶」
金髪ツインテールの相棒が、デイルームで談話やカラオケを楽しむ老人達にお茶のおかわりを入れに来たから「俺にもくれ~」と声をかけてみた。
ルナと違って遊んでいるようにしか見えない日影が、職員に注意を受けないことが不思議でならない。
将棋にチェス。囲碁といったボードゲームで遊びながらお茶を啜っているだけで、本日の奉仕作業は随分と楽に感じる。
「ルナ~。お茶おかわり~」
「はいはい、ただいま~……って、またなのひーくん!?これでおかわり何回目よ!七回目だよっ!」
「おお。よく回数何て覚えてたな。褒めて遣わす」
「えへ、ありがと~。記憶力は結構良いんだ、あたし……って、違うでしょ!?ひーくんもお茶汲みくらい手伝ってよぉ~」
ちっ。誤魔化すのは流石に無理があったか。
「お嬢ちゃん、私にもお茶のおかわりお願い
できる?」
「ほらルナ。婆さんがお茶をご所望だぞ。早く汲んでやれ」
ルナが婆さんの所へ歩いて行った後で、つるっぱげの爺さんがこんなことを口にした。
「あの金髪の可愛いお嬢ちゃんは、少年のこれかい?」
老人はいやらしく小指を一本立てて見せる。
どうやら日影の彼女かどうか気になっているっぽい。
「ん~、好かれてはいるけど彼女じゃないなぁ。同じ牢の中で毎日を共にするペアではあるが」
「まだ若いのに波乱万丈な人生じゃなぁ。十七で刑務所に行くとか、何やったんじゃい?」
「何もしてねーよ。俺は無実だ」
「無実?」
首をきょとんと傾げる爺は見るだけで吐きそうな程気持ちが悪い。その仕草が許されるのは子供と美少女限定だ。
日影はその不気味な光景から視線を逸らし、眉をしかめながらも話を続ける。
「ああ。迷子の小学生を交番まで連れて行く途中で手錠を嵌められちまったのさ。ほら、最近「ロリコン」って奴等が多いだろ。ちっちゃな子に性欲を感じちゃう「犯罪者予備軍」とか言われてる」
「ほうほう」
爺さんは日影の話を理解したのか、首を縦に振って何度か頷いた。
こんな老いぼれ相手に何を語っているんだろうな。将棋しながら話すような内容じゃねぇってのに。
児童ポルノ禁止法……だったっけか?
その法律が更に強化されたせいか、子供と一緒に歩いていただけで俺みたいに勘違いされて捕まるケースは珍しくなくなった。
刑務所には同じように無実で牢の中に収容されてる人間が何人か居るのかもしれないな。
「やってないなら否定すればよかったじゃろ」
「否定したさ。でも、信じて貰えなかったんだよ」
「う~む……切ない話じゃのう」
「ひーくん。お爺ちゃんと何のお話してるの?」
お茶汲み業務から解放されたルナが日影と老人の腰掛けている席までやってきて、二人の会話に参加しようとそんなことを尋ねてきた。
何が悲しくて同年代の女子にロリコン野郎の汚名を被った伝説を話さねばならんのか。
ルナが俺を軽蔑しないことは知っているが
異性に話したい内容じゃないし、すでにお互いの罪名くらい知っている。
「なあに、お嬢ちゃんが聞いてもしょうもない話じゃよ」
「しょうもない話?」
「おい爺。今俺の人生を「しょうもない」と言ったか?」
同情してくれているように見えたのは俺の勘違いだったか。金輪際この爺さんに昔話はしねぇ。「しょうもない」という一言に否定はできないけどな。
「恥ずかしくてショック死するわな。ちなみにワシは巨乳のボンキュッボンのお姉ちゃんが大好きじゃ。発展途上なお嬢ちゃんの体にはまだ興奮できんのぉ」
「……えっと、本当に何のお話ですか?」
「誰が爺の好みな女のタイプ何て聞いたよ?ルナの胸眺めながらセクハラ吐いてんじゃねぇ」
「えっ!?あたしの胸……」
「がっかりすることないぞ、ルナ。俺はお前の小さな胸でもしっかりと興奮出来る」
ルナの慎ましやかな胸を褒め称え、日影はビシッと親指を立てる。
「そんなに言う程小さくないよ!あたしくらいの女の子は皆これくらいの大きさだもん!」
成長のスピードなど人それぞれだろう。同い年で背の大きい小さいはあるし、それと一緒で胸の成長も遅い早いがある。
「これ、変態爺。ルナちゃんにセクハラしてんじゃないよぉ。その歳で捕まったら刑務所で最後を迎えることになるよぉ」
