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18:色気も何も無い

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「考えてもしょうがないか!」
 は?え?
 俯いて凄く深刻な顔で悩んでいたカリナン様が、急にガバリと上半身を起こしました。
 そして、私に抱きついてきます。
「もしペレーザを残して逝かなきゃいけなかったら悩むところだけど、間違い無く俺の方が長生きだからな」
 カリナン様の謎理論が炸裂しました。
 でも、その言葉に含まれている優しさは、私にも理解出来ました。

 カリナン様の寿命がどれ程残っているのかは判りませんが、確かに間違い無く私の寿命より長いでしょう。
 番の本能が無い同士の天人と人間が結婚するのだから、神様もお祝いとして『魂の番』と同じように寿命を延ばしてくれれば良いのに……そんな事を考えながら、私はカリナン様へと身を委ねました。



 体が熱くて目が覚めました。
 誰かと一緒に寝るのが初めてだからか、と最初は呑気に考えていたのですが、段々と笑えない状況になってきました。
 体が熱いだけでなく、頭がぼうっとしてきました。
 ここ何年も感じた事の無い、命に係わりそうな高熱です。

「ペレーザ!?」
 横に寝ていたカリナン様も私の異変に気付き、慌てて侍女を呼びに行きました。
 ……カリナン様、せめてローブくらいは羽織ってあげて


 年頃のメイドや侍女達に同情しながら、部屋を飛び出したカリナン様の後ろ姿を見送ります。
 そして水が飲みたいと思い、サイドテーブルへと視線を移し、小さな二つの袋が目に入りました。

「明日の朝に開けてくださいね」
「私も少し人間の血が入ってますので」

 サファイア様とディープローズ様の言葉が朦朧とした頭の中に響きます。
 思い通りに動かない手を必死に伸ばし、小袋を手元に持って来て、封を開けました。


『人間の体が長命に変化する時は、他の種族よりも大変のようです。人間と同じ位の寿命の獣人はそれほど大変じゃないのに、不公平ですよね!』

 そこには綺麗な文字で、同じように苦しんだのを感じさせる文章が書いてありました。
「……サファイア様」
 入っていたのは、赤い丸薬でした。
 飲み込むには大きなサイズで、飴のように口の中で溶かすのだと予想して、口に入れました。
「!!!!!酸っぱ!!」
 飴のようだと思いながら口に含んだ為に、そのあまりの酸っぱさに驚いて一気に意識が覚醒しました。



「ペレーザ!大丈夫?!」
 予想外の味に驚き瞬きを繰り返していたら、カリナン様が戻って来ました。
 あ、バスローブを羽織ってますね。
 その後ろには、複数人の女性。
 白衣を着ている三人の方は、お医者さん?
 天人と人間と、おそらくもう一人は魔人……よね。とてもとても美人だけど、どこか怖い雰囲気。

 天人のお医者さんが私へと頭を下げた。
「情けない話ですが、天人は人間と番になる事は無いので、人間の延命の事を私は何も知らず……」
 そして顔を上げた彼女は、横に居る二人の事を紹介してくれた。
「人間族の番延命専門医と、魔人の魔法医です」
 番延命専門医?!なんですか、それ。

 いや、わかるけど。なんとなくはわかるけど。
 そのままの意味だろうけど、専門医がいるほど人間の番による延命って多いのですね。
 それにしても、私とカリナン様は番じゃないはずなのに、なぜ延命されたのでしょうね。
 その前に、これは本当に延命の症状なのかしら?


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