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「四季のことを食事って言うのは辞めてくれないか。
僕は君のそういう所が嫌いだと言っているんだ。
先日から何度も伝えてはいるが、人を軽視する癖をどうにかして貰いたい。」
「はぁ...。
ヴァンパイアの中でも人を大事にしよう、人を食事だと思うのは辞めようなんて馬鹿げたことを言うのはお前みたいな一部の奴だけだろ。」
「現に、今の教育ではそう教えている。
何のために新薬を開発していると思っているのか知らないが、ヴァンパイアと人間の共存を目指す現代に生きるのであれば......そのような考えは捨てることだよ。」
ピシャリ、と言い放った言葉に四季は背筋を無意識に伸ばした。
月城が、怒っている。
普段の穏やかな表情からは想像も出来ない眉間の皺に、百目鬼さえも怯んだ様子を見せた。
気まずい空気。
「あ!お、俺...お茶でも淹れようか?」
「お前が淹れる茶なんていらねェよ...、つーか帰れ。
俺と綾斗は二人で勉強するんだから。」
そんな言い方をするな、と言わんばかりに月城に頭をポンッ、と叩かれた百目鬼は不貞腐れながら頬杖をつく。
「僕はここ数日、馨に道徳というものを教えている。
見ての通り、あまり成果は出ていない。
このままここに居ると、君を傷つけることになるから...。」
ひとまず今日は帰ってほしい
月城の目がそう言っていた。
出来ればもう少し、月城と一緒に居たいのが本音。
結局避けていた理由も、自分の気持ちも伝えていない。
彼の小刻みに震える手も気になっている。
しかし、人間の自分が関与するのはナンセンスで、ヴァンパイアの純血同士が話し合う場であると考えるなら...。
「今日は帰るよ。
ダンスの練習に付き合ってくれてありがとう。」
「こちらこそ。」
立ち上がり扉のドアノブを掴む。
背後に立った月城が、四季の耳に唇を寄せると小声で囁いた。
「また明日。」
「!」
肩越しに振り返ると、濡れた瞳の彼と目が合う。
心臓が飛び出てしまうんじゃないかと思うくらいセクシーで、その先のことまで想像してしまう四季は顔が再び熱くなるのを感じた。
「...ん、...明日...早く会いたいから、部屋に着いたらすぐ寝る...。」
「...。」
今、声を潜める二人の間には百目鬼という隔たりがある。
願望は虚しく崩れ去り、四季はこの部屋を去ることしか出来ない。
大きな扉に腕をつき、言わば壁ドンを施す月城がどれだけカッコよく魅力的に写ったとしても、だ。
顔を真っ赤にしながら目をそらす四季の顎を即座に持ちあげ、顔の角度を変えながら触れるだけのキスをする彼は
「...本当は帰したくない...。」
欲情する獣そのものだーーー。
「っ、おやすみ!」
抜けそうになる腰を支え、外の月をぼんやり眺める百目鬼を横目に、四季は月城の部屋を飛び出した。
全速力で走った後のような心拍数。
顔は火が出そうなほどな熱く、髪の毛が逆立つレベルで興奮している。
四季は余計に月城のことしか考えられなくなった。
百目鬼に言われた嫌味も、来週にはテスト、再来週には舞踏会を控えていることも忘れ...頭の中を愛しい彼のことでいっぱいにする。
部屋に戻るなり熱く火照った口に触れ、彼の唇の感触や匂い、視線の熱さを思い出した。
「月城...。」
名前を呼べば体の熱がぶり返す。
彼の熱が冷めやまぬ前に、四季は小さな窓から見える月の光を浴びた。
夜になると輝く月は、彼そのものだ。
冷ややかで、誰の手にも届かない遠い存在は...より貪欲に求めたくなる。
「舞踏会が終わったら、月城にちゃんと告白しよう...。」
ーーー
ーーーーー
「...お前、あいつにキスするとか正気か。」
「盗み見なんて趣味が悪い。」
「盗み見じゃねェわ、お前が見せ付けてきたんだろ。
あー、本当ムカつく。人間に入れ込んでるお前も、黒須とか言う人間もどうかしてる。」
百目鬼は乱雑に頭を掻いてから、テーブルに足を放り投げた。
「足癖が悪い。」
「...なんで俺じゃないんだよ...。」
「...。」
威勢のいい百目鬼が珍しく気弱な声を発したせいで、月城はどんな反応をすれば良いか迷ってしまう。
確かに、幼い頃から許嫁として決められていた百目鬼には酷な話かもしれない。
女性役としてつけられた名前も、短く切ることが許されない髪も、全て月城の嫁になるために用意されているのだから。
「...俺はこんなに好きなのに...。」
ソファーに座る月城に近寄り、上から覆い被さる百目鬼は息を荒くしながら己の制服のボタンを外した。
程よい筋肉と肉に包まれた胸、割れた腹筋を惜しげも無く披露し、月城の四肢に太腿を擦り付ける。
「腹減ってんだろ?
前みたいに、胸も、脇腹も、内腿も...好きなだけ噛むといい。
俺のこと好きに出来るのは、綾斗だけなんだから...。」
普段からは想像できない甘い声が、室内に木霊する。
月城は自分の上で腰をくねらせる百目鬼の腰に手を回した。
「勉強する気がないなら追い出すよ。」
「別の勉強はする気満々だけど?」
月城のネクタイを抜き取り、ワイシャツのボタンを外した百目鬼は目を細めながら鎖骨をなぞる。
「駄目。
今日はこの本を読んでもらう。」
「あ...?何それ。」
「君が今一番読まなくてはならない食物連鎖に関する本だ...、っ!」
ガブ、と容赦なく鎖骨の下を噛んだ百目鬼は月城の血を吟味するように喉を鳴らした。
ただでさえ血が足りていないと言うのに、月城は堪らず腕で顔を覆う。
「本当、勘弁してくれ...。」
僕は君のそういう所が嫌いだと言っているんだ。
先日から何度も伝えてはいるが、人を軽視する癖をどうにかして貰いたい。」
「はぁ...。
ヴァンパイアの中でも人を大事にしよう、人を食事だと思うのは辞めようなんて馬鹿げたことを言うのはお前みたいな一部の奴だけだろ。」
「現に、今の教育ではそう教えている。
何のために新薬を開発していると思っているのか知らないが、ヴァンパイアと人間の共存を目指す現代に生きるのであれば......そのような考えは捨てることだよ。」
ピシャリ、と言い放った言葉に四季は背筋を無意識に伸ばした。
月城が、怒っている。
普段の穏やかな表情からは想像も出来ない眉間の皺に、百目鬼さえも怯んだ様子を見せた。
気まずい空気。
「あ!お、俺...お茶でも淹れようか?」
「お前が淹れる茶なんていらねェよ...、つーか帰れ。
俺と綾斗は二人で勉強するんだから。」
そんな言い方をするな、と言わんばかりに月城に頭をポンッ、と叩かれた百目鬼は不貞腐れながら頬杖をつく。
「僕はここ数日、馨に道徳というものを教えている。
見ての通り、あまり成果は出ていない。
このままここに居ると、君を傷つけることになるから...。」
ひとまず今日は帰ってほしい
月城の目がそう言っていた。
出来ればもう少し、月城と一緒に居たいのが本音。
結局避けていた理由も、自分の気持ちも伝えていない。
彼の小刻みに震える手も気になっている。
しかし、人間の自分が関与するのはナンセンスで、ヴァンパイアの純血同士が話し合う場であると考えるなら...。
「今日は帰るよ。
ダンスの練習に付き合ってくれてありがとう。」
「こちらこそ。」
立ち上がり扉のドアノブを掴む。
背後に立った月城が、四季の耳に唇を寄せると小声で囁いた。
「また明日。」
「!」
肩越しに振り返ると、濡れた瞳の彼と目が合う。
心臓が飛び出てしまうんじゃないかと思うくらいセクシーで、その先のことまで想像してしまう四季は顔が再び熱くなるのを感じた。
「...ん、...明日...早く会いたいから、部屋に着いたらすぐ寝る...。」
「...。」
今、声を潜める二人の間には百目鬼という隔たりがある。
願望は虚しく崩れ去り、四季はこの部屋を去ることしか出来ない。