「ほっほ。変態爺とは口が悪いのう。婆さんや」
「ルナちゃん、ウチの爺が変なこと言ってごめんねぇ」
「いえ。大丈夫です。そこまで気にしてませんから」
ルナに謝罪を入れる婆さんはこの爺さんの面会に来た奥さんだ。
確かに今の世の中、ちょっとしたセクハラ言動するだけで捕まるケースも稀にある。
命拾いしたな、爺さん。俺の相棒の心の広さに盛大に感謝すると良い。
「少年が捕まった理由は聞いたが、お嬢ちゃんはどうして捕まったんじゃ?」
「……えっと、あたしは……」
「これ、爺さん。そんな不謹慎な話題振るんじゃないよぉ。ルナちゃんが困ってるじゃないか」
「少年はもちろん知っているんじゃろ」
「ああ。まあ、な……」
同室で親交を深める為にお互いがどんな罪を犯して刑務所に収容されているのか聞いたりするよな。
囚人あるあると言っても良い。
でもま、俺とルナは最初そんな話すらしなかったんだけど……こいつと仲良くなったのって、確か同室になって三日くらい経った後だった覚えがあるし。
「どれ、教えてみぃ」
「そう簡単に相棒の秘密を尋ねられて口を割ると思うか?気になるのも分かるが、ルナが話したくないなら俺からは何も言えないな」
どうしても気になるならネットを駆使し動画サイトで検索でもすれば良い。
いくらでも誰かがアップした映像がみつかるだろうぜ。
**********************
「はあ。何か今日は疲れたわ。なー、ルナ」
「その台詞、あんまりひーくんには言って欲しくないかなぁ……」
「まあ……何だ。悪い」
相棒の疲れ果てた表情を見たら、少しの間だけでも仕事を変わってやれば良かったかなと若干の罪悪感を感じた。
老人の遊び相手はルナより俺の方が向いていると思ったんだが。
「いいよ~。許す。ひーくんがあたしの罪名黙っててくれてすごく嬉しかったし」
「ふっ。惚れ直しただろ」
「うん。そうだね~。きっとひーくんは鬼畜だから、大きな声で皆に聞こえるように暴露すると思ってたし意外だったけど」
「おいおい。信用ねぇな」
「気にしなくて平気だよ。あたしはドSでロリコンでしょーもなくてもひーくんのこと嫌いになったりしないから」
「ふふ。悪いな。俺は女の子が泣いているところや辛そうな姿を眺めて愉悦に浸る最低な男だ。嫌いにならない筈がないだろう」
「ひーくんが望むならあたしはどんなプレイにも耐えてみせるよ」
流石はルナだ。自分でも聞いていて最悪な台詞が全く通用していない。
奉仕作業から帰って来て夕食を完食後。
仲良く牢の中で駄弁っていたら、放送が流れて風呂の時間だと刑務官から指示が出る。
入浴は決まって十五分。
男の日影はそれでも十分かもしれないが、女のルナからしたら短過ぎて物足りないだろう。髪の毛とか洗うの大変そうだし。
「ひーくん、お風呂だって」
「ああ……、分かってる」
各牢屋の中には奥側に風呂場が設けらている。普段はカーテンで仕切られていて目に触れないようになっているが、二人で使う分には狭いと感じたことはない。まあまあ広めだ。同室の囚人全員で入ることになっていて、ちなみに別々で入ることは許されていない。これでルナと湯船に浸かるのは何度目だろう。おかげで女子の体にすっかりと慣れてしまった俺がいる。
一緒に風呂とか、以前のルナのままだったら考えられなかったことだが……。
「ひーくんっ、体洗いっこしよー。背中流してあげる~」
「良いって。十五分しかないんだからお前は自分の髪でも洗ってろ」
「ひーくんは恥ずかしがり屋さんだなぁ。いいもーん。勝手に洗っちゃうもーん」
「うわっ。止めろっ!胸が、背中に慎ましやかなルナの胸が当たるっ!」
「ううっ、慎ましやかとか言わないでっ!」
恥ずかしさのあまり、裸を熟視しないよう日影がルナから逃れようとするのは毎度のことだ。
何としても体の洗いっこがしたいと、結った髪を解いた金髪少女は、洗いかけの泡だらけな体で抱きつき日影の動きを止める。
「おい、馬鹿。離れろ。俺が興奮する前に即刻俺から離れろ。お前もロリコン容疑で捕まった憐れな男に欲情されて襲われたくはあるまい」
