アップルパイ

プラノ

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アップルパイの子

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-なぜアップルパイの子は、
母にしか作れないアップルパイを作れるのだろうか。


AM7:00

ドアを開けるとアップルパイの子がいた。

「あ!櫻井さんおはようございます!
お仕事頑張ってください!!」

「ん?あぁ...おはよう。」


また、綺麗な目をしていると思った。
朝日に負けないくらい輝いていると思った。


(そういえばアップルパイの感想教えて欲しかったんだっけ)

「昨日貰ったアップルパイ、すごく美味しかったよ。」

少し驚いたように、アップルパイの子は

「ほ、ホントですか!? ありがとうございます!また持っていきますねっ」

そう言って、上機嫌そうにゴミ捨て場に走っていった。


いつもは憂鬱な火曜日でも、
今日は少しふわふわした気分になった。

こんな日もいいな、

そう思った。




AM10:06

「櫻井~助けて....俺、今スイーツがすっげえ食べてぇ、オススメないの?」

と同僚の鈴木が話しかけてきた。
鈴木はスイーツが大好物で、糖尿になるぞってくらい毎日のようにスイーツやらお菓子やらを食べている。

(オススメかぁ....)

俺はあんまり甘いものは好きじゃない。
最近食べたものだと....あぁ、アップルパイ。

「あ、あれ昨日食べたんだけどよ...
アップ....いや、なんだっけ」


.....教えたくないと思った。
母の味を、アップルパイの子の味を。

「オススメないわぁ、俺スイーツ食べないし。」

「まじかよ...櫻井使えねぇっ!!」

鈴木には使えねぇとか言われたけど、
アップルパイを教えなくてよかったと不思議と思った。



PM4:45

今日の仕事が片付いたから、今日は早めに上がれた。


PM6:38

アパートの階段を上がっていると、

「あ、櫻井さん!おかえりなさい!」

上からまたアップルパイの子が声をかけてくれた。

「....た、だいま」

少し照れてそう呟いた。
いまからバイトに行くそうだ。

「気をつけて、な。」

26歳が昨日引っ越してきた大学生に何言ってんだとは、思った。

でも、口からその言葉が出てしまった。


あの子はニコッと笑って
「はいっ!行ってきます!!」

と言った。

-笑顔も素敵だと思った。


(なんなんだ、この気持ち。)

出会って2日で恋愛感情なんて芽生えるもんなのか?いや、でも相手は男だ...ありえねぇ、ありえねぇ、


AM02:00

ずっと考えてたら、やっぱり眠れなかった。はぁ、とため息をついて風に当たるかと、外に出た。


「うわぁ、綺麗....」

ここは田舎だし近所に明かりなんてないから、星が綺麗に見える。


「なんだっけ、あの子の目に似てる...」

そんな風に思ったりもした。

(まだ、バイトなのかな、あの子。)
(バイトじゃなくて、彼女と会ってるとかかもしれねぇ。)


「なんか、嫌だな、」

もう、気づいてるでしょ。と思うかもしれないが俺は超鈍感。
ましてや、恋なんてほんとに生まれてから1度もしたことない。

だから、気づけなかった。


少し肌寒くなったから、家に入って寝た。





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