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第二章
第29話 冒険者への誘い
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「怖かった……」
カミラさんの身体が小さく震えている。
「アルさん、ありがとうございます。助かりました」
「い、いえ、むしろ申し訳ありません。奴を怒らせてしまいました。もしかしたら報復があるかも……」
「そうですね。警備を厳重にします」
カミラさんは震えながらも、従業員に指示を出す。
「それでも本当に助かりました。アルさんがいなければ、金貨五十枚の詐欺に合うところでしたから」
詐欺というか、もはやハリーの脅しで押し売りをしようという感じだった。
「それにしても、アルさん。よく偽物って分かりましたね?」
「実は以前もラバウトで偽鉱石を見たことがあったんです。ただ、今回はかなり完成度が高い物でした。鉱石を扱う商人でも騙されるレベルです」
「そうだったんですね。アルさんは鉱夫とのことでしたが、どちらでやられてたんですか?」
「実はフラル山で鉱石を採ってました」
俺のこれまでの経歴を話した。
「フラル山で採掘を……。では、うちで扱ってるフラル山の鉱石は、全部アルさんが採ったものなんですね」
「アハハ、そういうことになりますね」
「フラル山の鉱石は、商人のトニーさんから仕入れてます」
「トニーは大丈夫ですよ! 直接俺から買い付けてますから!」
「まあ! そうだったんですね。ウフフフフ」
カミラさんに笑顔が戻ったが、さすがにもう食欲がないようだ。
正直、俺はまだ食べられるが仕方がない。
先程の処理が終わり、二人でバーへ移動した。
「馬車の恩を返すつもりが、さらに恩を受けてしまいましたね」
「気になさらないでください。俺もカミラさんに会えなければ、これほどの高級宿に泊まることは一生なかったですから」
「まあ、ありがとうございます。いつでも来てくださいね。アルさんは私の命の恩人ですから。ウフフフフ」
カミラさんは冷静で落ち着いた雰囲気の女性だが、笑うと可愛らしい。
「それにしても、カミラさんはまだお若いのに、これほどの高級宿を経営してるなんて凄いですね」
「元々父親がやっていた宿でしたが、父が亡くなり私が相続したんです。そこから父の名を汚さぬように必死でやりました」
カミラさんが高級な葡萄酒を用意してくれた。
しばらく、お互いのことを話し合い盛り上がる。
「アルさんは、イエソンで何をされるんですか?」
「人に会う約束があるんです。それと騎士団を受験します」
「まあ、騎士団! それは凄いです! 団長になったばかりのレイ・ステラー様は、すでに歴代最高と言われてますからね」
「そうなんですね! さすがレイ様!」
「ウフフフフ、まるで知り合いのようですね」
「え? い、いや、ファンなんです。アハハ」
「ウフフフフ、レイ様は本当にお綺麗ですからね。この宿にもいらっしゃったことがあるんですよ」
「え! そうなんですね!」
レイさんはすでに騎士団団長として活躍しているようだ。
レイさんの活躍を聞くと俺も嬉しくなる。
「ところで、アルさんは冒険者に興味はないんですか?」
「冒険者ですか?」
「ええ、そうです。大岩を持つ力。鉱石鑑定ができる知識。そして、そこの狼牙さんもいるので、冒険者の方が向いているのではないかと思います。高ランクになると収入も桁違いだそうですよ」
「冒険者か……」
「アルさんが冒険者になったら、私のボディガードとして絶対に依頼します。ウフフフフ」
「え? 俺なんかより、もっと良い冒険者はいますよ」
「そんなことないですよ。もし良かったら本当に私のボディガードを……」
「え? い、いや、その……」
カミラさんに見つめられてしまった。
大人の女性の魅力と、美女の魔力に強く惹き込まれそうだ。
俺は焦り、グラスの葡萄酒を一気に飲み干す。
「ウフフフフ。アルさん、アセンに来た時は必ずこの宿に寄ってください。いつでも歓迎します」
「は、はい」
「私はまだ少し仕事があるので失礼します。あとのことは使用人が案内しますので、ゆっくりしてください。そして騎士団の試験、応援してます」
「はい、ありがとうございます!」
カミラさんは仕事に戻った。
使用人が新しい葡萄酒と軽食を持ってきてくれた。
エルウッドは高級そうな、いや明らかに高級な生肉を食べている。
その後、部屋へ案内されると、そこはもう別世界だった。
部屋が輝いている。
間違いなく王族や貴族が泊まるような最高級の部屋だ。
つい先日まで田舎の山で鉱夫をやっていた俺が、まさかこんな超高級宿に泊まることになるとは。
緊張して眠れない。
眠れな……。
◇◇◇
店の外へ出たハリー・ゴードンとビリー・ネイサ。
「クソッ! 恥をかかされた! ハリー、貴様のせいだぞ! 本物だと言うから貴様を使ってやったのに! これでカミラとの関係は終わりだっ! くそっ!」
「うるせー! うるせー! うるせー! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!」
「な、何をする!」
「絶対許さねー! 殺してやる! 殺してやる!」
「ごふっ! や、やめ、ごふう」
「殺す! 殺す! 殺す!」
「ごぼっ……ごぶうぅ……ぐぼ……」
「あの小僧! 絶対殺してやる! 殺してやる!」
ハリーはビリーを何度も殴りつける。
ビリーの歯が全て折れ、顔面の形が変わり血だらけとなった。
身体が細かく痙攣している。
それでも殴る。
「あの小僧! 殺す! 殺す! 殺す!」
ビリー・ネイサは撲殺された。
