上 下
199 / 249
ビビりとモフモフ、冒険開始

反省してくれりゃそれでいいんだ

しおりを挟む
ラルフに手を引かれて、トイレから戻ってきた詩音。
その腕には、ロリータ服着てリボン着けてる、ちっこいウサギが居た。

「お、また事故テイム?」
「それならどれだけ良かったか……」
「えっと、この子…お茶会に参加してた、ご令嬢だそうで……」
「え」

何がどうしてそうなった?

『なんで…なんで私がこんな目に……?!』
「……マジだ、アルファルファじゃん。」
『アルファストよっ!!』
「未來くん、それ豆科の植物です。」

知ってる。栄養価が高いらしいよ、アルファルファ。

「アルファストもアルファルファも、変わんないって。」
『変わるわよ!って…え?言葉が通じてるの…?』
「バリバリ通じてる。」
『やった!詰んだと思ったけど希望見えたわ!お願い、助けて!紫の魔女の呪いで、ウサギにされちゃったの!』
「…紫の魔女って……」
「……お母セレスティアさんです。」
「何があったの。」

そして俺は、こうなった原因を知るのであった。

───────
──────
─────

まな板にプルプルしてるウサちゃんを置いて、包丁を装備。
さて、始めよう。

テレレッテ テテテン♪テレレッテ テテテン♪
テレレッテ テレレレ テッテッテン♪
(某3分間のクッキングのテーマの冒頭)

「はい、今日ご紹介するお料理は、ご存知ピーターなラビットのパパの末路ウサギのミートパイです。今回は先ず、ウサギを絞める所からですねー。しっかり、血抜きしましょうねー。」
『やめてぇええええっ!?もうしないっ!もうその子に危害加えないからぁあああ!!』
「落ち着いて未來くん!私大丈夫でしたから!この子でパイ作ったら、殺人に成っちゃいます!!」
『ゴブリン退治が、楽に成りそうなのです。』

小梅、それは『こんなウサギ食べたくないから、ゴブリン誘き寄せる、撒き餌にするのです』ってことかな?

「止めないんですか小梅ちゃん?!」
『ツーン、なのです。』

うーん、プイッとする小梅も可愛いなぁ。

『シオンちゃんに、暴力振るおうとしたんでしょ?止めてやる義理無いよー。』
『しおにーちゃん、いじめるの、めっ!だもん!』
『という訳で、やっちゃえお兄ちゃん☆』

はい、満場一致でウサパイの刑に処します。
陽向は、たぶん解ってねーけど。
小梅と俺以外、全員詩音にテイムされてるしな。
そりゃ、激おこなわけでして。

「よし、任せろ。えーと、ウサギの皮ってどっから剥ぐんだろ…」
「や、やめてあげてくださいっ!」
『きゃぁあああっ?!包丁向けないでぇっ!刃物いやぁあああああっ!?ガクッ……』

あ、気絶した。少しは反省したかなぁ?
お料理セット片付けよう。

『この子、パイ生地で包むだけ包むです?』
「生地が毛まみれに成っちゃうじゃん。食べ物で遊ぶのはダーメ。詩音、縄ほどきたかったら、いいよ。」
「は、はい!ウサギさん、大丈夫ですか…?」
「暫くは気絶させておけ。少しは薬に成りそうだ。…それで、どうする?」
「とりま、おとーさんに相談しよーぜ。」
「そうだな…ディアドルフ殿と、父上にもご報告しなければ。」

……そうだ、パイ生地で包むのはダメだけど、布なら良いんじゃね?

───────
──────
─────

さて、やってきました領主様の執務室。
先ずは、この子を預かってるお家の偉い人に、報告しないとね。

「失礼しまーす。」
「父上、至急ご報告したいことが。」
「おや、どうした?」
「領主様。女の子が、この通りウサちゃんに成ったんだけど、どうしよう。」

…………うん、反応が無い。
領主様超困ってんね!

「…ラルフ、もう少し説明してくれ。」
「はい。此方のウサギは、現在母上とアンジュが開いている、お茶会の参加者の末路です。セーラ・アルファスト男爵令嬢だったかと。」
「その…色々ありまして、家の母が……ウサギさんにしてしまい…」
「…シオン殿の母君についても気になるが…色々とは?」
「詩音の可愛さに嫉妬したみたいで、扇子振りかぶって襲ってきたんだって。扇子当たる直前で、詩音のお母さんがダイナミックワープさせて、お仕置きとしてロリータウサちゃん化したらしい。」
「…………………」

しまった、領主様また固まった。

「ほう、それはそれは…フフッw…フハハハハハッ!!w」

あ、おとーさん!いい所に来たね!

