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第7章
第93話 ナミとの会談
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神歴1012年、6月10日――ミレーニア大陸中部、ラドン村。
午前10時51分――ラドン村、宿屋1階。
「ナミっ!!」
「よせっ! 動くなっ、セーナ!!」
それは文字どおり、あっという間の出来事だった。
背後にいたセーナが、いかづちの如き勢いでナミに向かって一歩を踏み出す。
ブレナは慌てて静止の一声をかけたが、それが届いたころにはすでに雌雄は決していた。
「良いスピードだ。さすがはセブンズリード。若くても優秀だな。だが――」
「ぁぐっ!?」
拘束。
電光石火のセーナの一撃は、滑稽なほど鮮やかに空を切った。
完璧に不意をついて放たれたあの速度の飛び蹴りを、かすることさえ許さずいなす。あまつさえ、その一連の攻防で逆にセーナの身体を後ろ手に拘束するなど、神の御業以外の何物でもなかった。ブレナは目を見張らざるを得なかった。
「動きの軌道が丸分かりだよ。猪突猛進が通用するほど、わたしは未熟ではない」
「は、なせ……ッ! あん、た……は……つ、あぁぁぁぁぁッ!!」
「セーナ姉ッ!」
「セーナさんっ!」
「落ち着けッ! ナミにその気はない! その気があるなら、セーナの身体はとっくに上と下とに分かれて果ててる!」
リアとルナ、動きかけた二人の身体を今度こその一声で制すと、ブレナは鋭い視線をナミへと投げつけた。
察したナミが、驚くほどあっさりとセーナの身体を解放する。
そのまま、彼女は挑戦的な笑みを浮かべて、
「そう怖い顔で睨むな。今、ここでおまえたちと争うつもりはない。ミレーニアの主として、茶でも淹れてもてなしてやろうと思っていたところを、そこの狂犬が――」
「ざけんなっ! 誰が狂犬だ! 毒入りの茶なんていらないから、とっととジャックの馬鹿を返せっ!」
左肩を押さえながら、セーナがナミの言葉を遮るように叫ぶ。
受けたナミは、やれやれと軽く鼻息を落として、
「とんだじゃじゃ馬だな。周りを見ろ。聖堂騎士団の理念は、市井の民を守ることではないのか? それとも、他大陸の民など巻き込もうが何しようが知ったことではないと?」
「……えっ」
セーナの勢いが、そこでパタリと止まる。
ブレナも、おそらくはリアもルナもアリスも、セーナ以外の大半の人間が気づいていただろう状況に、そうしてようやくとセーナも気づく。
食堂も兼ねた、宿屋の一階。
その場所に、自分たちやナミ一派以外の人間が『ほかに三人も』存在しているという事実に。
「な、なんなんじゃ、おまえさんたちは? いきなり入ってきて……」
「ナミ様、大丈夫ですか? 怪我など、しちょらんですか?」
「にしても、とんでもねえ跳ねっ返りだな、この娘っコは」
老爺が二人と、老婆が一人。
その三人が一斉にテーブルを立ち、こちら側へとのそりと近づく。
その光景に完全に勢いをそがれたセーナは、
「……ごめん、なさい」
蚊の鳴くような声で一言、三人に向かってそうつぶやき、そのまま貝になって後方へと下がった。
下がった先で、でもリアに無言のまま、利き手をギュッと握られる。
言葉はなかったが、自分の代わりに怒ってくれてありがとう、とリアがそう言っているようにブレナには感じられた。
とまれ。
「どうやら頭が冷えて、元の可愛い仔犬に戻ったようだな。水魔法を使う手間が省けて良かったよ」
「俺の頭はまだ冷えてないがな。水魔法の代わりに、頭を冷やす薬を処方してもらおうか」
「元よりそのつもりだよ。もっとも、おまえたちが期待しているような答えを返せるとは限らんがな」
