未成年囚人達のソーシャルサービス

SAKAHAKU

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第九十六話(うたちゃん無双)

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姉小三
弟小二


「ふぇぇ……ぐーで打たれたぁあ……あたし、女の子なのにっ……女の子なのにぃ……」


これはまだ、あたしたち姉弟が小学生の頃の話だ。
当時、かげくんはクラスを牛耳っている高身長のクラスメイトによくいじめられていた。
弟思いの優しいお姉ちゃんは泣いているかげくんを見掛ければ放っておける訳もなく、当然、いじめっ子相手に勝ち目のない仕返しに向かった。
そこにあったのは、大切な弟を傷付けたそいつに対する憤りだけだった。躊躇いや怖じ気など全くない。喧嘩に勝つにはテクニックが重要。性別や身長差など関係ない。そう信じ切っていた。
しかし、負かす気満々で挑んだいじめっ子との力の差は歴然で、結果あたしはボロクソに敗北。
それから数分後、みっともなく滂沱の涙を流してかげくんに慰められていた。
かげくんに『次はボクがうたちゃんの仇取ってくるね』何て言わせてしまう始末だ。
頼りないな。何て情けないお姉ちゃんなんだろう。


ーー別の日。
近所で可愛い飼い犬を発見した。


「わぁ~……かわいー」


よく観察してみると、首輪は見受けられるものの鎖には繋がれていない。
まだ小さな子供だったあたしにはその犬の危険性がわかっていなくて、頭を撫でたいが一心で無防備に手を伸ばしてしまった。


「みてみてかげくんっ!この子かわいーよ!」

「う、うたちゃん……その犬は近所で凶暴で有名の……」


もこもこでふわふわな触り心地だった。
ペットが欲しいなーって初めて思ったのはこの時だったかも。
おばあちゃんにおねだりしたら買ってくれるかな?
犬も可愛いけど猫も可愛いよね。どちらも捨てがたい。なんなら一層の事両方飼ってしまえばいいのでは?
最初の方は大人しかったんだけれど、唐突に不機嫌そうに『ぐるるるる』って唸りだして……。


「……へ?」

「ワンワン!」


激昂した子犬は全速力で脱兎の如く逃げるあたしの後を追いかけてくる。
正にライオンに食べられる寸前の獲物のようだ。
足は速い方だったけど、流石に正攻法では逃げ切れないと悟った。ちょこまかと予測不可能なジグザグな動きで撹乱してみる。
するとどうだろう。
作戦が功を奏したのか、子犬は追跡と捕食を諦め鞍替えを開始した。
あたしの大切な弟目掛けて走って行く。
どうやらかげくんが小石を投擲し子犬を牽制していたようだ。注意をあたしから自分へとシフトさせるために……。

ーー数分後、容赦なく指を噛まれたかげくんの凄惨な悲鳴が上がった。


「かげくん、指だいじょーぶ……?へいき?」


何とか逃げ果せたあたしたちはお家へ帰って怪我の治療を行った。
清水で綺麗に汚れを洗い流したあと、傷口に消毒液を塗布する。
最後に絆創膏を貼って応急処置は終了だが、あとで病院に通う必要があるだろう。


「このくらいどうってことないよ。うたちゃんは?怪我しなかった?」

「う、うん……あたしはへーきだよ。かげくんが守ってくれたから。ありがと。それと……ごめんね」


本当ならお姉ちゃんが身を挺して守らなきゃなのに、最近のあたしはかげくんに助けてもらってばかりだ。
これじゃまるであたしがかげくんの妹みたい。こころなしか、身長もかげくんの方が少し高いような……、二人で一緒にいるとよく「妹」に間違われる何てこともある。
周りの大人達には、かげくんの方がお兄ちゃんに見えるみたい。
年齢は一歳しか変わらないし、別段おかしなことでもないんだろうけれど、何か複雑。




