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第六章 【二つの世界】

6-92 ルーシー・セイラム13

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「これで、少しの間は大丈夫かと」


ルーシーは、メイド服を着た二人にそう告げる。




「そうかい?……でもあんた、大丈夫か?」



サヤがそう告げたのは、既にルーシーは現王国を裏切るような報告を先ほどの警備兵に伝えているため、それが嘘だとバレれば、ルーシー自身に危機が訪れる可能性が高いと推測したためだった。
だが、ルーシーはサヤの言葉に対し笑顔で答えた。



「あなた様方も何か大きなことを考えて行動なさっているご様子。私も、この国を何とか変えてみたいという気持ちがございまして、あなた方の行動がわたくしの願いに繋がっているのであれば幸いでございます」



「ルーシー……あんた」


「それに、なんだかお二人が”悪い”方ではない気がしております。でなければ、受付の部下を助けて下さるようなことも起きなかったのでは……と。まぁ、これは私の勝手な考えなのですけどね……フランム」


ルーシーの呼びかけに応じ、契約精霊が姿を見せる。



「あなた、この方たちを案内して差し上げて」


「え!?ルーシー……でも」


「私は、大丈夫。それよりも大きなことを成されようとしている、このお二方に力を貸してあげて……あ、でも私たちの力なんて大したことないかもしれないけど」



「いえ!そんなことは!?」


「ありがとうございます。ハルナ様、サヤ様……お二方のご希望が叶いますように……大精霊にお祈りしております」



「アンタも……なるべく無事でいなよ」


「……!?」

「あ、ありがたきお言葉……そ、それではそろそろ参りましょう」


ルーシーの目は赤く染まり、サヤの言葉がその心に響いていた。
しかし、これ以上時間をかけては二人の行動の状況も悪化し、ルーシー自身の疑惑も深まっていく。
その限界点が今であると感じたルーシーは、それぞれの行動を開始するようにこの場に提案をした。





こうしてハルナとサヤは、ルーシーから”依頼された”箱を手にして部屋を後にする。
フランムは、ハルナの服の中に隠れて付いてくる。



ハルナは、知っていた。
ルーシーの身に”万が一”の事態が起きた場合、フランムの存在が消されないために自分と離れた場所に預けたということを。
ハルナの身に姿を隠すフランムは、既に契約者から独立した”妖精”になる条件がそろっていた。
あとは、契約者がその契約を解除するだけの状態だった。


この世で親よりも誰よりも、一番信用していた……自分の人生を支えてくれてきた相棒の契約精霊の無事をルーシーは願い
、その存在をハルナたちに託した。
ルーシーは自分のこれまでの境遇などは、ハルナたちには一切伝えていない。
それでも最後には、二人は自分のことを気遣ってくれていた。
自分よりも圧倒的な力を持つ者が、下の者を気遣ってくれている。
そんな世界……そんな国をルーシーは夢見ていたことに気付く。




あの二人が何をしようとしているかはわからないが、この国にいい風をもたらしてくれる気がする。
そう感じながら、ルーシーは開いた扉の影に消えていく二人の姿を見送った。







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