ビビりとモフモフの異世界道中

とある村人

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ビビりとモフモフ、冒険開始

第一異世界人発見

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もふもふ

なんだろ、背中を触られてるような…。
続いて頭を撫でられ、首回りをワシャワシャされる。
気持ちいいけど、勘弁してよ。俺まだ眠いのに。

身動ぎすると、今度はおなかの下に何かが入ってきて、軽く揉まれる。ぅ~…このっ!

『やめいっ!!』
「ひゃっ!ご、ごめんなさい、起こしちゃいました?」

むしろ、なんで起こさないと思ったの。
報復として、プニプニした白いほっぺに、肉球スタンプを押し付ける。

「むぃ~」
[朝っぱらからセクハラすんな。]
「ひゅみみゃへん…」

こうして、異世界生活二日目が始まった。

───────

「未來くん、何かお手伝いありませんか?」
「じゃあ、サラダ取り分けて。」
「はーい!」

キッチンが無いもんで、部屋の中のテーブルを外に出しての朝食作りだ。

献立は昨日のシチュー擬きスープと、ふわふわパンに、細切りニンジンと軽く炙った薄切り玉ねぎのサラダ。
現在、俺はサラダに味を付けれる物を作っている。
ドレッシング作りたいけど、酢が無いんだ…だから、いっそ美味しい油でいいかなと。

コカトリスという鶏擬きの皮を、細かく切った玉ねぎの茎と一緒にフライパンで焼き、鶏油チーユを生成。塩と胡椒で軽く味付けすれば完成。
パリパリの鶏皮せんべいを取り出して、油と玉ねぎの茎をまとめて採集ビンにつめておく。

鶏皮せんべいは、器に盛ってアイテムボックス行きだ。
オヤツにでもしよう。

「サラダの取り分け、完了しました!」
「はいよ。んじゃ、コレかけて…完成~。」

よしよし。無事に3人分・・・の食事が用意できた。
そんじゃ、いよいよ……

「……じゃあ、起こすよ?」
「は、はい……」

俺がフライパンを振るってた焚き火の側で、グッスリ寝ている…見知らぬ美人さん第一異世界人をどうにかせねば。

「…もしもーし、こんな所で寝てたら危ないっすよー。」
「ん~……」
「ちょっと、お姉さーん?」

声かけるだけじゃダメか…初対面の女性に触るのは気が引けるけど……獣状態なら許されるかな?

ぽふっ

[あーさーでーすーよー。]
「う~…何よぉ…………キャッ?!」
[おはようございます。]
「お、おは、よう……?」

お~、綺麗な青目。
青目って、なんか憧れるよね。
髪は焦げ茶色で、肌は少し日焼けしてらっしゃる。
美人さんは、ビックリしてても美人さんだなぁ。

「あ、あの…」
「はいっ?!……あ…この子、貴女の従魔?」
「ははははいっ…えっと…だ、大丈夫、ですか?その、具合がお悪いとか…どこか痛いとか…」
「え、えぇ。大丈夫、よ…」

美人さん、人間発見して少し落ち着いたかな。
俺より、詩音が話してあげた方がいいかも。

[詩音。落ち着くまで、そのまま相手してあげてくれ。]
[…ぅ、が、頑張ります……!]

うん、頑張って…………
…え?おま、いつの間に念話習得したの?

「えっと…わ、わわ私は、詩音と…申します…。」
「シオンちゃん、ね?アタシはレナ。ケールを拠点にしてる冒険者よ。」
「!ぼ、冒険者さんでしたか!」

詩音…女の子だと思われてることに気付け……

まあ、それは後で突っ込んでやるとして、ケールって、俺らの目的地じゃん!
この人…レナさんに色々聞いて、あわよくば案内してもらえたら超助かる!

