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第六章 【二つの世界】

6-69 この世界の加護

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(――おや?)




モイスから衝撃的な内容を聞いたが、ここにいる者たちはサヤが期待していた動揺する様子もなかった。
同じことを感じたのか、ハルナがそのことについてステイビルに問い質した。




「あの……驚かれないんですか?」


「はい、そのことは既に覚悟していたことですから。むしろ踏ん切りがついたと感謝するほどです……きっと私だと、この状況になるまでに、神経をすり減らしていたことでしょう……弱虫ですからね」


「ステイビル……」




後ろにいたナルメルが、ステイビルの肩に手を置いて心中を気遣った。
ステイビルは振り返り、心配そうに見つめるナルメルの顔を弱々しい笑顔で答えた。




「それでさ、ちょっとアンタに聞きたいことがあるんだけど……ステイビル」


「はい?何でございましょう?」




そしてナルメルもステイビルの肩から手を離し、一緒にサヤの言葉を待った。




「まさか……アンタたち?……って今は、そんなこと言ってる場合じゃないか。聞きたいことっていうのはさ、アンタたち王家にとってモイスたちの存在ってなんなの?」



「そうですね……王家にとって大精霊様と大竜神様は、古来から我々を助成していただけている重要な存在です。そのため、王になるものはその実力を認めていただくために、それぞれの神から加護をいただくことにより認められる制度にしたと伝えられています」


「加護……何か新しい力とかもらえるんですよね?」


『ハルナ、こ奴らの言う加護はそういうものではないのだ。我らと面会をし、その姿を見せて許しを請う……加護とはそういうものだ』


「ふ、ふーん……そうなんですね」




ハルナはここでも自分の元いた世界との違いを実感させられた。
ステイビルも、モイスが説明した内容に誤りがないと同意し頷いてみせる。





「そこで……だ。あんた達がその神々に対して、不遜な態度を見せる事って……ある?」


「?何をおっしゃって……そんなことあるはずがありません、我々は神々に対し……絶対的な感謝を……ま、まさか!?」



「そうよ……あいつ。キャスメルは言葉こそ敬ってたように聞こえたけど、モイスに対してあんたが言う絶対的な感謝っていうのは感じられなかったわ……これっぽっちもさ」



サヤは人差し指の先を親指に近付けるが、その間に隙間が空いているかどうかわからない程の空間を見せる。
そんなゼスチャーを初めて見るステイビルやナルメルでさえ、その量が微塵にもないこととの規模であることが理解できた。

ハルナは先ほどサヤが言った”怪しい”と言った箇所が、今の話であることはすぐに分かった。
それより軽蔑されたことに対して、モイスが悪い感情を持っていないか気になった。
だが、そのことはモイスにとっては些細なことだったらしい。
大きな絶対的な存在であるがゆえに、そんな小者の騒音はまったく気にしていなかったとハルナからの問いに答えた。
それは、いざとなればキャスメルなど容易に消してしまうことができるという力の差があるからだろう。


「だからさ……そこまでできるってことはさ。なんか隠し持ってるんじゃないかと思ったんだよね……」






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