姉、小四
弟、小三


「うたえも~ん、助けてよ~」

「おk。うたえもんにドンと任せろ」


女の子からチョコレートが貰えるかもしれないバレンタインの日。
夕方、かげくんがあたしの部屋にやってきて救いを求めてきた。


「で、どうしたの? 」

「チョコが一つも貰えないんだ。放課後になっても暫く粘ってたのにがっかりだ」

「……なるへそ。それで帰りが遅かったわけだ。一緒に帰ろって誘ったのに断られたから、うたえもん、嫌われたのかと思って気が気じゃなかったんだゾ」


しょんぼりしてとぼとぼ歩いて下校したから、お家に着くのに普段以上の時間が掛かったんだからね。
チョコレートだって、昨日こっそり手作りして準備したんだから。


「違うんだ。僕がうたえもんを嫌う筈が無いじゃないか。それこそ、天と地がひっくり返るくらいありえない。いや、アニメキャラが画面から飛び出してくるくらいありえない。というか、なるへそってなんなん? ぷぷっ……初めて聞いたわ」

「お姉ちゃんは最近「死語」にハマっているのだ」

「はいはい。うたえもんは死語にハマっているのね。ワロス、ワロス」

「今日のかげくんはよく喋るなぁ……女の子にチョコレートが貰えなかったのがよっぽどショックだったんだね」

「そうさ。僕は所詮イケメンとは程遠い存在。女の子にモテるとか一生ありえないのだよ。唯一の希望は整形して色男に生まれ変わるか可愛い姉からチョコを貰うかの究極の二択!というわけでとっとと姉チョコよこせください!!」


かげくんが『どうせ僕はお姉ちゃんにしかモテないんだー』と絶望の声を上げている。
イケメンとは程遠いとか自虐がすごいけど、あたしは優しくてかっこいいかげくんが好き。
クラスの女の子達の見る目がないだけだとお姉ちゃんは思うな。


「落ち着いて落ち着いて……興奮してるからなのか勉強不足なのかはわからないけど、言ってることがごちゃごちゃになってるよ」


唯一の希望とか言ってるのに二択とか言ってるし……。

とにかく、かげくんが姉のあたしからチョコレートを貰いたいって熱意だけはひしひしと伝わってきた。催促しなくたって毎年あげてるのにな。


「はい。ご所望のチョコレートだよ♪」

「わーい!」


お姉ちゃんを独占したいのか『他の人にもあげた?』と聞いてくるかげくんの台詞は毎年恒例となっていた。
『誰にもあげてない。かげくんだけだよ』と囁くだけで、やきもち焼きの弟は不満を払拭して予想以上に喜んでくれるのだ。
愛いやつめ。



姉、小五
弟、小四


「姉ちゃん……こんなこと言うとあれだけどさ」

「うん。どーしたん?」

「ぺったんこのままだね」

「……ほっとけ。かげくん、デリカシー無い。あたしちょっと気にしてるのに」


姉弟が一緒にお風呂に入るのは決して珍しい話ではないと思う。小さい時なら尚更、他の家庭でもきっとそうだろう。特に混浴をしている意識はない。
かげくんは女の子の体に興味津々だった。
あたしの膨らみのない胸をぺたぺたと触っている。ちょっとくすぐったいかも。

「友達に聞いたんだけどね、好きな人に揉んでもらうと大きくなるんだって。あの話ほんとーなのかなぁ……」

「へぇ~……こんな感じ?」

「あふ……わかんないけど、ちょっと強く掴み過ぎかな。もう少し優しく扱ってほしいかも」

「そんじゃ、このくらいなら?」

「んっ。くすぐったい……でも、さっきよりは全然いい。かげくんの手、あったかい…………って、あれ?」

ふと目線が下に行って、とんでもないものを目の当たりにしてしまった。


「ん?どーしたの?」

「えっと、その……今気付いたんだけどね、かげくんのゾウさんってそんなにおっきかったかなって」

「ああ、これね……よくわからないけど、ちいさくなったりおっきくなったりするんだよね。なんでだろ?」

「ふうん……おもしろいね」

物は試しだと先っぽをつんつんしてみた。かげくんの体が一瞬ビクッと震えて、こっちまでびっくりしたのをよく覚えている。
男の子じゃないからわからないけど、何だかパンパンに膨らんでて痛そうに見えた。痛くないのかな?

