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「なぁ、もうそろそろ出てってくれよ。お前がいると赤ちゃんが寝ないんだよ」
「…………」
先輩の家はベビーグッズで溢れていて、俺の眠る場所はオムツの山の横だった。
……あいつはいつから俺を騙していたんだ?
……いつからあいつの中で俺は親友じゃなくなってたんだ?
「……あぅー」
赤ちゃんの小さな手が俺から小さな音が鳴るおもちゃを奪おうと動いている。その小さな手が可愛くてずっとやっていたかった。
でもその可愛さをもってしても俺の煮えたぎる怒りを抑えることはできなかった。
……あいつは自分の性欲のために俺を騙してセックスせざるを得ないように追い込んだんだ。俺の体を何だと思ってやがるんだ。あいつのせいで男同士のセックスを知ってしまったんだ。
……あいつをボコボコにしてやりたい。
赤ちゃんにおもちゃを渡してやると、赤ちゃんは小さな鈴の音をたてながらそれを舐め始めた。その姿をもってしても、俺の心は全く癒されなかった。
……襲撃してボコボコにしてやる。
俺の体を弄んだ罰だ。俺がこの手できちんと仕返しをしてやる。
先輩の家を出て、拓真の弁護士事務所が入るビルへ行ったが、さすがに目の前で待つことはできず、道路を挟んだ向かいのガードレールに座って拓真が現れるのを待つことにした。
用意したのはコンビニで買ったペットポトルの水のみ。
……まずこのペットボトルをあいつに投げつけ、あいつが倒れたところを狙ってボコボコにする。これが作戦だ。通報されたってかまわない。何があろうとこの手であいつに罰を与えてやるんだ。
暗くなっても拓真は現れなくて、そろそろ帰ろうかと思い出した頃にようやく現れた。
拓真は駅の方から徒歩で弁護士事務所が入るビルに向かっていた。しかし途中でそのビルから出てきた人物と話し、そのまま二人で元来た道を引き返した。
……なんだよ、どこ行くんだよ。
道路を挟んだ歩道から二人を見ながら追いかけた。
二人は話しながら並んで歩いている。拓真といるのは、拓真と同じような背格好のスーツを着た男だった。
襲撃のタイミングを狙って道路を渡り、二人の後ろを歩いていると、二人は人気のない方へ歩いていく。
……おいおい、冗談だよな?
まさかとは思ったが、二人が入って行ったのはホテル街だった。嫌な予感がして付いて行くと、二人は変わらず話しながらホテル街の中を歩いて行く。
……こんなところで仕事か?
しかし二人でラブホテルに入るとわかった瞬間、ペットボトルを拓真の後頭部に投げつけていた。
拓真が倒れ、驚いているもう一人の男にビンタをして馬乗りになった。
「……やめろって!」
「……離せっ!」
すぐに起き上がった拓真に羽交い締めにされ、男から引き剥がされ、足を引きずられてホテルから離れて行く。
「離せっ! あいつ誰だよっ!!」
狭い路地裏に連れて行かれると、突然拓真の手が離れ、尻もちをついた。
「お前、あいつともヤってるのかっ!?」
立ち塞がる拓真が珍しく罰の悪そうな顔をした。
「あいつ誰だよっ!? あいつと付き合ってるのかっ!? 付き合ってるのに俺とヤったのかっ!?」
「……違う」
「何が違うんだよっ!?」
「付き合ってはいない」
「でもあいつとヤってるんだなっ!? 俺としたあともあいつとヤったのかっ!?」
「…………」
拓真が否定しないことがショックで、頭がおかしくなりそうだった。
もう一度あいつを殴りに行こうと拓真の脇を通ろうとすると、拓真に抱きしめられ、身動きが取れなくなった。
「どけよっ!」
「本当にごめん。俺が悪いから俺を殴ってくれ」
「……なんでだよっ! なんで俺以外ともしてるんだよっ!? お前俺のことが好きなんだよなっ!?」
「……ごめん」
「なんでだよっ!?」
拓真が俺を裏切ったことがショックだった。
カードを偽装されたことよりもショックで、拓真の背中を殴りながら泣いていた。
