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第六章 【二つの世界】
6-129 ソイの記憶1
しおりを挟む――”勝者こそ正義”
その言葉自体は間違ってはいない……が、キャスメルの抱くその言葉はステイビルが描く理想の王国のそれとはかけ離れた意味があるように思える。
しかも、キャスメルがその思いを抱く原因を作ったのは、誰でもないステイビル自身であるということも。
二人は王選という存在を知らされて以降、幼い双子は兄弟という檻の中に入れられたまま、お互いをつぶし合うような日々を過ごすようになった。
有利と思われていたのはハルナたちがいた元の世界と一緒で、王国内での前評判はステイビルの方が有利と噂が流れ、その声はステイビル本人たちにも聞こえてきた。
いつしかステイビルは、そんな声をひっくり返したいと思うようになった。
キャスメルは決して自分よりも劣ってはいないといことを、国中の者たちに示したい……そういう思いがステイビルの中に浮かんだ。
キャスメルを引き上げるためにと自分自身を鍛えると同時に、キャスメル自身やその周囲にまで気を配り、キャスメルが悪い者たちに利用されないように手を打ってきた。
しかし、その行動がキャスメルのプライドを傷付け、ステイビルに対して抱いていたコンプレックスに対して憧れや恨みなどが混ざり合った黒い炎を灯すことになった。
「……結局、私は王選に敗れ……見ての通りの状態だ」
ステイビルは最後にそう告げて、長い独り言を締めくくった。
しかし、その話を聞いたソイは何の反応も示さない。
少しは自分の理想や歴史を聞いて、何かを思ってくれることがあるのではないかと期待した。
多くの者は普段聞けない、王族内の背景を聞くとにより何らかの反応がある。
そういう者たちは自身の中で自分が持つ最高の理念を抱き、今の王国について照らし合わせて自分の理念を貫いて見せたりその中身を修正させたりという意見をステイビルにぶつけてくれた。
ステイビルは自分の意見が完璧だとは思っていない、今までも自分が経験したことのないような進言をしてくれることにより新たな問題点が生じ、それを対応することでより良い理想が生まれてくることもあった。
中には腹の内を明かしても、何の反応を見せない者もいた。
それらの多くは、”自分の意見を持たぬ者”が多かった……当然そういう者たちだけでもなかった。
その者たちは、ステイビルに害をなすために近付いてきたものがそういう反応を見せていた。
今回のソイも”そういう反応”であると判断し、この者から何かしらの返しは期待できないと諦めようとしたその時……
「……テイビル」
かすかに聞こえたその言葉に、ステイビルは反応を見せてくれた嬉しさを感じた。
しかし、そのことを表面に出してしまっては教えを乞う立場として上であるはずがないと失礼に当たるとためステイビルは真剣の表情で目隠しで隠れたままのソイの瞳を見つめて言葉を掛ける。
「……どうした、ソイ?何でも言ってくれ、私はお前の言葉が聞きたい」
ステイビルはそう告げて、ソイの次の反応を待った。
「お前は……”ジュエ”を……俺の妹、ジュエのことを覚えているか?」
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