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第六章 【二つの世界】
6-142 侵略9
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6-142 侵略9
エルフが放った雷の矢は、キャスメルに触れる直前で消えた。
当てて駆け寄ろうとした男の手は伸びたままだが、自分たちの王が無事であることが信じられず言葉を掛けることができなかった。
何事もなく今まで通りに立ったままのキャスメルに声をかけたのは、術を放ったエルフだった。
「な……何をした!?」
キャスメルは自信に向かって叫んでいたエルフに一瞬だけ目をやりすぐその先をステイビルに戻した。
術者やその他のこの場にいた者たちは、魔法の放出に反応できていないキャスメルを見て、その姿が雷に貫かれて黒焦げになっている未来を想像していた……だが、その想像は裏切られることになる。
真っすぐに伸びていった雷はキャスメルの手前で何かに弾かれ、ダメージを与えることなくそのまま魔素へと還っていった。
「何も言うことはない、お前たちには……な」
キャスメルは、初めから目の前にいる者たちが”敵”としてみなす者ではないといった態度をとっている。
キャスメルの態度に怒りを覚える亜人たちだが、先ほどの不可解な現象を見てしまった今では、迂闊な行動を取れなかった。
その気配を感じ士気が下がりかけているところに、キャスメルが何かを告げようとした時……
「そうだった……お前に一つ聞いておきたいことがある」
「なんだ?俺の何が知りたい?」
「何を勘違いしている?別にお前のことで知りたいことなどはない」
「……?では、一体……何が知りたい」
そういってステイビルは、キャスメルに向けていた剣の先を下ろしたが、その剣はまだ手に持ったままだった。
「お前たちは、あの二人が”剣”を持っているの見たことはないか?」
「剣……だと?」
ステイビルには思い当たることがあった、盗賊に襲われた際などソイと旅をしたときにサヤは背中に長い布で巻かれたものを背負っていた。
(まさか……アレのことか?)
今まで一緒にいた中で、そんな話をステイビルは一度も聞いたことがなかった。
二人の探し物であった”盾”と何らかの関係があるのだろうか。
そこにふと、ステイビルの中によみがえるのは、つい最近までの辛い出来事のこと。
味方の存在が次第に奪われていった状況で、ステイビルは絶望の崖を飛び降りそうになっていた。
そんな時に協力者として出会った二人は、ステイビルの中では大精霊に近い程の神の存在に思えた。
キャスメルがソレを探しているということは、その存在を明かしてはいけないということはすぐに分かった。
「さぁ……な。なぜその剣をお前は探している?」
ステイビルはこの場は、知らないふりをした。
きっとイナには自分が嘘を付いていることは、魔法の力で分かったことだろうがそんな力がないキャスメルにどこまでこの対応が通用するか……ステイビルはキャスメルから情報を引き出すために策を練る。
「……お前は嘘を付くときの癖は治ってないな。気付いているのかは知らないが、お前が嘘を付くときは、その手の親指を隠していることを」
ステイビルは自分でも意識していなかったが、剣を持たない方の手は親指を内側にして強く握られていた。
エルフが放った雷の矢は、キャスメルに触れる直前で消えた。
当てて駆け寄ろうとした男の手は伸びたままだが、自分たちの王が無事であることが信じられず言葉を掛けることができなかった。
何事もなく今まで通りに立ったままのキャスメルに声をかけたのは、術を放ったエルフだった。
「な……何をした!?」
キャスメルは自信に向かって叫んでいたエルフに一瞬だけ目をやりすぐその先をステイビルに戻した。
術者やその他のこの場にいた者たちは、魔法の放出に反応できていないキャスメルを見て、その姿が雷に貫かれて黒焦げになっている未来を想像していた……だが、その想像は裏切られることになる。
真っすぐに伸びていった雷はキャスメルの手前で何かに弾かれ、ダメージを与えることなくそのまま魔素へと還っていった。
「何も言うことはない、お前たちには……な」
キャスメルは、初めから目の前にいる者たちが”敵”としてみなす者ではないといった態度をとっている。
キャスメルの態度に怒りを覚える亜人たちだが、先ほどの不可解な現象を見てしまった今では、迂闊な行動を取れなかった。
その気配を感じ士気が下がりかけているところに、キャスメルが何かを告げようとした時……
「そうだった……お前に一つ聞いておきたいことがある」
「なんだ?俺の何が知りたい?」
「何を勘違いしている?別にお前のことで知りたいことなどはない」
「……?では、一体……何が知りたい」
そういってステイビルは、キャスメルに向けていた剣の先を下ろしたが、その剣はまだ手に持ったままだった。
「お前たちは、あの二人が”剣”を持っているの見たことはないか?」
「剣……だと?」
ステイビルには思い当たることがあった、盗賊に襲われた際などソイと旅をしたときにサヤは背中に長い布で巻かれたものを背負っていた。
(まさか……アレのことか?)
今まで一緒にいた中で、そんな話をステイビルは一度も聞いたことがなかった。
二人の探し物であった”盾”と何らかの関係があるのだろうか。
そこにふと、ステイビルの中によみがえるのは、つい最近までの辛い出来事のこと。
味方の存在が次第に奪われていった状況で、ステイビルは絶望の崖を飛び降りそうになっていた。
そんな時に協力者として出会った二人は、ステイビルの中では大精霊に近い程の神の存在に思えた。
キャスメルがソレを探しているということは、その存在を明かしてはいけないということはすぐに分かった。
「さぁ……な。なぜその剣をお前は探している?」
ステイビルはこの場は、知らないふりをした。
きっとイナには自分が嘘を付いていることは、魔法の力で分かったことだろうがそんな力がないキャスメルにどこまでこの対応が通用するか……ステイビルはキャスメルから情報を引き出すために策を練る。
「……お前は嘘を付くときの癖は治ってないな。気付いているのかは知らないが、お前が嘘を付くときは、その手の親指を隠していることを」
ステイビルは自分でも意識していなかったが、剣を持たない方の手は親指を内側にして強く握られていた。
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