大きな扉に腕をつき、言わば壁ドンを施す月城がどれだけカッコよく魅力的に写ったとしても、だ。
顔を真っ赤にしながら目をそらす四季の顎を即座に持ちあげ、顔の角度を変えながら触れるだけのキスをする彼は
「...本当は帰したくない...。」
欲情する獣そのものだーーー。
「っ、おやすみ!」
抜けそうになる腰を支え、外の月をぼんやり眺める百目鬼を横目に、四季は月城の部屋を飛び出した。
全速力で走った後のような心拍数。
顔は火が出そうなほどな熱く、髪の毛が逆立つレベルで興奮している。
四季は余計に月城のことしか考えられなくなった。
百目鬼に言われた嫌味も、来週にはテスト、再来週には舞踏会を控えていることも忘れ...頭の中を愛しい彼のことでいっぱいにする。
部屋に戻るなり熱く火照った口に触れ、彼の唇の感触や匂い、視線の熱さを思い出した。
「月城...。」
名前を呼べば体の熱がぶり返す。
彼の熱が冷めやまぬ前に、四季は小さな窓から見える月の光を浴びた。
夜になると輝く月は、彼そのものだ。
冷ややかで、誰の手にも届かない遠い存在は...より貪欲に求めたくなる。
「舞踏会が終わったら、月城にちゃんと告白しよう...。」
ーーー
ーーーーー
「...お前、あいつにキスするとか正気か。」
「盗み見なんて趣味が悪い。」
「盗み見じゃねェわ、お前が見せ付けてきたんだろ。
あー、本当ムカつく。人間に入れ込んでるお前も、黒須とか言う人間もどうかしてる。」
百目鬼は乱雑に頭を掻いてから、テーブルに足を放り投げた。
「足癖が悪い。」
「...なんで俺じゃないんだよ...。」
「...。」
威勢のいい百目鬼が珍しく気弱な声を発したせいで、月城はどんな反応をすれば良いか迷ってしまう。
確かに、幼い頃から許嫁として決められていた百目鬼には酷な話かもしれない。
女性役としてつけられた名前も、短く切ることが許されない髪も、全て月城の嫁になるために用意されているのだから。
「...俺はこんなに好きなのに...。」
ソファーに座る月城に近寄り、上から覆い被さる百目鬼は息を荒くしながら己の制服のボタンを外した。
程よい筋肉と肉に包まれた胸、割れた腹筋を惜しげも無く披露し、月城の四肢に太腿を擦り付ける。
「腹減ってんだろ?
前みたいに、胸も、脇腹も、内腿も...好きなだけ噛むといい。
俺のこと好きに出来るのは、綾斗だけなんだから...。」
普段からは想像できない甘い声が、室内に木霊する。
月城は自分の上で腰をくねらせる百目鬼の腰に手を回した。
「勉強する気がないなら追い出すよ。」
「別の勉強はする気満々だけど?」
月城のネクタイを抜き取り、ワイシャツのボタンを外した百目鬼は目を細めながら鎖骨をなぞる。
「駄目。
今日はこの本を読んでもらう。」
「あ...?何それ。」
「君が今一番読まなくてはならない食物連鎖に関する本だ...、っ!」
ガブ、と容赦なく鎖骨の下を噛んだ百目鬼は月城の血を吟味するように喉を鳴らした。
ただでさえ血が足りていないと言うのに、月城は堪らず腕で顔を覆う。
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