「なんで俺以外ともするんだよっ!?」
なんでこんなにショックなのかわからなかった。拓真の彼女とも会ったことがあるのに、どうしてこんなことが今さらショックなのか。
「もう二度としないから」
俺を抱きしめながら言うその言葉が信じられなかった。
なんでだよ。なんで俺を裏切るんだよ。
……苦しい。
なんで苦しいんだよ。こんな気持ち、誰にもなったことない。拓真が俺を裏切ることだけは許せなかった。
拓真に無理矢理タクシーに乗せられ、拓真のマンションに連れて行かれた。部屋の中は何も変わってなくて、俺の私物がまだ当たり前のように置かれていた。
「あいつはここには来ないのか?」
「来たことない」
「他は?」
拓真は自分の家なのにスーツを脱ぐわけでもなく、ただ突っ立っている。
「お前以外誰も来たことない」
「じゃあ他にも家があるのか? 毎回ホテルに行くのか?」
「俺はお前に彼女ができる度に男と付き合ってきたし、お前がこの家にいない日は男と会ってたよ。お前の親友でいるためにはそうするしかなかったんだよ」
「知るかよ、そんなこと」
聞きたくない。
知らない方が良かった。こいつが俺を好きなこととか、他の男とも寝てることとか。でも知ってしまったせいで湧き上がるこの怒りをどうしても抑えることができなかった。
……なんで俺のことが好きなのに他の男ともするんだよ。
もう二度とこんな気持ちになりたくない。二度とこいつに俺を裏切らせたくない。俺にはこいつしかいないのに。
「二度と俺以外とするな」
こんなこと言いたくない。こんな修羅場みたいなこと親友とするなんておかしいのに。
でも拓真は俺の目を見ながら言った。
「わかった」
……なんでだよ。
駄目だろ。俺たちはどういう関係なんだよ。こんなの、もう親友って呼べないだろ。
「…………」
先輩の家はベビーグッズで溢れていて、俺の眠る場所はオムツの山の横だった。
……あいつはいつから俺を騙していたんだ?
……いつからあいつの中で俺は親友じゃなくなってたんだ?
「……あぅー」
赤ちゃんの小さな手が俺から小さな音が鳴るおもちゃを奪おうと動いている。その小さな手が可愛くてずっとやっていたかった。
でもその可愛さをもってしても俺の煮えたぎる怒りを抑えることはできなかった。
……あいつは自分の性欲のために俺を騙してセックスせざるを得ないように追い込んだんだ。俺の体を何だと思ってやがるんだ。あいつのせいで男同士のセックスを知ってしまったんだ。
……あいつをボコボコにしてやりたい。
赤ちゃんにおもちゃを渡してやると、赤ちゃんは小さな鈴の音をたてながらそれを舐め始めた。その姿をもってしても、俺の心は全く癒されなかった。
……襲撃してボコボコにしてやる。
俺の体を弄んだ罰だ。俺がこの手できちんと仕返しをしてやる。
先輩の家を出て、拓真の弁護士事務所が入るビルへ行ったが、さすがに目の前で待つことはできず、道路を挟んだ向かいのガードレールに座って拓真が現れるのを待つことにした。
用意したのはコンビニで買ったペットポトルの水のみ。
……まずこのペットボトルをあいつに投げつけ、あいつが倒れたところを狙ってボコボコにする。これが作戦だ。通報されたってかまわない。何があろうとこの手であいつに罰を与えてやるんだ。
暗くなっても拓真は現れなくて、そろそろ帰ろうかと思い出した頃にようやく現れた。
拓真は駅の方から徒歩で弁護士事務所が入るビルに向かっていた。しかし途中でそのビルから出てきた人物と話し、そのまま二人で元来た道を引き返した。
……なんだよ、どこ行くんだよ。
道路を挟んだ歩道から二人を見ながら追いかけた。
二人は話しながら並んで歩いている。拓真といるのは、拓真と同じような背格好のスーツを着た男だった。
襲撃のタイミングを狙って道路を渡り、二人の後ろを歩いていると、二人は人気のない方へ歩いていく。
……おいおい、冗談だよな?
