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02:『番の婚約』
しおりを挟む私とこの豹の獣人が交わした『番の婚約』とは、少し特殊な婚約になります。
本能が惹かれ合う番という関係は、本来ならば出会ったその場で結婚しても良いはずなのだとか。
しかし、今の血が薄れた獣人と、元々番の本能の薄い人間では、単なる一目惚れと番を勘違いする者が居るそうです。
今回は豹の獣人が先祖返りだったせいか、私にも相手が番だと認識出来たけど、最近では稀な事らしいです。
そう。残念ながら、本当に番なのだ!
それは置いておいて、とりあえず「番かもしれない」程度しか判らなくなってしまっても、獣人は番との間に子供を作ると、優秀な子孫が生まれるのだそう。
その為に『番の婚約』は、最低でも2年は解約出来ない。
しっかりと見極めて、決めなさい……という事のようです。
これはちょっと獣人の為の規則です。
例外は、どちらかが成人したら即破棄出来るとか。
成人すると、番が判り易くなるらしい。
今回は学生だったので、期限は卒業式までとなりました。
最近では珍しい『番の婚約』まで交わしたのです。
私も番だと認識していたので、どちらの両親も破棄になるとは考えていないでしょう。
特に豹の獣人の両親は。
豹の獣人の母親に、白鷺の獣人の父親。
この二人は獣人同士の番だそうで、白鷺の獣人の弟と豹の獣人の妹もいます。
先祖返りは私の婚約者だけで、とても仲の良い家族でした。
婚約の挨拶で一度会っただけだけどね!
「本当に破棄で良いのですか?」
婚約を破棄する手続きに来た教会で、司教様が最後の確認します。
『番の婚約』は、解約するとその相手とは結婚出来なくなるのです。
たとえ後から本当に番だったと判明しても……です。
これは、人間の為の制度です。
私としては万々歳です!
「こんな女が俺の番のはずが無かったんだ!俺の番は、こちらのルーフリアだ!」
へぇ。阿婆擦れさん、ルーフリアって名前だったんですね。
しかし、婚約破棄の手続きに他の女を連れて来る非常識さよ。
本当に婚約破棄出来て良かったわ。
司教様も同じ事を思ったのか、それ以上は確認せずに、婚約の契約を破棄しました。
契約書が白い炎に包まれ、灰も残さずに消えました。
そして炎と同じ色の光が、私と豹の獣人を包みます。
凄い!魔法だわ!
「これで『番の婚約』が解約となりました」
司教様が私に笑顔を向けました。
「ありがとうございます」
私も笑顔を返してから、後ろで見守ってくれている両親の元へと向かいました、
豹の獣人の元婚約者は、茫然と立ちすくんで居ましたが、しったこっちゃありません。
もう赤の他人ですからね!
婚約は解消ではなく、豹の獣人側の有責による破棄となりました。
学園内での様子を知らなかった両親は驚いてましたが、その最たる証拠である阿婆擦れさんが居ますからね。
通常は『番の婚約』は解消なので、慰謝料は発生しません。
しかし今回は、ガッツリ請求させてもらいました。
将来、あの豹の獣人が稼ぐであろうお金から、自動的に私の口座へ振り込まれる魔法契約を結びました。
あちらの家族には、影響が出ないはずです。
番だと言い出したのも、婚約破棄を公の場で宣言したのも、全部あの豹の獣人です。
両親は「親子2代で番がみつかるなんて、奇跡に近い」と、とても喜んでいたのです。
応援ありがとうございます!
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