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6.私の気持ち (まだ3日目)
しおりを挟む~(『いつもの場所』にて)~
乗馬はレオンお兄様が教えてくれたけど、剣はヒュー…が教えてくれた。遠乗りできるようになると、護衛を兼ねて一緒に出掛けてくれた。
社交界についてはレオンお兄様が教えてくれたけど、世間のことはヒュー…が教えてくれた。
語学の勉強の後は、外国語で会話して楽しく復習させてくれた。
遠乗り、剣術、勉強、それらの休憩には色々な話をしてくれた。
私の思い出の中に、ヒュー…は家族と同じぐらいたくさん居るの。
いつのまにか、傍に居るのが普通になってたし、ずっとそばに居られると思ってたの。
でも、騎士爵になると決めてからのヒュー…は忙しくてあまり会えなくて、淋しかった。
ヒュー…だって目標に向かって頑張ってるんだからって我慢してたけど。
たまに剣の稽古とか遠乗りに付き合ってくれたのはすごく嬉しくて。
騎士爵になったヒュー…は社交界にも出るようになって、もっと会えなくなって。
レオンお兄様が様子を教えてくれたけど、社交界でのヒュー…は知らない人みたいで。
どんどん私から離れていってしまうみたいで、淋しかった。
どんどん私の知らない人になってしまうみたいで、悲しかった。
私もダンスの練習を始めたから相手役になってもらおうと思っても断られるし……。
私が相手だと子守みたいになって面倒なのかな、とか。
好きな人が出来て、その人に誤解されたくないのかな、とか。
私がもっと大人だったら、また傍に行けたのかな、とか。
歳の差なんて埋めようのないものだから、どうしたらいいのか分からなくって悩んで。
そんなこと考えてるうちに、ヒューの子爵領への赴任が決まっちゃって、どうしようかと思った。結局、私はヒューを引き止めるための何物も持ってなくて、子供っぽすぎると分かってても泣くことしかできなかった。
私が近くに居るのさえも嫌になったのかも、って悲しかった。だって、しがみついて泣くことしかできないなんて鬱陶しいよね。
好きな人と会うのを私に邪魔されないように離れたとこに行くのかも、って苦しかった。確かに、邪魔までは出来なくても拗ねてみせるぐらいはしたかもしれないけど。
赴任後のヒューは、会うどころか手紙もくれなくて。私のことを忘れたのかと、居ないことにしたいのかと思った。
マリアへの手紙でヒューの文字は見て懐かしかったけど、私には書いてくれないことを思うと悲しくて。
会うことさえもできないまま、ヒューの結婚を聞くことになったらと苦しくて。
今までヒューの隣は私の場所だったのに、ずっと私の場所だと思ってたのに……。
そこに、お父様から結婚しろと言われて、頭が真っ白で何も考えられなくなった。
とにかくヒューに会いたくて、でも会うのがこわくて。結婚させられちゃう前にヒューお兄様に会わなくちゃ、と思ったの。結婚を祝福されちゃったらどうしよう、と考えた時はこわかった。
それでも、とにかく会わなくちゃ、会いたい、と思って……。
気が付いたら自分の部屋。
マリアが居たし、両親やレオンお兄様がいつも通りだと聞いて、夢だったのかと思ったのに。
それなのに、日付が変わってるのに気付いた瞬間、なぜか『時間が無い!』と感じたの。そして、お父様が動く前にヒューお兄様に会わなくちゃ、ってことしか考えられなくなってた。
だから、すぐに乗馬服を着て飛び出して……。
後は、ヒューのことしか考えてなくて、混乱したまま色々有って。
とにかく、少しずつ好きの意味が変わっていって、ヒューが子爵領に行っちゃった後で自覚して、さっきプロポーズされたら溢れたの!
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