「返せなかった場合のリスクはでかいぜ。質のいい天秤を用意してから、質問に答えることをおすすめするよ」
煽り合いをしているつもりなどなかったが。
結果、険悪な雰囲気のまま、それは始まる。
思いがけないタイミングで訪れた、ナミとの会談。
終わりに向けた、始まりの一歩が、強い力で大地を刻む。
◇ ◆ ◇
同日、午前11時12分――ラドン村、宿屋1階。
「…………」
それを前に、ブレナはしばし固まった。
八人掛けの丸テーブルの上には、香りの良いハーブティーと色とりどりのスイーツが並んでいる。
スイーツは、どれも手が込んだものだ。買ってきたものではなく、ここで作られたものだと一見で分かる。
前に訪れたときは、こんなこじゃれたスイーツなど出てこなかった――店主(さきほどいた老爺のうちの一人である)が提供してくれた料理の数々は、どれも美味ではあったが。
つまりは、このスイーツを作ったのはあの老爺ではないと推測できる。
だったら――。
と、そこまで考えたところで、場にそぐわない無邪気な声が室内に響き渡る。
「わぁーっ、このアップルパイ美味しいーっ! このチーズケーキもー! ほっぺた落ちちゃうレベルで美味しいよーっ!」
アリスである。
緊張感のかけらもない表情で、彼女は並べられたスイーツの数々に次から次へと手を伸ばしていた。
スイーツに目がないとはいえ、いくらなんでも気を抜きすぎだ。
ブレナはたしなめようと、アリスに向けて注意の口をひらいたが、彼の口からその文言が漏れることはなかった。
その前に、別の口に先を取られたのである。
「そうか。おまえはなかなか味が分かる子供のようだな。好きなだけ食べろ」
ナミ。
ブレナは眉根を寄せた。
「ちょっと、アリスさん。いくらなんでも食べ過ぎですよ? 毒とか入ってたらどうするんですか?」
「ルナ、大丈夫! 毒なんて入ってない! レプには分かる! レプの鼻は毒をも見分ける! 毒見入らずと巷では有名……」
「……そう、なんですか? だったら、まあ……」
レプに言われ、ルナも恐る恐る目の前のアップルパイへと手を伸ばす。
それをひとかじりした瞬間、ルナの両目にも星が宿った。
「ホントだ、美味しい。このアップルパイ、めちゃ美味です。アスカラームで食べたイカの塩辛にも負けてないです」
「…………」
辛党の彼女を満足させるのだから、そうとう美味いのだろう。
だが、無論のこと、ブレナはそれらには手をつけない。
リアも、セーナも同様だった。
バクバク食べるアリスとレプを横目に、ブレナはナミに言った。
「まさかこのスイーツ、おまえが作ったのか? それとも、そっちの……」
「ううん、違うよ。ナミ様だよー。ボクッちは食べる専門」
ナミの隣に座っているオッドアイの少女が、そう言って首を大きく左右に振る。
受けたナミは、ほんの少しだけ誇らしげに胸を反らして、
「ああ、わたしが作った。遠慮せずにおまえも食べろ。心配せずとも毒など入ってはおらん」
「……そう言われて、素直に食うと思うか?」
毒が入っていない、というのはなんとなく理解できたが(レプの鼻はマジで毒をも見分ける)、とても食べる気にはなれない。
ブレナはリアやセーナと同じく、ハーブティーにさえ口をつけることはなかった。
代わりに、
「へー、これ全部ナミ様が作ったんだー。なんかちょっと意外ー。ナギ様も料理とか作れるのかな……?」
「おおー、ナミはお菓子作りの名人。見た目に寄らず、家庭的だと巷では有名……」
「ナミ様だ! 呼びつけするなーっ! ボクッちより年下のくせに、生意気だー!」
