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第六章 【二つの世界】

6-169 見覚えのある者15

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「くっ!?王国を舐めるのも大概にするのだな、アルベルトっ!!」


――キン!!


そう言って男は腰に下げていた剣を抜き、アルベルトから付きつけられていた剣を弾いた。


弾かれた剣の威力はアルベルトにとって大した威力ではなかったが、防御する姿勢も兼ねて弾かれた方向へ身体を回転させてその力を受け流してみせた。
剣を払った男は、その手ごたえの無さに警戒をし、この場にいる自分兵士たちに次の指令をだす。



「お前たち、いけ!こいつらをここで始末しろ!!」


隊長の命令を聞いた体格の追い兵士の一人が、首と利き腕の肩を回しながら前に歩み出る。
この男は、この兵士の中で一番戦闘力が長けている者だった。
この者を連れてきたのも、戦闘において要となる存在であり、自分の勝利の確立を高めてくれる存在だった。
ただ、一つだけ問題があったのは自分の力を過信し、命令や作戦よりも己の力を発揮することが、この男の中で最優先されていることだった。
ただ、圧倒的な力で作戦を無視した行動でも、相手の戦力を全てねじ伏せてきたことで、命令違反も正当化されてきた。

今回もアルベルトという”強敵”を前にして、その気持ちは抑えられなかったようだ。
騎士団の中では訓練用にお互いの剣を重ね合うことはあるが、決して本気の殺し合いではない。
この男が望んでいるものは、訓練の中では得られることがなかった。


「……アンタとは一回やり合ってみたかったんだ。騎士団の中でも特別な存在で、しかも精霊使いを嫁にもらうなんて……うらやましい限りだよ」



「……」


男の言葉にアルベルトは反応を見せずに、ただ顔を覆うヘルメット越しの瞳を見つめていた。

男が前に出てくると同時に、周囲にいた体調を含む兵たちは後ろに下がり、この部屋の中に大きな空間が用意された。
男はゆっくりと自分の腰から剣を引き抜き、その先をアルベルトへと向ける。

アルベルトの背後にいたミカベリーも、エレーナの手によって腕を引き寄せられて距離を取った。
エレーナもこの状況を認めてくれたようで、アルベルトは身体ごと剣を突き出してくる男の方へと向けた。



「ようやく、その気になってくれたか?安心しろ、命まではとらんよ……多分な」


「お前のような奴が騎士団の中にいるとは……質が落ちたものだな」


「な……に!?」


そう言われた男は、まじまじと眺めるアルベルトの態度が信じられなかった。
今までもそういう態度をとる者もいたが、それは自分と同じくらいの体格で力もありそうな相手ばかりだった。
しかし目の前の男は、自分よりも一回り小柄で身体つきは良いが、自分が本気でぶつかれば吹き飛んでしまいそうな存在だった。



「まぁいい。お前がどれほどの実力を持っているかは知らないが、その腕前見せてもらおう」


「お前は、俺のことを知らないのか?この周辺でも有名なのだぞ?俺の名は……」


男が名前を告げようとした際に、アルベルトは相手に掌を向けてその発言を制する。


「お前の名など知らなくていい。それとも、剣の腕より口の方が得意なのか?そうでなければ、さっさと掛かってきたらどうだ?」


「――き、貴様っ!!!!」





その挑発に乗った男は、この部屋の広さ以上の大声をあげ剣を振り上げてアルベルトに斬りかかった。






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