親友を落とす方法

たいら

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 拓真の家を出て三日後、ビンタ男こと小早川がカラオケ屋に来た。
「村井くんがさ、うちの事務所辞めるって言うんだよ」
「え?」
 小早川は飲み放題のハイボールを片手にレジに現れた。
「困るんだよねぇ、エースに辞められると。僕の仕事が増えるからさ」
 ビンタ男はレジで頬杖をつき、いかにも困ったと目をつぶってため息をついた。
「それって独立ってやつ?」
 拓真が前にいつかするって言ってたやつか。
「それがさ、弁護士を辞めるって言うんだよ」
「えっ、なんでっ!?」
「別に好きで弁護士やってたわけじゃないし、君がいないなら他人なんかどうでもいいんだって」
 ……おいおい、たった三日で極端すぎるだろ。なんで弁護士まで辞めるんだよ。
「君が逃げ出したのもわかるよ。結局村井くんは恋愛には慣れてないからさ」
「…………」
「僕みたいな遊び人にはなれないんだ」
 温もりを感じて手を見ると、小早川の手が重なっていた。
「僕なら君に心配させたりしないし、君を自由にさせてあげるし、いっぱい楽しませてあげるよ?」
 気がついたら小早川の頬をビンタしていた。






 ……いやいや、これもあいつの罠だ。
 俺に心配させて戻るように仕向けてるだけだ。
 インターフォンを鳴らすと、三日ぶりに会う拓真がドアを開けてくれた。拓真は無言で俺を見てすぐに部屋に引き返した。
 玄関まで積み上がった段ボールを避けながら中に入ると、カーテンまで無くなった部屋は殺風景だった。
「……引っ越すのか?」
「収入が減るから引っ越さないと」
 たった三日俺がいなかっただけで引っ越し先まで決めたのか? ありえない。これも罠だ。
「次は何するつもり?」
 気づいていないふりをしてそう聞くと、本棚から本を取り出しながら拓真が言った。
「お前が働いてるコンビニとカラオケで働く」
「嘘だろ?」
「昨日面接受けてきた」
 どっちも人手不足だし、年中募集してるけど。まさかこいつ本気か?
「きもちわるっ」
「そんなのはお前と出会ったときから知ってる」
 そう言って拓真が無表情で本棚から出した本を重ねて紐で束ねていく。
「お前は何しに来た?」
「百万貸してくれ」
「百万?」
 拓真が本の束から顔を上げた。
「泥酔して母親の彼氏殴っちまった。それとパチスロと競馬で負けた分」
 ……結局我慢なんかできなかった。泥酔して初めて会った母親の彼氏を殴ってしまったし、ストレスでギャンブルをやってしまった。たった三日で百万に膨らんだ借金は自分ではどうにもできなかった。
 ……結局拓真に頼らざるをえなくなった。
 拓真が立ち上がり、眼鏡を直しながら近づいて来た。
 腰に手を添えられると、反射的に拓真の首に腕を回していた。
「返すあては?」
「ない」
 拓真の鼻が俺の鼻に触れて、顔に息がかかった。
「一回いくらにする?」
「百万」
「一回だけ?」
「足りないなら毎月誰か殴ってやる」
 ……仕方ない。罠でもなんでもいい。こっちはこいつに弁護士のまま稼いでもらわないと困るんだ。
 今さら回数なんて意味ないし。
 結局拓真がいないと生きられないし、拓真も俺がいないと生きられない。俺たちはたった三日さえも離れられないんだ。






「……あっ……あっ……あっ……あっ……」
 三日拓真に触れなかっただけでお預けをくらっていたみたいに感度が増した体は、愛撫を続ける拓真の髪を掴んでいた。
「……はやくっ! ……挿入れろって……!」
 髪を引っ張っているのに拓真は乳首に執着して離れないし、指で俺の中を弄んでいる。
 毎回拓真に体を好き勝手されているうちにじわじわと体が熱くなっていく。それでも焦らされ続けるこの時間が苦痛だった。
「……はやく……っ!」
 拓真の顔を乳首から引き離して、入れ替わるように拓真を押し倒した。拓真の上に乗り、早く欲しかった場所に拓真の性器を導いていた。
「……あっ……」
 自分の中に押し込んだよく知っている形は、すぐに気持ちいい場所に当たり、自然と体を揺らしていた。
 起き上がった拓真に腰に手を添えられ、下からも突き上げられる。
「……あっ! あっ! あっ! あっ! ……」
 すぐにイきそうになり、動きを止めたが、拓真の突き上げは止まらなかった。
 ……少しでも長く中で奥まで拓真を感じていたいのに。
 拓真にゆっくり押し倒され覆い被さられると、すぐに拓真の腰が激しく動き出した。
「……ぁああぁあぁっ、ぁああぁぁあぁぁっ……!!」
 容赦なくイかされたあとも俺の中の拓真を締め付け、逃さなかった。
「……まだ抜くな」 
「…………」
 拓真が顔を近づけ、俺の頭を撫でた。
「俺のこと好き?」 
「…………」
 ……仕方がない。今だけだ。こいつには俺のために弁護士を続けてもらわないと困るんだ。
「うん」
「ずっと好きだった?」
「…………」
 ありえないくらい勘違いした質問にも仕方がなく頷いた。
「うん」
 嘘だぞと目で訴えたかったのに、キスをされ、目をつぶってしまった。
 ……どうやったらこいつのこれ以上の勘違いを止められるんだ? 俺たちはセックスもする親友で恋人になるつもりは全くないのに。
 そう思いながら拓真の背中に腕を回していた。
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