υπέροχο κόσμο των κοσμημάτων

猫卜雪乃

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04:邪神というもの

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 もしもの場合、要は最悪の状況の相談をしてから、邪神ケツァルコアトルをぶ。
「…………」
 カルセドニーが何かを唱えるが、他の者には何を言っているのか解らない。
 理解出来ないのではなく、聞き取れないのだ。
 音が鳴っているのは判るのに、聞こえない気持ち悪さ。

「お前は理解出来てんの?」
 ヘリオドールが横に立つインペリアルトパーズへ小声で問い掛けた。
 属性は違うが同じ召喚師なので、聞き取れている前提で話す。
「善神と邪神を喚ぶ言語が同じはずないでしょう」
 同じように小声で返すインペリアルトパーズ。ヘリオドールの言葉を全否定だ。

 二人ともどこか喧嘩腰なのは、円卓での確執が解消されていないからだろう。
 二人の傍に居て会話が聞こえていたサファイアが注意しようと口を開いた瞬間に、それは起こった。


 カルセドニーの周りの空気が色を帯びる。
 まるで化学変化でも起こしたかのように、ドス紅い色が何処からともなく滲み出してくる。
 色が濃くなるほどに、空気に粘り気が増してきて肌に纏わりついてくる。
 一般人がここにいたら、発狂していたかもしれない。
 そんな空気だった。

『クェツァルコアトル。全ての物を破壊し神よ、我に力を貸したもう』

 全員がカルセドニーの言葉を聞いた。



 黒かと見紛う紅の中から、龍に似た姿が現れた。
 全身が硬い甲羅のような鱗に覆われていて、蝙蝠の羽のように薄く柔軟な羽を持っている。
 しかし、手足は無く、羽のついた蛇という感じだ。
 瞼が無く、空洞のように真っ黒な瞳が皆を見つめていた。
 空気は殺気を帯びて肌を刺し、巻き起こる風が皮膚を切る。
 開いた傷口からは、なぜか血が出なかった。

 瑠璃は初めて会う、邪神ケツァルコアトルだ。

『ふむ。が瑠璃か?』
 ケツァルコアトルの言葉が頭に響く。
 鼓膜を震わせて聞こえる通常の音とは違い、脳を直接刺激してくる。
 真っ黒なほらのような瞳なのに、瑠璃を見ているのが判る。
「はい」
 瑠璃が静かに返事をした。


「……気持ち悪い」
 ヘリオドールが口元を押さえた。
 ここにいる中では、一番クェツァルコアトルとは遠い位置にいる立場なので、身体が拒否反応を起こしているのだろう。
 邪気に満たされた言語が直接脳を震わせるのだ。
 いくら白魔道師の長とはいえ、かなり辛いものがある。
 対極という意味ではインペリアルトパーズもそうなのだが、元が召喚師なので脳を震わす言語には慣れていた。


 ヘリオドールの体が揺れ、傾く。
 予想していたのか、サファイアが抱きとめるようにその体を支えた。
「前回より辛いな」
 思わず口から出たのだろう。
 サファイアが慌てて自身の口元を手で覆う。
 冷静沈着の最たる存在であるサファイアにしては、珍しい行動である。



『我の知っている瑠璃よりも、は大分幼いの』
 ケツァルコアトルの言葉に、瑠璃だけでなく全員が目を見開く。
「先代瑠璃を知っているのか?!」
 敬語も忘れ、問い掛けたのはフローレスだった。
 予想外のフローレスの不躾な態度にカルセドニーは焦るが、ケツァルコアトルは気にした様子も無く頷く。

『瑠璃は、地を這う長い髪を持ち、全ての悲しみを凝縮したような瞳をした美しい女性だった。会ったのは、らの言う所の八百年ほど前だ』
 一瞬の沈黙の後、思い出したかのように言葉を続ける。
『禁忌の呪文を教えてくれと言っておった』

 不意にクェツァルコアトルの姿がゆらめいた。
 カルセドニーの身体が小刻みに震えだす。長時間、現世にクェツァルコアトルを留めておく事は、彼にかなりの負担を強いていた。
 小さな穴に水が流れ込むように色彩が歪む。

『時間切れのようだ』
 その一言だけを残して、クェツァルコアトルは姿を消した。
 その時にフローレスに目を留め、『今回の瑠璃は独りでは無いのか』と呟いたのは、誰の耳……いや、脳にも届かなかった。
 その為、その響きがどこか優しく、そして哀しい事にも、誰も気付かなかった。



 to be continued……
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