「は、今更何言ってんの?だってひーくん、自分で話してくれたんだよ。勘違いで捕まったんだよね?」
「もう諦めたんだよ。どうせ誰も信じてくれないことが分かったからな」
遣る瀬無いし悲しいが、あの事件は有罪事件として片付けられたんだ。
今更俺が何を訴えようが、世間は信用してくれない。
くっ、すげぇ不愉快な気持ちでいっぱいだが仕方がないな。
好きなだけロリコンと蔑むが良いさ。
「皆じゃないでしょ。信じてる人、此処にいるよ。あたしはひーくんがそんなことするような悪い人だ何て思ってないもん」
「そっか。ありがとう、ルナ」
他の囚人達に妬まれ、殺意の籠った視線で睨まれる毎日。
いつ刺し殺されても可笑しくないようなスリルある生活は嫌で嫌でしょうがないが、それでも俺はルナがペアで幸せ者だ。
ーーどうせ無理な願いだって悟ってはいるけれど、いつか俺の冤罪が証明される日がやって来るといいな。
「それには同感だが、今日という日はまだ終わった訳じゃないぞ。本番はここからだ」
俺達未成年囚人には「奉仕作業」と言って、午後の作業は「刑務作業」とは別の仕事をさせられることになっている。
大人の囚人達とは違って、社会に復帰し出所後の糧となるようにと、シャバに出て様々な仕事の手伝いに向かわされるんだ。
まあ「職場体験」と言えば聞こえは良いのかもしれないな。自然とコミュニケーション能力も身に付く。
飲食店や清掃業。介護に保育に配達員。他多数。
経験したこともない仕事を色々やらされてもう懲り懲りだ。
「老人ホームで介護士代行だって。行こう」
奉仕作業場所へは毎回護送車に乗せられて向かうことになっていて、行き同様帰りもこの車に乗って刑務所まで帰ってくる。
就業時間になったら迎えに来てくれるんだ。
「ほっほ。弱いのう、少年。ほれ、王手じゃ。またワシの勝ちじゃのぉ」
老人ホーム内、デイルーム。
面倒な仕事を全てルナに押し付け、こっちはこっちで大勢の爺婆が観戦する中、つるっぱげの爺さんの将棋の相手をして遊んでいた。
日影を三回連続で負かした老人は歓喜の声を上げる。
「てめっ、クソ爺。俺は将棋初めてまだ間もないんだぞ。少しは手加減をだな……」
「ほっほっほ。これでも手加減してやったつもり何じゃがの~。まだまだ若いもんには負けんわい」
「ちっ、飛車抜いたくらいで初心者がベテランに勝てるかよ。おい爺さん。桂馬と香車も無しで良いだろ。それくらいのハンデがありゃ次はこっちが勝つ」
「ひ~くん、何時迄も遊んでないでこっちの仕事も手伝ってよ~」
ルナのお願いに日影は聞く耳を持たず、四戦目の将棋のことで頭が一杯だった。
少年の目の前の席に向かい合う形で腰掛ける老人は、のんびりと配膳されたお茶を啜っている。
「悪いな、ルナ。爺さんや婆さんと将棋で遊んでやるのも立派な介護の仕事だ。だから、そっちは任せた」
「うぅ……ひーくんのばか~」
ルナは一人で老人達が使用するベッドのシーツ交換や洗濯。入浴の手伝い。おやつの準備。職員と一緒に行事の企画を考える話し合いに参加したりと、まるで奴隷のように働かされていた。
「ルナ~。俺にもお茶くれ。お茶」
金髪ツインテールの相棒が、デイルームで談話やカラオケを楽しむ老人達にお茶のおかわりを入れに来たから「俺にもくれ~」と声をかけてみた。
ルナと違って遊んでいるようにしか見えない日影が、職員に注意を受けないことが不思議でならない。
将棋にチェス。囲碁といったボードゲームで遊びながらお茶を啜っているだけで、本日の奉仕作業は随分と楽に感じる。
「ルナ~。お茶おかわり~」
「はいはい、ただいま~……って、またなのひーくん!?これでおかわり何回目よ!七回目だよっ!」
「おお。よく回数何て覚えてたな。褒めて遣わす」
「えへ、ありがと~。記憶力は結構良いんだ、あたし……って、違うでしょ!?ひーくんもお茶汲みくらい手伝ってよぉ~」
ちっ。誤魔化すのは流石に無理があったか。
「お嬢ちゃん、私にもお茶のおかわりお願い
できる?」
「ほらルナ。婆さんがお茶をご所望だぞ。早く汲んでやれ」