当時、まだ子供だったあたし達はお互いの体のことについて甚だしく疎かった。



その日の次の日。早朝。登校前。

あさごはんの時間になっても中々かげくんが起きてこないから、お姉ちゃん自ら率先して様子を見に行くことにしたの。


「かげくん、おはよー。起きて。あさごはん冷めちゃうよ」

部屋に着いてみると案の定、かげくんは屈託のない寝顔を晒して幸せそうに横になっていた。多分まだ夢の中。
気持ち良さそうに眠っているのに起こすのは可愛いそうだけど、そろそろ声を掛けないと学校に遅れちゃう。


「かげくん、かげくん」


声を掛けても起きない時は、肩とか布団を軽く叩いて反応を待つ。大体はこの2段階で起きてくれるんだよね。


「んぁ……うい。……今日のあさごはんなに?」

「かげくんの好きな目玉焼きとたこさんウィンナーだよ」

「たこさんウィンナーとかいらね。それよりも、おはようのちゅーは?」


ちょくちょく起こしに来てあげてるんだけど、最近はいつもこんな風に甘えてくる。
あたしの顔を見るなり両手を伸ばしてキスの催促。お姉ちゃんをからかって遊ぶのも大概にして欲しい。
あんまり意地悪するなら、こっちだって本当にキスしちゃうよ。あとで後悔したってしらないからね。


「かげくんが二度寝しないで起きてくれたら、ご褒美にあげるね ♪」

「マジでか!? うっひょー!じゃあ起きるわ!学校でダチ公に自慢しよ!」


あ、あれ……強がりで言ってみた冗談だったんだけど、これってキスしてあげなきゃダメな展開になっちゃってる……?


「ほらほらうたちゃん!俺ちゃん言う通りに起きたぜ!早くちゅーくれよ~!」

「ほ、ほっぺたにちゅー……でいい、よね? 口にするのは恥ずかしいから……」

「おっけ。それで手を打とう」

「どーしてかげくんが偉そうなのっ!?」


そんなやり取りを交わしたのち、羞恥に目を瞑りながら軽く背伸び。
あたしからのキスを待ち侘びるかげくんの頬はほんのりと紅潮してた。大口を叩いておいて緊張してたのかな。


姉、小六
弟、小五

思えば、あたしがアイドルを志したのはこの頃だった。
元から歌うのが好きで、音楽を聴きながら何かをするのが多かった気がする。
例をあげるなら、宿題をしてる時とか買い物に出掛ける時かな。ぼーっとしてる時もまた然り。
お風呂にのんびりと浸かりながら鼻歌を歌った経験があるのは、おそらくあたしだけじゃないはず。


「ねーちゃん、ほんと歌上手いよな。脱帽ですわ」

「褒めてくれるのは素直に嬉しいんだけど、どうしてあたしにアニソンばっかり歌わせるの?」

この日は二人でカラオケ屋さんに行った。一曲歌い終えるたびに、かげくんがパチパチと手を叩き惜しみ無い拍手をあたしに送る。
本当は自分で歌いたいんだけど、声変わりして女性歌手の声を真似るのは難しくなったそうだ。
高い声を維持するのが困難なのも理由の一つだが、ずばり女声を出して歌っているところを姉に見られたくないというのが一番の理由らしい。声が途中で持たずに掠れちゃうんだって。


「なあなあ、ねーちゃん。次はこれ、これ歌って」

「え~……またあたし? 連続で歌ったから疲れちゃった。次はかげくんが歌ってよ。本物に似せて歌いたいなら男の人の曲でもいいよね。男性アイドルのとかどう?」

「いやだ。俺はねーちゃんの可愛い声が聴きたいからここに来たんだ。誘ったのはうたちゃんの方だろ。もっと聴かせろよ~」

「可愛い声か……お姉ちゃんが可愛いのは声、だけ……?」

「いんや、うたちゃんは声は勿論、顔にスタイルまで完璧。性格も優しい自慢のねーちゃんだよ。クラスの奴らに『お前のねーちゃん可愛いよな』ってしつこいくらい羨ましがられてるし」

