395 / 1,278
第三章 【王国史】
3-227 東の王国31
しおりを挟む二人は腕をつかみ合い、ヒートアップする気持ちが行動に現れていた。
エンテリアとブランビートは、慌てて喧嘩になりそうな雰囲気の二人を止めに入った。
ボロ……ボロ……ズサァ……
四人の動きが止まり、音のする方へ視線を移動させる。
そこにはトライアだった炭の塊が、剥がれ落ちていく様子が見えた。
その炭はそのまま形を保つことが出来ず崩れ落ち、粉が舞い上がったあと灰の山が出来ていた。
「終わった……のかな?」
「あそこから復活するなんて見たことがないんだが」
「今回の相手は、”人”ではないんだ。油断はできないぞ」
「ちょっと……エンテリアさん、怖いこと言わないでください!」
四人は、その姿を見てそれぞれの思いを口にした。
「とにかく、アレを土の中に埋めてしまおう」
エンテリアの村では、稀にアンデットの魔物……人の形をしたものではなく動物がアンデットとなり、数匹で村を襲うことが十数年に一度の頻度で起きていた。
うまく撃退した際に、その死骸を燃やし灰を土の中に埋めていた。
そのあと、それぞれが復活をしない様に数個の穴を用意し、バラバラにして埋めていくことが俗習となっていた。
そこには、村ができ始めた頃にいた占い師と呼ばれる自然の法則をもとに村の行動や催事に関してその日取りや内容を助言する役割の者がいた。
その者が初めてアンデットを見た際に、自然の理を乱す者としてその者たちを火によって死者の世界へ誘い、自然の中に還すために土の中に埋めることを提案した。
その際には、燃した灰をバラバラにして復活を遂げない様にしたことから、現在もその慣習が受け継がれていた。
エイミとセイラは、初めてその話を聞いた。
自分の住む村では、オオカミなどの野獣に襲われることはあってもアンデットという存在に遭遇したことはなかった。
「それじゃあ、私が穴を”作る”わ!」
(――作る?……こちらの村では掘ることを作るというんだな)
エイミの発言に違和感を感じたがそれは頭の中で都合よく処理され、ブランビートは穴掘りを手伝うことを申し出る。
「我々も手伝います。それに死者たちが再び上がってこれない様に結構深く掘るのが、私たちの村のやり方ですから。道具をお借りしても?」
装備を外し袖と裾をまくりながら、エンテリアとブランビートは掘り起こす場所の指示を待つ。
「え?……いえ、私だけで大丈夫ですので。どのくらいの深さが必要ですか?」
「深さは……そうですね。私の腰のあたりの深さで。場所は村の端の方がいいかと」
ブランビートは、村の端の山側を指す。
村の中心部に掘れば、復活した際(過去一度もないが)に大きな被害となりえるため、村の生活圏からは遠ざけた方がいいとアドバイスをする。
その助言に納得したエイミは”それもそうね”といい、セイラと共に村の端に向かって歩き始めた。
「お、おい!道具は……」
ブランビートは声を掛けるも、二人は先ほどとは違いすっかり仲が良くなりいつもの二人に戻っていた。
そのため、声を掛けることができず二人の後姿に見とれてしまっていた。
そんなブランビートの背中をやや強く叩いたエンテリアは、にっこりと笑い一緒に後を追うことを促した。
「……この辺りでいいかな?灰を入れるだけだしそんなに大きくなくてもいいよね?」
エイミは家が並んでいる場所から離れ、山のふもとの森の入り口の場所まで移動した。
その場所を足の裏でバンバンと踏み鳴らし、その辺りの地面が硬い地面であることを確認する。
同じ場所をエンテリアも確認し、位置的には問題がないことを告げる。
「ここでいいでしょう。ただ、少し地面が硬いので作業が手間取るかもしれませんから、早速取り掛かりましょうか……道具はどちらに?」
「道具はいりませんよ、私に任せてください!」
「「――え?」」
エンテリアとブランビートは、エイミの言葉の意図がつかめなかった。
エイミは、掌を地面に向けると”こんな感じ?”などと独り言をつぶやきながら目を閉じて、数回深呼吸を繰り返した。
そして
「えい!」
エイミの掛け声と同時に、地面には掌両手分の直径の穴が出現しその場所を作っていた土や岩は空気の中に散っていった。
良く事情を呑み込めていない二人の口がだらしなく開いたまま、言葉にならない空気だけがそこから漏れ出していた。
「な……何なんですか、これは!?」
「え?これ?私の精霊の力は”土”と”風”なの」
「そう……そして私は”火”と”水”力を持っているの」
二人は、先ほどトライアにみせた精霊の力で、自分たちのことを化け物扱いされないことに気をよくしていた。
それに、セイラの炎が二人を巻き込みかけたことについても、自分たちのマイナスなイメージが付いたのではないかと心配していた。
先ほどの口論の根底には、”嫌われてしまったのではないか”という恐れからきていたものだった。
実際にはそんなことはなく、エイミとセイラに対して変わらず好意的に接してくれる二人に気を許していた。
エンテリアとブランビートも、秘密ともいえる話を聞いて”もしかして自分たちだから教えてくれたのではないか”という思いもあり、心の距離が近づけた気がしていた。
……ズズズ、……ズズ
何かが擦れて移動する音が、四人の傍に迫ってきていた。
0
あなたにおすすめの小説
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる