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第六章 【二つの世界】
6-59 対面
しおりを挟む草と木に覆われた、岩の急な傾斜の前に立ち、サヤは腕を組みながらまんべんなくその場所を眺める。
時折苔の生えた岩肌に顔を近づけ、気になった場所をじっと見つめていた。
「サヤちゃん……どう?何かわかった?」
すぐに怒り出すサヤに対し、ハルナは気を使いながらゆっくりと距離を開けて話しかけている。
「ちょっと……なんでそんなに離れてんのよ?ったく……でも、なんとなくこの辺な気がすんだよね。今までの流れから見ても位置的な情報は変更ないみたいだし……あ、これもしかして」
しばらくその場所を見つめた後、サヤは視線はそらさずに後ろにいると思われるハルナに対して手招きをして呼んだ。
「なに?何か見つけ……っ!?」
ハルナが近づいた瞬間、違う景色に移動した。
その変化にはもう驚き離しない、今までも幾度となく経験した現象だとすぐに理解した。
「サヤちゃん、移動するなら移動するってちゃんと言っ……」
そのハルナの言葉を遮るように、サヤはハルナに警告する。
「――アレはあんたに任せたよ」
「え?」
それと同時に、ハルナの皮膚の感覚にこの辺りに漂っていた元素がある一定の方向へ流れ……吸い込まれていくようにどこかに集まっていくのを感じる。
(あ、ここって……そうか!?)
そのことに気付いたと同時に、少し離れた場所から巨大なエネルギーが放出されたのを感じる。
――ゴォォォォオオオォオォオ!!
氷のブレスが堰き止められたダムを解放したかのような勢いで、ハルナとサヤに襲い掛かった。
『フン……弱き者が勝手に我が領域に入り込み追って』
モイスは思い返す……長い時間を過ごしている中で、稀にこの能力を持っている者がいた。
それを能力と認識していたかどうかはわからないが、この空間に入ってくること自体がその能力を持つ者でなければ、自分の許可なくこの場所に入ることは許されない。
許されなかった者がこの場に踏み込んだ場合、全ての者は一瞬にしてこの世から消えてしまうことになった。
モイスは、今回もこの結果に満足しに鼻を鳴らして持ち上げた首を下ろして再び目を閉じようとした。
「……っ。ちょっと、ゆっくりしすぎじゃない、ハルナ!?」
「ご、ごめん……っていうか、サヤちゃんもちゃんと言ってよ!!」
「アンタがぼーっとしてるから悪いんだろ!?あたしたちがここに何しに来たか知ってんでしょうが!!」
――ゴオッ!!
今度は何の前触れもなく、短い大きな塊の氷が言い争いをする二人に向かって襲ってきた。
だが、サヤはその方向を見ることもなく、手のひらを向けその攻撃を何もなかったように消してみせた。
『――ッ!?』
さすがにモイスも、二度もその存在を消滅させるべく放った攻撃から生き残った存在を見たことがない。
その者たちに対して、警戒心を抱き始めた。
『お前たち……何者だ!?』
だが、その言葉を無視してサヤは、先ほどの続きをハルナに対して言葉を繋げていた。
「ほらごらんよ!油断してるから今の攻撃にも、反応できてないんだよ!」
「ちがうよ!今のは判ってたわよ!!勝手にサヤちゃんが防いだだけじゃない!!」
『ぐぬぬぬぬ……お前らぁ……!!』
モイスは、自分のことをモノとも思っていない二人の態度に、怒りの感情がさらに高まっていった。
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