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第六章 【二つの世界】

6-144 侵略11

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「そうですか……あなた方は、ステイビル側に付いたようですね」



作戦として森に火をかけ、人や亜人を含む村の資源を一掃する作戦は失敗に終わったと判断する。
森の方へ視線を向ければ、本来ならば鎮火した際に燻る炎やそれによって生じた白煙などが見えるはずだった。
しかし、キャスメルの目にはそういった状況は確認できず、空だけを見れば普通の青空が広がっていた。
これも、この場に現れた大精霊と大竜神が成した結果だろうとキャスメルは判断する。


感心したのは今回の消火作業にあたり、火と水の属性をそれぞれ組んで作業にあたらせたことだった。
火の勢力のコントロールと水による消火の組み合わせは、キャスメル自身が考えていた抵抗策をそのまま実行されていた……しかもこの世界の元素を管理する神々の力によって。




『キャスメル、私たちはこれより王国を……いえ、”あなた”と敵対すると宣言します。ですが、もしもあなたが、私たちの要望を受け入れてくれるのならば、これまでと同じくあなた方の王国に恩恵を与えることを約束します』



ラファエルは、キャスメルに対して最終勧告のように告げる。
もしも、これが拒否されることになれば、神々たちははっきりと東の王国と敵対することを意味する。




「そうか……ならば仕方がない、な。……これより東の王国は、反乱軍に対して本格的に制圧を行っていく!」



ずっと平伏していたこの場にいる兵たちは、キャスメルの言葉の流れを聞き身体を起こしていく。
その様子を感じたキャスメルは、腰に下げた剣の柄に手をかけてそれを引き抜き上に掲げようとした。
その行動が、王国にとっては王が命令したことに対する開始の合図となる。


しかし、その剣は抜かれなかった。
そこに現れたのは、二人の女性の姿があった。



「……アタシたちだろ?アンタが用があるのは」


「来た……か」


キャスメルは途中まで抜いて、刃まで出ていた剣を再び鞘に納めた。

それによって周りにいた数名の兵の緊張感は、少しだけ落ち着きを取り戻した。
命令とはいえ、元王子と魔法を使う亜人……さらには神々を相手に攻撃を仕掛けることは、自分の命と引き換えにする行動であることは理解していた。
そこに、国王が探していたと思われる人物が現れ、その緊張感は少しだけ緩和された。


「こ……こんにちは。キャスメルさん」


ハルナの挨拶に対しても、キャスメルはハルナに目を向けずサヤのことを視界の中心に収めていた。


「やっと姿を見せたか」


「待たせたみたいね……で、アタシたちに何の用?っていうか、大体想像はついてるけどさ」



「ならば、話は早いな。その前に……」


キャスメルは後ろを振り返り、自分の警護をしていた兵たちに身体を向ける。


「お前たちはもうここでよい……拠点に下がって待機しておれ」


「し、しかし!?王、お一人では……!?」


「……」



キャスメルは二度同じことを告げるのが面倒だったのか、隊長の心配にも言葉を掛けずにただ自分の命令の行動をとるまで待った。
男たちはほんの一、二秒だが、キャスメルが言葉を曲げないと判断し、無駄な命を落とす前に部下たちを連れ、安全な場所まで下がっていった。







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