目撃したネイサの使用人は恐怖のあまり失禁。
そして、冒険者ギルドへ駆け込んだ。
◇◇◇
カミラさんの身体が小さく震えている。
「アルさん、ありがとうございます。助かりました」
「い、いえ、むしろ申し訳ありません。奴を怒らせてしまいました。もしかしたら報復があるかも……」
「そうですね。警備を厳重にします」
カミラさんは震えながらも、従業員に指示を出す。
「それでも本当に助かりました。アルさんがいなければ、金貨五十枚の詐欺に合うところでしたから」
詐欺というか、もはやハリーの脅しで押し売りをしようという感じだった。
「それにしても、アルさん。よく偽物って分かりましたね?」
「実は以前もラバウトで偽鉱石を見たことがあったんです。ただ、今回はかなり完成度が高い物でした。鉱石を扱う商人でも騙されるレベルです」
「そうだったんですね。アルさんは鉱夫とのことでしたが、どちらでやられてたんですか?」
「実はフラル山で鉱石を採ってました」
俺のこれまでの経歴を話した。
「フラル山で採掘を……。では、うちで扱ってるフラル山の鉱石は、全部アルさんが採ったものなんですね」
「アハハ、そういうことになりますね」
「フラル山の鉱石は、商人のトニーさんから仕入れてます」
「トニーは大丈夫ですよ! 直接俺から買い付けてますから!」
「まあ! そうだったんですね。ウフフフフ」
カミラさんに笑顔が戻ったが、さすがにもう食欲がないようだ。
正直、俺はまだ食べられるが仕方がない。
先程の処理が終わり、二人でバーへ移動した。
「馬車の恩を返すつもりが、さらに恩を受けてしまいましたね」
「気になさらないでください。俺もカミラさんに会えなければ、これほどの高級宿に泊まることは一生なかったですから」
「まあ、ありがとうございます。いつでも来てくださいね。アルさんは私の命の恩人ですから。ウフフフフ」
カミラさんは冷静で落ち着いた雰囲気の女性だが、笑うと可愛らしい。
「それにしても、カミラさんはまだお若いのに、これほどの高級宿を経営してるなんて凄いですね」
「元々父親がやっていた宿でしたが、父が亡くなり私が相続したんです。そこから父の名を汚さぬように必死でやりました」
カミラさんが高級な葡萄酒を用意してくれた。
しばらく、お互いのことを話し合い盛り上がる。
「アルさんは、イエソンで何をされるんですか?」
「人に会う約束があるんです。それと騎士団を受験します」
「まあ、騎士団! それは凄いです! 団長になったばかりのレイ・ステラー様は、すでに歴代最高と言われてますからね」
「そうなんですね! さすがレイ様!」
「ウフフフフ、まるで知り合いのようですね」
「え? い、いや、ファンなんです。アハハ」
「ウフフフフ、レイ様は本当にお綺麗ですからね。この宿にもいらっしゃったことがあるんですよ」
「え! そうなんですね!」
レイさんはすでに騎士団団長として活躍しているようだ。
レイさんの活躍を聞くと俺も嬉しくなる。
「ところで、アルさんは冒険者に興味はないんですか?」
「冒険者ですか?」
「ええ、そうです。大岩を持つ力。鉱石鑑定ができる知識。そして、そこの狼牙さんもいるので、冒険者の方が向いているのではないかと思います。高ランクになると収入も桁違いだそうですよ」
「冒険者か……」
「アルさんが冒険者になったら、私のボディガードとして絶対に依頼します。ウフフフフ」
「え? 俺なんかより、もっと良い冒険者はいますよ」
「そんなことないですよ。もし良かったら本当に私のボディガードを……」
「え? い、いや、その……」
カミラさんに見つめられてしまった。
大人の女性の魅力と、美女の魔力に強く惹き込まれそうだ。
俺は焦り、グラスの葡萄酒を一気に飲み干す。
「ウフフフフ。アルさん、アセンに来た時は必ずこの宿に寄ってください。いつでも歓迎します」
「は、はい」
「私はまだ少し仕事があるので失礼します。あとのことは使用人が案内しますので、ゆっくりしてください。そして騎士団の試験、応援してます」
「はい、ありがとうございます!」
カミラさんは仕事に戻った。
使用人が新しい葡萄酒と軽食を持ってきてくれた。
エルウッドは高級そうな、いや明らかに高級な生肉を食べている。
その後、部屋へ案内されると、そこはもう別世界だった。
部屋が輝いている。
間違いなく王族や貴族が泊まるような最高級の部屋だ。
つい先日まで田舎の山で鉱夫をやっていた俺が、まさかこんな超高級宿に泊まることになるとは。
緊張して眠れない。
眠れな……。
◇◇◇
店の外へ出たハリー・ゴードンとビリー・ネイサ。
「クソッ! 恥をかかされた! ハリー、貴様のせいだぞ! 本物だと言うから貴様を使ってやったのに! これでカミラとの関係は終わりだっ! くそっ!」
「うるせー! うるせー! うるせー! 殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!」
「な、何をする!」
「絶対許さねー! 殺してやる! 殺してやる!」
「ごふっ! や、やめ、ごふう」
「殺す! 殺す! 殺す!」
「ごぼっ……ごぶうぅ……ぐぼ……」
「あの小僧! 絶対殺してやる! 殺してやる!」
ハリーはビリーを何度も殴りつける。
ビリーの歯が全て折れ、顔面の形が変わり血だらけとなった。
身体が細かく痙攣している。
それでも殴る。
「あの小僧! 殺す! 殺す! 殺す!」
ビリー・ネイサは撲殺された。
目撃したネイサの使用人は恐怖のあまり失禁。
そして、冒険者ギルドへ駆け込んだ。
◇◇◇
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