問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第三章  【王国史】

3-183 エルフの村の防衛4

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「エルフの怒り……思い知れ!!」





レッサーデーモンはこれから起こりえる魔法に怯え、再び黒い球体をブンデルに向けて放った。






「……”マジックアロー”!!!」





「あれは!?」




ブンデルから放たれた魔法を見て、思わずナンブルが声を上げる。


それは同じようなマジックアローでも、今までに見たことのない魔法だった。





放たれた魔法の矢には、白い電撃を帯びて飛び出していく。



少しずれた軌道も、自動的に修正し黒い球体に向かって進んでいく。





――パン!!!






レッサーデーモンの放った黒い球体は、魔法の矢によって砕け散り空気の中に魔素として還っていった。


それでも矢の勢いは止まらず、その奥にある本体目掛けて勢いは落ちることはない。


その矢に恐怖を覚えたレッサーデーモンは、この場から逃げ出そうとボロボロになった羽を広げる。


飛行はほぼ魔力で飛んでいるため、いかに羽が損傷をしていても問題はなかった。
ましてや緊急離脱するための浮上は、羽は何の影響ももたらさない。





「グギャッ!!」




その声と共に、身を低くかがめた状態から地面を蹴り上げ飛び上がる。
そのまま反転し、この場から逃げようとしたその時……






――ドン!!!







魔法の矢は上昇する方向に矢先を変え、飛び立つレッサーデーモンの背部を捉えた。

光の矢は背中を突き抜け、前方に突き抜けて海老反りの状態で空中で止まっている。
矢にはライトニングの効果も乗っていたため、被弾した身体には電撃が走っているのが見えた。








「グギャァアアアァアァアア!!!」





空にレッサーデーモンの最後の断末魔の叫びが響き渡った。





最後の一息が終わると、レッサーデーモンは頭から地面に向かって落下しその身体を叩きつけた。






レッサーデーモンの身体には、もはや力は入っていない。





「……やったか?」





ナンブルが、警戒しつつ近寄る。
死んだふりをしている可能性も考慮しつつ、他のエルフが使っていた剣を手に取り盾を構える。



剣の範囲まで来ると、ナンブルはその首を狙い剣を振り下ろす。





ザン……!




何の抵抗も見せずにレッサーデーモンの首は、体幹から切り離された。



「終わった……のか?」




ナンブルは辺りを見回す、その被害の大きさに言葉を失ってしまう。





ブンデルとサナは、離れたサイロンの身体を集め元の形に近付ける。

サナが、サイロンの横で手を組み祈りの言葉を捧げている。


ナンブルは静かに、二人の後ろに近付いて行く。
そして、ブンデルの肩に手を置いた。




必死に堪えていた感情があふれ出す。
ブンデルはナンブルの胸の中に引き寄せられ、大声を出して泣いた。


























「ん……ここは?」




空間の中を水の流れのようにたゆたっている感覚だった。








「わしは……あの子を庇って……」



サイロンは直前に起きた記憶をたどり、この現状を理解しようと努めた。

現世で受けたあの大きなダメージは、今は全く感じていない。




薄暗い闇の中で何も触れるものもなく、感じるのは水の中に浮かんだような感覚だけ。





「わしは……死んだんじゃな……ということは、ここは”あの世”か?」




語ってみても、誰からも返答はない。
生きている間……特に胸の病を患っていた時は、死と孤独を恐れていた。


いまここにいても、そんなに怖がっていたほどではなかった。



それは最後に真実を伝えることができた満足感……達成感。
ずっと喉の奥に引っ掛かっていた魚の骨のように、じわじわと不快な感覚が気持ちを荒れさせていった。



それがいま、すっきりとした気持ちで落ち着いていられる。
だが、それ以上にブンデルや村人に与えた不自由さは許されるものではない。

そのことに触れようとした時、突然声が鳴り響く。








「……ロン……サイロンよ、聞こえるか?」




「だ……誰だ?」




自分しかいないはずの空間に、自分以外の声が響き驚くサイロン。
孤独だと思っていた世界に、自分以外の声にホッとした気持ちも生まれていた。



「”誰だ”……か。まぁ、そういう反応も、間違いではないがの」



「……」





響く声に聞き覚えはなく、過去を振り返っても自分にそういう言葉遣いで話す者は親もしくはゾンデルくらいだった。
逸れであっても、その声は思い当たる者から異なる。








「まぁ、無理もないか……お前がワシに会いたがっていた気がしたんだがな?」




「……」




「お前たちは、ワシの名前を語っていろんなことをやってくれていたそうじゃないか……ん?」




「ま……まさか!?」






ここに来てようやく、サイロンはその存在に気が付くことができた。





「思い出してくれたかの……あるエルフをまとめた一族よ」








「……大竜神様!?」





「フン……やっと気づいてくれたか」





サイロンはその姿はみえないが、こんな場所で出会える能力。
大竜神ならではの力であると、その存在を疑うことはしなかった。


しかし、直前の言葉がサイロンに対し良いイメージを持たない言葉であることが気になっていた。




「あの、私は死んでしまいました。これからどうなるのでしょうか……」




「それは、ワシにもわからん。ただ言えるのは自然に還るだけ……そしてまた、どこかの世界の力の一つになるのだろうよ」






(自然……還る……?)
大竜神は、良く分からないことを言う。



続けてサイロンは、最も心配なことを聞いた。




「あの、何か罰を与えられるのでしょうか……?」





その言葉にモイスは、一つ鼻で笑う。




「そう思って居ったよ。最初はな……だが、お前は自分の身を挺して誰かを守った。それによって、未来は無事に続いて行けるのだ。だから、お前のその行為に免じて、私はお前を許そう」



「ありがと――」



「だが!」




お礼を言おうとするサイロンにモイスは言葉で遮る。




「……だが、お前の行動は自然の中で認められないようなこともしておる。その罪はどこかで償わなければならんだろうな……」







その言葉にサイロンは気落ちするが、それは自分でもわかっていたことだった。





「次に生まれてくることがあれば正しく生きよ。最後に見せたその勇気があれば、きっとお前はできるだろう……さて、もう時間だ。安心して眠るがいい。さらばだ、サイロン……」





その言葉に安心し、サイロンの意識は深く暗闇の中に沈んで行った。







心の中に、小さな明かりを抱きながら……






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