「もっとほめて!もっとほめて!」

「こんな可愛い姉に恵まれた俺はきっと運が良い。もしも女優とかアイドルになったら、あっという間に人気者になれるだろうね」

「よし、わかった。おねーちゃん、かげくんの気が済むまで歌っちゃう!かげくんが望むならアイドルにだって何だってなっちゃう!」


社交辞令の上手な弟が、冗談でも褒めちぎってくれるのは嬉しい。
最初こそおばあちゃんから勧められて目指そうと決めたアイドルだったけど、最終的に背中を押してくれたのは、かげくんのお墨付きだったんだよね。



姉、中一
弟、小六


アイドルになって間もない頃、段々と仕事が忙しくなって休みが取り辛くなってきた。
それに伴い、大好きなかげくんとの会話も徐々に疎遠になる。仕方のないことだけど、自分で決断して進んだ道だから甘んじて受け入れるしかないよね。

欲求不満で寂しくなったあたしは、久しぶりに取れた休みの日、かげくんのお部屋に遊びに行ったの。


「ねぇ……かげくんって好きな子いないの?」

「ん?どうして?」


あ、あれ……もしかしてかげくん怒って、るの?
いつもなら、あたしの質問にすぐにでも答えてくれるのに。
聞いちゃいけない事だったのかな。


「ごめんね。あんまりそういう話聞かないから気になっちゃって」

「いるよ。教えて欲しい?」

「う……うん。教えて、欲しい」


かげくんに彼女が出来たらいいなーって気持ちと、かげくんに彼女が出来ちゃったら仕事の件と重なって余計に寂しいなって気持ちがごっちゃになっちゃってる。
何だろうな、この切ない感じ。


「この子」

「へ……」


かげくんがあたしの顔を指差して言った。
ボッという音が聞こえそーなくらい顔が赤く染まっていくのがわかる。
恥ずかしいけど嬉しい。
可愛いとは何度も言われたことがあるけど、ずっと冗談だと思ってた。
あれってもしかして、全部本気で言ってたの……?



「またまたかげくんは……あまりお姉ちゃんをからかわないで……本気にしちゃうよ?」

「からかってないよ。俺、うたちゃんより可愛い女の子見たことないもん」


この一言で、あたしの顔は一層赤くなった。
かげくんはお姉ちゃんをからかってる。
困らせて遊んで楽しんでるだけ。
きっとそう。



アイドルとして活動するあたしにはもちろん、仕事に見合った報酬として、大人と同じように給料が支払われる。
水嶋歌姫の知名度が順調に上がっていくのと連動して、うなぎのぼりに給料も増量されていった。それも増えすぎて使い切れないくらいに。
余談になるが「水嶋歌姫」という芸名はかげくんが考えてくれた。
当時爆発的な人気があった俳優の苗字とお姫様みたいに可愛い容姿をプラスして連想したんだとか。
お姫様みたいとか、自分で言ってて恥ずかしい。顔が熱くなってくる。


「かげくんかげくん、今月のお小遣いだよ」

「うわっ!? すげぇ!また増えてる!こんな大金みたことねぇ!」


これまでは三万円のお小遣いをあげていたんだけど、今月からはあたしの給料が倍近く膨れ上がったのをきっかけに、かげくんにあげるお小遣いも倍の六万円に増やしてみました。
単純に貰える金額が増えて嬉しかったのか、予想を上回る驚きっぷりだ。


「ねーちゃんありがとう。ほんとにこんな頂いちゃっていいのか?」

「だいじょーぶだよ。それで自分の欲しい物どんどん買って。六万円で足りなそうだったら遠慮なく言ってね。お仕事頑張って、来月からもっと増やせるようにするから」

「いやいや、これだけでも十分過ぎるくらいに貰ってるからさ。にしてもうたちゃんすげーわ。可愛くて性格もよくて有名人でおまけに金持ちだなんて……。流石俺の自慢のねーちゃんだ」


かげくんは頑張ったあたしを賞賛し、優しく頭を撫でてくれた。
お父さんお母さんに頭を撫でられている子供もこんな感じなのかな。
気持ちよくて『もっともっと、もっとして』って、自然と身を委ねたくなってくる。