アリスとレプ、それにオッドアイの少女が、自分たちの分まで平らげながら、どうでもいい会話を繰り広げる。途中、ルナもそれに加わり――気づけばあれだけあったスイーツは、あっという間に半分以下にまで減っていた。
ブレナは、視線を鋭く変えた。
そうしてその眼差しのまま、それをナミただ一人に留める。
ブレナは、言った。
「本題に入ってもいいか?」
「一口も食べずに本題か。あの男と同じで、もてなし甲斐のない奴だな。まあ、別にかまわんが」
「あの男ってのは、ジャックのことか?」
間を置かず、畳みかけるように訊く。
ナミは思った以上にあっさりと、そうしてたんたんと答えてみせた。
「ああ、そうだよ。ジャック・ヴェノンのことだ。あの男は今、わたしの城――ガルメシアで預かっている」
「…………っ!?」
瞬間、リアの両目がギロリと見開かれる。
否、リアだけではない。
セーナも、ルナも、アリスも、表情がそれと分かるほど明確に切り替わる。
いまだスイーツに夢中のレプと、リアの膝の上でスヤスヤと眠っているトッド以外の全員の意識が、すべからくシャープに変じた。
ブレナは、声を抑えて言った。
「ということは、あのフード付き黒マントを頭からかぶった男は、おまえの部下だということか?」
「一応、そういうことになるな。奴が何者なのか、知りたいか?」
「知りたいね。が、その前にまずはジャックだ。あいつを解放する気があるのかどうかを聞かせろ。即答しなくてもいい。ゆっくりじっくり考えてから結論を示せ。その答えによって、己の命運が決まると理解してな」
若干と語尾を強めて、そう釘を刺す。
これでボールはもう、完全に自分の手から離れた。
あとはナミしだいだ。
彼女がどうボールを返してくるか、それによってこちらの行動が決まる。
ブレナはテーブルの下で、ギュッと拳を握った。
アリスの、唾を飲み込む音が聞こえる。
リアの息がわずかに乱れているのも伝わってくる。
一瞬の静寂が辺りを支配し――やがて。
ナミは、正確無比にボールを蹴り返した。
ラドン村での長い一日が、そうして始まる……。
午前10時51分――ラドン村、宿屋1階。
「ナミっ!!」
「よせっ! 動くなっ、セーナ!!」
それは文字どおり、あっという間の出来事だった。
背後にいたセーナが、いかづちの如き勢いでナミに向かって一歩を踏み出す。
ブレナは慌てて静止の一声をかけたが、それが届いたころにはすでに雌雄は決していた。
「良いスピードだ。さすがはセブンズリード。若くても優秀だな。だが――」
「ぁぐっ!?」
拘束。
電光石火のセーナの一撃は、滑稽なほど鮮やかに空を切った。
完璧に不意をついて放たれたあの速度の飛び蹴りを、かすることさえ許さずいなす。あまつさえ、その一連の攻防で逆にセーナの身体を後ろ手に拘束するなど、神の御業以外の何物でもなかった。ブレナは目を見張らざるを得なかった。
「動きの軌道が丸分かりだよ。猪突猛進が通用するほど、わたしは未熟ではない」
「は、なせ……ッ! あん、た……は……つ、あぁぁぁぁぁッ!!」
「セーナ姉ッ!」
「セーナさんっ!」
「落ち着けッ! ナミにその気はない! その気があるなら、セーナの身体はとっくに上と下とに分かれて果ててる!」
リアとルナ、動きかけた二人の身体を今度こその一声で制すと、ブレナは鋭い視線をナミへと投げつけた。
察したナミが、驚くほどあっさりとセーナの身体を解放する。
そのまま、彼女は挑戦的な笑みを浮かべて、
「そう怖い顔で睨むな。今、ここでおまえたちと争うつもりはない。ミレーニアの主として、茶でも淹れてもてなしてやろうと思っていたところを、そこの狂犬が――」
「ざけんなっ! 誰が狂犬だ! 毒入りの茶なんていらないから、とっととジャックの馬鹿を返せっ!」
左肩を押さえながら、セーナがナミの言葉を遮るように叫ぶ。