まさかとは思ったが、二人が入って行ったのはホテル街だった。嫌な予感がして付いて行くと、二人は変わらず話しながらホテル街の中を歩いて行く。
……こんなところで仕事か?
しかし二人でラブホテルに入るとわかった瞬間、ペットボトルを拓真の後頭部に投げつけていた。
拓真が倒れ、驚いているもう一人の男にビンタをして馬乗りになった。
「……やめろって!」
「……離せっ!」
すぐに起き上がった拓真に羽交い締めにされ、男から引き剥がされ、足を引きずられてホテルから離れて行く。
「離せっ! あいつ誰だよっ!!」
狭い路地裏に連れて行かれると、突然拓真の手が離れ、尻もちをついた。
「お前、あいつともヤってるのかっ!?」
立ち塞がる拓真が珍しく罰の悪そうな顔をした。
「あいつ誰だよっ!? あいつと付き合ってるのかっ!? 付き合ってるのに俺とヤったのかっ!?」
「……違う」
「何が違うんだよっ!?」
「付き合ってはいない」
「でもあいつとヤってるんだなっ!? 俺としたあともあいつとヤったのかっ!?」
「…………」
拓真が否定しないことがショックで、頭がおかしくなりそうだった。
もう一度あいつを殴りに行こうと拓真の脇を通ろうとすると、拓真に抱きしめられ、身動きが取れなくなった。
「どけよっ!」
「本当にごめん。俺が悪いから俺を殴ってくれ」
「……なんでだよっ! なんで俺以外ともしてるんだよっ!? お前俺のことが好きなんだよなっ!?」
「……ごめん」
「なんでだよっ!?」
拓真が俺を裏切ったことがショックだった。
カードを偽装されたことよりもショックで、拓真の背中を殴りながら泣いていた。
「なんで俺以外ともするんだよっ!?」
なんでこんなにショックなのかわからなかった。拓真の彼女とも会ったことがあるのに、どうしてこんなことが今さらショックなのか。
「もう二度としないから」
俺を抱きしめながら言うその言葉が信じられなかった。
なんでだよ。なんで俺を裏切るんだよ。
……苦しい。
なんで苦しいんだよ。こんな気持ち、誰にもなったことない。拓真が俺を裏切ることだけは許せなかった。
拓真に無理矢理タクシーに乗せられ、拓真のマンションに連れて行かれた。部屋の中は何も変わってなくて、俺の私物がまだ当たり前のように置かれていた。
「あいつはここには来ないのか?」
「来たことない」
「他は?」
拓真は自分の家なのにスーツを脱ぐわけでもなく、ただ突っ立っている。
「お前以外誰も来たことない」
「じゃあ他にも家があるのか? 毎回ホテルに行くのか?」
「俺はお前に彼女ができる度に男と付き合ってきたし、お前がこの家にいない日は男と会ってたよ。お前の親友でいるためにはそうするしかなかったんだよ」
「知るかよ、そんなこと」
聞きたくない。
知らない方が良かった。こいつが俺を好きなこととか、他の男とも寝てることとか。でも知ってしまったせいで湧き上がるこの怒りをどうしても抑えることができなかった。
……なんで俺のことが好きなのに他の男ともするんだよ。
もう二度とこんな気持ちになりたくない。二度とこいつに俺を裏切らせたくない。俺にはこいつしかいないのに。
「二度と俺以外とするな」
こんなこと言いたくない。こんな修羅場みたいなこと親友とするなんておかしいのに。
でも拓真は俺の目を見ながら言った。
「わかった」
……なんでだよ。
駄目だろ。俺たちはどういう関係なんだよ。こんなの、もう親友って呼べないだろ。
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