「もう止めちゃうの……?」

「あれ……うたちゃん?」

「かげくんが嫌じゃなかったら、もっと撫で撫でしてほしいな」


かげくんが手を止めた瞬間、名残惜しさを感じた。
こんな幸せな時間がずっと続けばいいのになぁって、儚い思いに駆られた。
とろんと火照った表情でしばらく見つめていたら、


「よーしよーし!うたちゃんいい子いい子~!」

「わわ!か、かげくんっ、撫でるならもっとそっと……優しく撫で撫でして!」


飼い主にわしゃわしゃと撫でられる愛犬みたいに扱われた。
おかげで髪がぼさぼさっ……ひどい!
最初はそう思ったんだけど、雑なスキンシップでも嬉しかったから結果オーライかな。



姉、中二 
弟、中一

「姉ちゃんってさあ……ほんと、めちゃくちゃ可愛いよな」

「えへへ。ありがとー。よく言われる」


かげくんは小五を境に急激にませた。
この頃から告白染みたお世辞を毎日のように連呼するようになったんだよね。
それから二年経っても未だに同じことばっかり言ってて、飽きないのかなっていっつも思ってた。


「うたちゃんのぱんつみたい」

「とーとつだなぁ……かげくんのえっち。お姉ちゃんのぱんつ何か見て嬉しいの?」


『この世は所詮可愛いが正義さ』
とか、よくわからないことをかげくんは言う。
終いには『ぐへへ。姉ちゃん今日どんなぱんつ履いてんの?』と、まるで変態オヤジみたいなことまで宣って、あたしにぱんつを見せろと執拗に催促した。
そういうお年頃だってのはわかってたけど、お姉ちゃんはちょっと悲しい。
小さくて可愛かったあの頃のかげくんも今では思春期真っ只中だ。


「このぱんつだけど?」


何の躊躇いもなく弟相手にぱんつを披露した。
おもむろにスカートをたくしあげる姉に、かげくんは驚きを隠せないでいる。
こういう場面特有の、両手で顔を覆うお決まりの動作はしているものの、指の隙間からしっかりと下着を目に焼き付けている。
別段、恥ずかしいといった気持ちはない。
そもそも、普段着替えているところを見られたり一緒にお風呂に入ったりしている仲なのに、どうしてぱんつ何か見たいのか。


「おお……かわいーぱんつだね。それ俺にく……」

「……く?」

「くれないかな……なーんて。あは、はははは……はは……」

「かげくんが欲しいなら別にいい……けど」

「ほんと!?」


そんな歓喜の声を上げられたら『やっぱりダメ』とは言い難い。
あたしはかげくんのこと大好きだし、欲しい物があるなら何だってプレゼントしたい。
でも、それでも……これだけは話が別。
あたしも流石に恥ずかしいし、履いちゃったのは汚いから、買ったばかりで未使用の方をあげるって、そう提案したの。

ーーそしたら、


「今履いてるやつがいいんだ。それをちょうだい!」


よくわからないけど、すごく必死そうに懇願された。
本当にかげくんは、ぱんつが欲しいって心から思ってるの? それとも、強要された?


「……かげくん、なんか変。いつもとちがう。悩み事があるならお姉ちゃん相談に乗るよ?」

「べ、べつに悩み……何てないよ」

「うそ。顔見たらわかる。確かにかげくんは最近えっちな発言多くなってきたけど……、それでもお姉ちゃんを故意に困らせるようなこと言ったりしないもん。お願い。ほんとーのこと話して」

「じ、じつはさ……うたちゃんがどんなぱんつ履いてるのか聞いて来いって命令されたんだ ……それと、そのぱんつ奪って来いって」


ほぉ……またか。

どうやら、かげくんをよくいじめていたあの男があたし水嶋歌姫のファンになったらしい。
もう我慢の限界。何回かげくんに乱暴したら気が済むの?
これまでは『敵討ち何てする必要ない』って、かげくん本人から止められてたけど、今日という今日は、あいつに話を付けに行こうと思う。
可愛い弟の日常が脅かされるのは到底黙認出来ない。

ーー今度こそ、あたしがかげくんを守るんだ。











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