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12:独り合点
しおりを挟むイレーニアの護衛が食堂へ人数分の食事を頼んで持ってきた為、空腹で苦しむ事態は避けられた。
「さすが公爵令嬢、護衛の方が付いてるんですね」
フェデリーカが感心すると、ジェネジオがいやいや、と首を振る。
「レーニの護衛は、公爵令嬢だからでは無く、王族の婚約者だからだよ」
「そうなの!?」
ロザリアが問うと、イレーニアはウフフと照れながら頷く。
ジェネジオ曰く、心配性の第三王子が付けた王家直属の護衛らしい。
無意識に行動で惚気ているイレーニアを、フェデリーカとロザリアは温かく見守る。
スティーグの愚行を見た後なので、尚更ホッコリと癒やされていた。
「失礼します!こちらに妹が運び込まれたと……!?」
皆で優雅にお茶を飲んでいたら、突然乱暴に扉が開かれた。
飛び込んで来たのは、フェデリーカの2番目の兄であるオズヴァルドである。
臨戦態勢になったイレーニアの護衛を見たフェデリーカは、急いで立ち上がる。
「すみません!私の兄です!」
飛び込んで来た兄の腕に自分の腕を絡め、仲良しだと示す。
「あれ?フェディ!?え?元気……だね?」
戸惑ったオズヴァルドは、とりあえず可愛い妹の頭を撫でた。
「父さんから話は聞いたけど、思ってた以上に酷い奴だな」
食堂での話を聞いたオズヴァルドは、眉間に深い皺を刻む。
「心配だからこれからは俺も一緒に……」
「駄目ですよ!オズ兄様が居たら、スティーグ様が行動を自重しちゃうかもしれませんし」
フェデリーカの言葉に、オズヴァルドは首を傾げる。
「アイツ、俺の顔を知らないと思う」
余りにも急に決まった婚約だった為、まだ家族全員での顔合わせもしていなかった。
フェデリーカが学校に慣れたら、侯爵家で食事会をする予定だったのだ。
「それならフェディとオズ兄様は、全然似てないから大丈夫かも」
ロザリアもオズヴァルドに味方する。
「私も男一人より、気が楽かな」
ジェネジオの一言で、オズヴァルドの参加が決まった。
余談だが、オズヴァルドの婚約者は隣国へ短期留学中である。
昼休みが終わり近くなり、三人は教室へ戻る。
勿論、ジェネジオとオズヴァルドも一緒である。
「大丈夫か?無理するなよ」
フェデリーカを席まで送ったオズヴァルドが、いつもの調子で頭をクシャリと撫でる。
「リア、フェディを頼むな」
「はい。オズ兄様、お任せください」
小さい頃から兄妹同然で育ってきたので、オズヴァルドはロザリアを愛称で呼び、ロザリアはオズヴァルドを兄と呼ぶ。
傍から見ると、この二人が本当の兄妹に見えた事だろう。
茶会などで面識のある者は知っていたので、特に何も思わなかった。
しかし、今まで関わった事の無いカーラは違った。
ロザリアの兄は、フェデリーカを愛称で呼び、頭を撫でる程に仲が良い。
そう理解したのだ。
「何よ。自分だって浮気してるんじゃない」
自分達だけが責められる謂れは無いと、カーラはほくそ笑んだ。
その報告を聞いたスティーグも、きちんと調べもせずにカーラの言葉を信じてしまった。
そのせいで、二人の行動は益々大胆になっていくのである。
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