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第四章 【ソイランド】
4-13 ブロードの決断
しおりを挟む「ブロードさん……ですね?」
名前を呼ばれたブロードは、驚きつつも声を掛けられた相手に本人であることを告げる。
そして次に、なぜモイスティアの商人ギルドの長が自分の名前を知り、目の前に現れたのかを質問する。
「そのことで実は……あのハルナさん、覚えていますか?ブロードさんのお店の食事が美味しいと紹介していただいてたのですが、ずっと忙しくてお伺いできなかったのです。ようやく落ち着いてきましたのでお店にお伺いしようとしたところ、なんでも店を閉められたという話をお聞きしまして、こうしてあなたを探していたのです」
「私を……探して?」
「そうです。ハルナさんたちがおっしゃるには、ものすごく繁盛をしていたお店とお聞きしました。それがあの事件のあと店を続けていらっしゃったようですが、最終的に短期間で店を閉じられたことについて疑問が浮かんだのです」
「……」
「もしかして、店に”何か”問題が起こったのではないか……と考えたのです」
商人ギルドはこの問題に関し、補助金を用意し経営困難になった者たちへ手を貸すようにしていた。
金銭の問題であれば、この制度の利用申請があるべきと考えた。
だが、申請者の中にブロードの名前はなかった。
であれば、店を閉めた理由は金銭的なものが原因ではないか、その情報がブロードに伝わらない様になっていたかということを考えた。
状況を調べていくと、金銭面もあるが利用者の理解が得られていないことを知った。
さらに調べていくと、事の始まりはブロードのお店をよく思っていない同業者の声が大きかったことが原因だとグリセリムは知る。
この流れを急に変えることは危険であり、ギルドが手を貸すとさらにブロードの評判がよくない方へと流れていく恐れがある。
ここは時間を空けることが得策と考え、グリセリムは一旦状況を見守ることにした。
だが、その数日後に店が畳まれたとの報告を受けグリセリムはブロードを監視させていた。
すると今まで使っていた道具が売りに出されていると聞き、グリセリムは状況の変化に危険を感じて、今日このタイミングでブロードの元を訪れた。
その結果、優秀な料理人を不幸な事態から救い出すことに成功した。
まずグリセリムは、食事に困っていると聞いたグスターヴの家の料理人として仕事を与えることにした。
カルローナは箱入り娘で育ったせいか、調理は得意ではなかった。
今はずっとグスターヴの家で働いてくれていた老齢のお手伝いの方が、付き添ってくれて家事全般を手助けしてくれている。
だが、この方も調理に関しては得意ではなかった。
娘の責任を取るように都落ちのような形でモイスティアを出てグスターヴは、料理人を抱えるような贅沢ができるはずもない。
「だから、もし君が良ければだが。そこに行って手助けしてもらうことはできないだろうか?……もちろん、賃金は支払わせてもらうよ。ほんの僅かだが、後ろの奥さんと二人で暮らせる分には問題ない額は約束しよう。返事はすぐにとは言わない、ゆっくりと考えて……」
「お願いしましょうよ……アナタ」
後ろから、弱々しいフライヤの声が聞こえた。
「フライヤ……聞いていたのか」
ブロードはフライヤに心配を掛けないようにと、全てのことを黙っていた。
客の噂話も、それが理由で店を閉じたことも。
グリセリムの話で全てを知ったフライヤは、ショックを受けたようだった。
だが、”このままではいけないと”自分の近くに置かれたブロードが大切にしていた包丁を見て運命に立ち向かっていく決意をした。
「……それで、いまフライヤさんは?」
「はい。フライヤはいま、、私の代わりにグスターヴ様のところでお食事の世話をさせていただいております。彼女も、私の傍で手伝っていましたし、私もすこしレシピを残してきましたので」
エレーナの質問にブロードが応える。
続けてハルナが、ブロードに声を掛けた。
「ブロードさんは、いつティアドさんのところに?」
「グリセリム様からアーテリア様に話したことがきっかけで、私をこの町に呼んでいただきました。それも後から知ったのですが、アーテリア様は私たちをこの町に戻ってこれるようにと考えてくれていたようです」
「よかった!それじゃまたあの店を……」
ハルナの喜びとは反対に、ブロードは首を振り下に俯く。
「いえ……判決の結果は別として、私たちが騒動を引き起こしてしまった可能性は否定できません。それにこの町では既に信頼を無くしていますから、アーテリア様と相談してある程度準備が出来たら自分の生まれた故郷に帰ることにしました。私たちがスプレイズ家にお世話になっていることがわかれば、アーテリア様はグリセリム様たちに迷惑がかかることだって考えられます。ですから、私はモイスティアを離れることにしたのです」
「ブロードさん……」
「でもまだ、準備が整ってませんしもう少し甘えさせていただくつもりです。……さ、次の料理をお出していきますから、お楽しみください!」
そうしてみんなの前に、次の皿がテーブルの上に置かれた。
ハルナは、その料理を見て思わず驚きの声をあげてしまう。
「え?……これ、”肉じゃが”じゃない!?」
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