ルナが婆さんの所へ歩いて行った後で、つるっぱげの爺さんがこんなことを口にした。
「あの金髪の可愛いお嬢ちゃんは、少年のこれかい?」
老人はいやらしく小指を一本立てて見せる。
どうやら日影の彼女かどうか気になっているっぽい。
「ん~、好かれてはいるけど彼女じゃないなぁ。同じ牢の中で毎日を共にするペアではあるが」
「まだ若いのに波乱万丈な人生じゃなぁ。十七で刑務所に行くとか、何やったんじゃい?」
「何もしてねーよ。俺は無実だ」
「無実?」
首をきょとんと傾げる爺は見るだけで吐きそうな程気持ちが悪い。その仕草が許されるのは子供と美少女限定だ。
日影はその不気味な光景から視線を逸らし、眉をしかめながらも話を続ける。
「ああ。迷子の小学生を交番まで連れて行く途中で手錠を嵌められちまったのさ。ほら、最近「ロリコン」って奴等が多いだろ。ちっちゃな子に性欲を感じちゃう「犯罪者予備軍」とか言われてる」
「ほうほう」
爺さんは日影の話を理解したのか、首を縦に振って何度か頷いた。
こんな老いぼれ相手に何を語っているんだろうな。将棋しながら話すような内容じゃねぇってのに。
児童ポルノ禁止法……だったっけか?
その法律が更に強化されたせいか、子供と一緒に歩いていただけで俺みたいに勘違いされて捕まるケースは珍しくなくなった。
刑務所には同じように無実で牢の中に収容されてる人間が何人か居るのかもしれないな。
「やってないなら否定すればよかったじゃろ」
「否定したさ。でも、信じて貰えなかったんだよ」
「う~む……切ない話じゃのう」
「ひーくん。お爺ちゃんと何のお話してるの?」
お茶汲み業務から解放されたルナが日影と老人の腰掛けている席までやってきて、二人の会話に参加しようとそんなことを尋ねてきた。
何が悲しくて同年代の女子にロリコン野郎の汚名を被った伝説を話さねばならんのか。
ルナが俺を軽蔑しないことは知っているが
異性に話したい内容じゃないし、すでにお互いの罪名くらい知っている。
「なあに、お嬢ちゃんが聞いてもしょうもない話じゃよ」
「しょうもない話?」
「おい爺。今俺の人生を「しょうもない」と言ったか?」
同情してくれているように見えたのは俺の勘違いだったか。金輪際この爺さんに昔話はしねぇ。「しょうもない」という一言に否定はできないけどな。
「恥ずかしくてショック死するわな。ちなみにワシは巨乳のボンキュッボンのお姉ちゃんが大好きじゃ。発展途上なお嬢ちゃんの体にはまだ興奮できんのぉ」
「……えっと、本当に何のお話ですか?」
「誰が爺の好みな女のタイプ何て聞いたよ?ルナの胸眺めながらセクハラ吐いてんじゃねぇ」
「えっ!?あたしの胸……」
「がっかりすることないぞ、ルナ。俺はお前の小さな胸でもしっかりと興奮出来る」
ルナの慎ましやかな胸を褒め称え、日影はビシッと親指を立てる。
「そんなに言う程小さくないよ!あたしくらいの女の子は皆これくらいの大きさだもん!」
成長のスピードなど人それぞれだろう。同い年で背の大きい小さいはあるし、それと一緒で胸の成長も遅い早いがある。
「これ、変態爺。ルナちゃんにセクハラしてんじゃないよぉ。その歳で捕まったら刑務所で最後を迎えることになるよぉ」
「ほっほ。変態爺とは口が悪いのう。婆さんや」
「ルナちゃん、ウチの爺が変なこと言ってごめんねぇ」
「いえ。大丈夫です。そこまで気にしてませんから」
ルナに謝罪を入れる婆さんはこの爺さんの面会に来た奥さんだ。
確かに今の世の中、ちょっとしたセクハラ言動するだけで捕まるケースも稀にある。
命拾いしたな、爺さん。俺の相棒の心の広さに盛大に感謝すると良い。
「少年が捕まった理由は聞いたが、お嬢ちゃんはどうして捕まったんじゃ?」
「……えっと、あたしは……」
「これ、爺さん。そんな不謹慎な話題振るんじゃないよぉ。ルナちゃんが困ってるじゃないか」
「少年はもちろん知っているんじゃろ」
「ああ。まあ、な……」
同室で親交を深める為にお互いがどんな罪を犯して刑務所に収容されているのか聞いたりするよな。
囚人あるあると言っても良い。
でもま、俺とルナは最初そんな話すらしなかったんだけど……こいつと仲良くなったのって、確か同室になって三日くらい経った後だった覚えがあるし。
「どれ、教えてみぃ」
「そう簡単に相棒の秘密を尋ねられて口を割ると思うか?気になるのも分かるが、ルナが話したくないなら俺からは何も言えないな」
どうしても気になるならネットを駆使し動画サイトで検索でもすれば良い。
いくらでも誰かがアップした映像がみつかるだろうぜ。
**********************
「はあ。何か今日は疲れたわ。なー、ルナ」
「その台詞、あんまりひーくんには言って欲しくないかなぁ……」
「まあ……何だ。悪い」
相棒の疲れ果てた表情を見たら、少しの間だけでも仕事を変わってやれば良かったかなと若干の罪悪感を感じた。
老人の遊び相手はルナより俺の方が向いていると思ったんだが。
「いいよ~。許す。ひーくんがあたしの罪名黙っててくれてすごく嬉しかったし」
「ふっ。惚れ直しただろ」
「うん。そうだね~。きっとひーくんは鬼畜だから、大きな声で皆に聞こえるように暴露すると思ってたし意外だったけど」
「おいおい。信用ねぇな」
「気にしなくて平気だよ。あたしはドSでロリコンでしょーもなくてもひーくんのこと嫌いになったりしないから」
「ふふ。悪いな。俺は女の子が泣いているところや辛そうな姿を眺めて愉悦に浸る最低な男だ。嫌いにならない筈がないだろう」
「ひーくんが望むならあたしはどんなプレイにも耐えてみせるよ」
流石はルナだ。自分でも聞いていて最悪な台詞が全く通用していない。
奉仕作業から帰って来て夕食を完食後。
仲良く牢の中で駄弁っていたら、放送が流れて風呂の時間だと刑務官から指示が出る。
入浴は決まって十五分。
男の日影はそれでも十分かもしれないが、女のルナからしたら短過ぎて物足りないだろう。髪の毛とか洗うの大変そうだし。
「ひーくん、お風呂だって」
「ああ……、分かってる」
各牢屋の中には奥側に風呂場が設けらている。普段はカーテンで仕切られていて目に触れないようになっているが、二人で使う分には狭いと感じたことはない。まあまあ広めだ。同室の囚人全員で入ることになっていて、ちなみに別々で入ることは許されていない。これでルナと湯船に浸かるのは何度目だろう。おかげで女子の体にすっかりと慣れてしまった俺がいる。
一緒に風呂とか、以前のルナのままだったら考えられなかったことだが……。
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「うわっ。止めろっ!胸が、背中に慎ましやかなルナの胸が当たるっ!」
「ううっ、慎ましやかとか言わないでっ!」
恥ずかしさのあまり、裸を熟視しないよう日影がルナから逃れようとするのは毎度のことだ。
何としても体の洗いっこがしたいと、結った髪を解いた金髪少女は、洗いかけの泡だらけな体で抱きつき日影の動きを止める。
「おい、馬鹿。離れろ。俺が興奮する前に即刻俺から離れろ。お前もロリコン容疑で捕まった憐れな男に欲情されて襲われたくはあるまい」
「は、今更何言ってんの?だってひーくん、自分で話してくれたんだよ。勘違いで捕まったんだよね?」
「もう諦めたんだよ。どうせ誰も信じてくれないことが分かったからな」
遣る瀬無いし悲しいが、あの事件は有罪事件として片付けられたんだ。
今更俺が何を訴えようが、世間は信用してくれない。
くっ、すげぇ不愉快な気持ちでいっぱいだが仕方がないな。
好きなだけロリコンと蔑むが良いさ。
「皆じゃないでしょ。信じてる人、此処にいるよ。あたしはひーくんがそんなことするような悪い人だ何て思ってないもん」
「そっか。ありがとう、ルナ」
他の囚人達に妬まれ、殺意の籠った視線で睨まれる毎日。
いつ刺し殺されても可笑しくないようなスリルある生活は嫌で嫌でしょうがないが、それでも俺はルナがペアで幸せ者だ。
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