受けたナミは、やれやれと軽く鼻息を落として、
「とんだじゃじゃ馬だな。周りを見ろ。聖堂騎士団の理念は、市井の民を守ることではないのか? それとも、他大陸の民など巻き込もうが何しようが知ったことではないと?」
「……えっ」
セーナの勢いが、そこでパタリと止まる。
ブレナも、おそらくはリアもルナもアリスも、セーナ以外の大半の人間が気づいていただろう状況に、そうしてようやくとセーナも気づく。
食堂も兼ねた、宿屋の一階。
その場所に、自分たちやナミ一派以外の人間が『ほかに三人も』存在しているという事実に。
「な、なんなんじゃ、おまえさんたちは? いきなり入ってきて……」
「ナミ様、大丈夫ですか? 怪我など、しちょらんですか?」
「にしても、とんでもねえ跳ねっ返りだな、この娘っコは」
老爺が二人と、老婆が一人。
その三人が一斉にテーブルを立ち、こちら側へとのそりと近づく。
その光景に完全に勢いをそがれたセーナは、
「……ごめん、なさい」
蚊の鳴くような声で一言、三人に向かってそうつぶやき、そのまま貝になって後方へと下がった。
下がった先で、でもリアに無言のまま、利き手をギュッと握られる。
言葉はなかったが、自分の代わりに怒ってくれてありがとう、とリアがそう言っているようにブレナには感じられた。
とまれ。
「どうやら頭が冷えて、元の可愛い仔犬に戻ったようだな。水魔法を使う手間が省けて良かったよ」
「俺の頭はまだ冷えてないがな。水魔法の代わりに、頭を冷やす薬を処方してもらおうか」
「元よりそのつもりだよ。もっとも、おまえたちが期待しているような答えを返せるとは限らんがな」
「返せなかった場合のリスクはでかいぜ。質のいい天秤を用意してから、質問に答えることをおすすめするよ」
煽り合いをしているつもりなどなかったが。
結果、険悪な雰囲気のまま、それは始まる。
思いがけないタイミングで訪れた、ナミとの会談。
終わりに向けた、始まりの一歩が、強い力で大地を刻む。
◇ ◆ ◇
同日、午前11時12分――ラドン村、宿屋1階。
「…………」
それを前に、ブレナはしばし固まった。
八人掛けの丸テーブルの上には、香りの良いハーブティーと色とりどりのスイーツが並んでいる。
スイーツは、どれも手が込んだものだ。買ってきたものではなく、ここで作られたものだと一見で分かる。
前に訪れたときは、こんなこじゃれたスイーツなど出てこなかった――店主(さきほどいた老爺のうちの一人である)が提供してくれた料理の数々は、どれも美味ではあったが。
つまりは、このスイーツを作ったのはあの老爺ではないと推測できる。
だったら――。
と、そこまで考えたところで、場にそぐわない無邪気な声が室内に響き渡る。
「わぁーっ、このアップルパイ美味しいーっ! このチーズケーキもー! ほっぺた落ちちゃうレベルで美味しいよーっ!」
アリスである。
緊張感のかけらもない表情で、彼女は並べられたスイーツの数々に次から次へと手を伸ばしていた。
スイーツに目がないとはいえ、いくらなんでも気を抜きすぎだ。
ブレナはたしなめようと、アリスに向けて注意の口をひらいたが、彼の口からその文言が漏れることはなかった。
その前に、別の口に先を取られたのである。
「そうか。おまえはなかなか味が分かる子供のようだな。好きなだけ食べろ」
ナミ。
ブレナは眉根を寄せた。
「ちょっと、アリスさん。いくらなんでも食べ過ぎですよ? 毒とか入ってたらどうするんですか?」
「ルナ、大丈夫! 毒なんて入ってない! レプには分かる! レプの鼻は毒をも見分ける! 毒見入らずと巷では有名……」
「……そう、なんですか? だったら、まあ……」