「身の程知らずにも詩音を襲ったがために、セレスティアに拐われて、ウサギ化とは!!wハハハハハッwwwさwいwなwんwでwあwっwたwなwwwと言うかミライ、そのパイのような入れ物は何だ?w」

おとーさん、腹筋大丈夫?
そんな面白かった?ミートパイ型ウサちゃん用クッション(中にウサちゃん入れれるタイプ)。
詩音が即席で作ってくれたんだ。

「…事情は、まあ解った。しかし、当家でお預かりしたご令嬢が、誘拐の末ウサギにされたとあってはな…ディアドルフ殿、貴殿なら戻せるのではないか?」
「戻さなくてはダメかね?これほど愉快な仕置きは、そうないのだが。」
「アルファスト男爵家は、イーシャの妹君の嫁ぎ先なのだ。関係を、拗れさせる訳にはいかない。」

相手の娘さんが、率先して拗れさせてたけども。

「ふむ…親戚との関係は大切か。解った、何処か部屋を借りるぞ。」
「感謝する…すまない、シオン殿。嫌な思いをさせられたというのに…。ミライ殿も、親友を襲われて腹に据えかねているだろうが、今回の事は内密にしてもらいたい。」
「い、いえ。私は大丈夫でしたし…今回は、母もやりすぎだと思いますので。」
「領主様困らせたい訳じゃないし、このウサちゃんが反省してくれりゃ、俺はいいよ。」
「ありがとう。ラルフも、それで構わないか?」
「はい、父上。」

領主様が執事さんを呼んで、俺たちを空いてる客室に案内させてくれた。
ラルフの部屋で、なんかやるわけには、いかないよね。

「此方でございます。どうぞ、ご自由にお使いください。」
「ご苦労。」
「ありがと、執事さん。」
「ありがとうございます。」
「いえ、家令の勤めにございます故。」
「爺、時間まで此方で過ごすと思う。」
「畏まりました。お茶会が終わる頃、お迎えに参ります。」

さーて、ウサちゃん起こそう。
反省してるかなぁ…?

「しかし、叔母様が男爵家に嫁いでいたとは…」
「ラルフは知らなかったんだ?」
「実は、叔母様とは会った事が無いんだ。母上と折り合いが悪いらしい。」
『なんとなく、解る気がする。』
『ウサギのお母さんも、ウサギみたいな感じなのかもね~。』

…成る程。アルファルファ的なのが、奥方様の妹だったら……
やらかす度に真顔でド正論言われまくって、勝手に被害妄想して反発しそうだな妹。

『ぅぅ…パイは…パイは嫌ぁ……』
『起きるのです。』
『痛いっ?!』

あ、小梅…顔面猫パンチは……

『な、何すんのよ、この猫!私は貴族なのよ!』
『そんなこと言われても、小梅猫ですので知らないのです。』
『なっ…!覚えてなさい!アンタの飼い主毎、後悔させてやるわ!』
『しおにーちゃん、いじめたら、めっ!』
『何よ、羊の分際で私に意見するつもり?!』
「……おとーさん、コレちゃんと反省するまで、ウサギで良くね?」
「私もそう思うが、約束してしまったからな。」
「…ミートパイ。」
『ヒッ?!ミートパイは嫌ぁああああっ!!』
「……反省させるというより、トラウマを植え付けただけだな。」

どうしたもんかな。
この子、たぶん『助かる』って思ってるから、こんな感じなんだと思う。
どうすれば反省してくれるかな……

「…おとーさん、この子に『絶対守らないといけない制約』とかって、掛けることできる?」
「できるぞ。古の盟約にも使用した、魔力でできた制約書を使えば簡単だ。確か余りが…コレだな。好きに書いてみるといい。」
「ありがと!」
『え?ちょ、ちょっと…?ミライくん?…何書くつもりなの……?!』

何ってそりゃ、君を反省させるための条文だけど?
しおりを挟む

処理中です...