「取って食べたりしないから、そっち行ってもいい?色々聞きたいことがあるの。」
「は、はい!その、れ、レナさんの分も御用意してあるので、あ、あああ朝御飯、どうぞ!」

かなりどもってるけど、詩音にしては話せてる方だ。
そんな怖くなさそうな、お姉さん相手だからかな。

「えっ?!あ、ありがとう……3人分?他に誰か居るんだ…そうよね、貴女一人じゃ旅は危険だし。」
「い、いえ、えっと、もう一人は…み、未來くん、なので……」
「ミライくん?男の子と旅してるの?…彼氏?」

…この世界でも、女性は恋バナってやつが好きらしいな。
レナさんがニマニマしてる。

「ち、ちちち違いますよっ!親友ですっ!私は男ですしっ!」
「ふぅ~ん♪で、彼氏くん何処行ってるの?」
「だから、彼氏じゃなくてっ!未來くんは、その子ですっ!」
「え……この狼くんが、ミライくん?」

えーと、レナさんはどっちに驚いてるんだろう。
詩音が一人旅してることか…従魔が人間のご飯食べてることか……両方?

「そ、そういえば、さっき…男の子の声で『おはようございます』って聞こえたけど…」
「は、はい、未來くんの念話です。」
「念話…なるほどねぇ。…でも、この子サラダとか食べれるの?」
「大丈夫ですよ。」

お、詩音の人見知りが解除された。
恋バナって、そういう効果あるのかね。

「未來くん、レナさんも落ち着かれたので、ご飯にしましょう。」
[ん、了解。]
「えぇぇ、本当に食べるの?…フォークにスプーンまであるけど、どうやって……」
『《ヴァリアント》!』

ぽふっ

「…とまあ、こうやって。」
「じ、獣人だったんだ…そりゃご飯同じにしなきゃ不平等よね。」

へぇ。この世界の獣人って、獣にも人にもなるタイプなのか。そりゃ好都合。
一般常識には、獣耳と尻尾生えてて、身体能力が高い人ってくらいしか情報無いから…レナさんは冒険の途中で知ったんだろうね。

「ほら、冷めない内に食べよ?俺立って食べるから椅子使って。」
「え、いいの?アタシこそ、只でさえお邪魔するんだから…立って食べるわよ?」
「女性を立たせるのは、俺の心情的にちょっと…。」
「そ、そう?じゃあ、遠慮なく座らせてもらうわ。」
「うん。あ、フォークとスプーン、木を削っただけの俺の手作りだから…使い辛かったらごめん。」

念のため5セット作っといてよかった。
昨日、スープ飲む直前に気付いたんだよね…器しか無いって。
不恰好だけど許してね。

「大丈夫大丈夫!アタシ、その気になれば枝でも無理矢理食べれるし、難なら素手でいくから!」
「わ、ワイルドなんですね。」
「冒険者なんてやってるとね。それに、食事提供してもらって、文句言うほど落ちぶれてないわよ。」
「そりゃよかった。レナさん綺麗だから、どこぞのお嬢様だったらどうしようかと。」
「もう、直ぐに嘘って解るようなお世辞言わないの。お嬢様なら、地べたでなんて寝てないわ。」

綺麗なのはお世辞じゃないんだけどな。
さて、俺の適当料理が、レナさんのお口に合えばいいんだけど。

「こ、これ美味しいっ!このスープ、なんでこんなに深い味わいが…?シオンちゃん、貴女いいお嫁さんに成るわよ。」
「だから、私は男ですっ!」
「はいはい、そういう事にしてあげるw」

詩音、完全なる女の子認定おめでとう御愁傷様……。
気持ちは解るよレナさん。
俺から見ても詩音可愛いし、とっくに声変わりした筈なのに声高めだし。

「本当ですってばぁ…あと、コレは全部未來くんが作ってくれました。」
「へぇ?ミライくん、料理人でも目指してるの?」
「いや、故郷で食堂の手伝いしてたってだけだよ。」

美味しいなら何より。
マジで適当に作ったから、不安だったんだよ。
…料理の出来に、運の高さは関係してないよね?
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