レプに言われ、ルナも恐る恐る目の前のアップルパイへと手を伸ばす。
それをひとかじりした瞬間、ルナの両目にも星が宿った。
「ホントだ、美味しい。このアップルパイ、めちゃ美味です。アスカラームで食べたイカの塩辛にも負けてないです」
「…………」
辛党の彼女を満足させるのだから、そうとう美味いのだろう。
だが、無論のこと、ブレナはそれらには手をつけない。
リアも、セーナも同様だった。
バクバク食べるアリスとレプを横目に、ブレナはナミに言った。
「まさかこのスイーツ、おまえが作ったのか? それとも、そっちの……」
「ううん、違うよ。ナミ様だよー。ボクッちは食べる専門」
ナミの隣に座っているオッドアイの少女が、そう言って首を大きく左右に振る。
受けたナミは、ほんの少しだけ誇らしげに胸を反らして、
「ああ、わたしが作った。遠慮せずにおまえも食べろ。心配せずとも毒など入ってはおらん」
「……そう言われて、素直に食うと思うか?」
毒が入っていない、というのはなんとなく理解できたが(レプの鼻はマジで毒をも見分ける)、とても食べる気にはなれない。
ブレナはリアやセーナと同じく、ハーブティーにさえ口をつけることはなかった。
代わりに、
「へー、これ全部ナミ様が作ったんだー。なんかちょっと意外ー。ナギ様も料理とか作れるのかな……?」
「おおー、ナミはお菓子作りの名人。見た目に寄らず、家庭的だと巷では有名……」
「ナミ様だ! 呼びつけするなーっ! ボクッちより年下のくせに、生意気だー!」
アリスとレプ、それにオッドアイの少女が、自分たちの分まで平らげながら、どうでもいい会話を繰り広げる。途中、ルナもそれに加わり――気づけばあれだけあったスイーツは、あっという間に半分以下にまで減っていた。
ブレナは、視線を鋭く変えた。
そうしてその眼差しのまま、それをナミただ一人に留める。
ブレナは、言った。
「本題に入ってもいいか?」
「一口も食べずに本題か。あの男と同じで、もてなし甲斐のない奴だな。まあ、別にかまわんが」
「あの男ってのは、ジャックのことか?」
間を置かず、畳みかけるように訊く。
ナミは思った以上にあっさりと、そうしてたんたんと答えてみせた。
「ああ、そうだよ。ジャック・ヴェノンのことだ。あの男は今、わたしの城――ガルメシアで預かっている」
「…………っ!?」
瞬間、リアの両目がギロリと見開かれる。
否、リアだけではない。
セーナも、ルナも、アリスも、表情がそれと分かるほど明確に切り替わる。
いまだスイーツに夢中のレプと、リアの膝の上でスヤスヤと眠っているトッド以外の全員の意識が、すべからくシャープに変じた。
ブレナは、声を抑えて言った。
「ということは、あのフード付き黒マントを頭からかぶった男は、おまえの部下だということか?」
「一応、そういうことになるな。奴が何者なのか、知りたいか?」
「知りたいね。が、その前にまずはジャックだ。あいつを解放する気があるのかどうかを聞かせろ。即答しなくてもいい。ゆっくりじっくり考えてから結論を示せ。その答えによって、己の命運が決まると理解してな」
若干と語尾を強めて、そう釘を刺す。
これでボールはもう、完全に自分の手から離れた。
あとはナミしだいだ。
彼女がどうボールを返してくるか、それによってこちらの行動が決まる。
ブレナはテーブルの下で、ギュッと拳を握った。
アリスの、唾を飲み込む音が聞こえる。
リアの息がわずかに乱れているのも伝わってくる。
一瞬の静寂が辺りを支配し――やがて。
ナミは、正確無比にボールを蹴り返した。
ラドン村での長い一日が、そうして始まる……。
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