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第六章 【二つの世界】

6-179 見覚えのある者25

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「で、どうするの……アル?」



「そうだ……な」



エレーナからガレムの対応について聞かれたアルベルトは、腕を組み本気で悩んだ。
きっとこれから、自らが所属している国と戦っていく必要が生じてくる。
この騒動のゴールがどこになるかはまだはっきりと判らないが、自分たちの身と抱いた正義を守るために戦わなくてはならない……であれば、戦力は多い方が何かと助かるはず。


このガレムは、自分の力のためだけに騎士団という組織を離脱し今この場にいる。
ここに置いたとして、この先自分の都合だけでこの場を離れないもしくはアルベルトたちを裏切らないと誰が保証してくれるというのか。

であれば、ここでガレムを切り離した方が余計な心配をしなくてもよい。
しかし、様々な状況に置いて戦力が不足しているため、少しでも味方が欲しいという考えから、どうしてもガレム切り離すにまでの決断に至らない。


安全と戦力の間で迷っているアルベルトの姿を見て、ステイビルはその判断の手助けをしようと言葉をかけた。


「お前は……ガレムと言ったか?」



「あ?アンタは……いや、お前……ちがう。あなたは誰だ?」


ガレムはサヤの――サヤにとっては普通だが――刺さるような視線を感じながら、対応を間違えないようにと言葉を数回選び直した。

ミカベリーは元王子であるステイビルに対しての態度に、ビクビクしながらその反応を見ていた。
今までのことを聞いていなかったのだろうかという疑問と、頭まで筋肉でできた構造であるのではないかという思いこの状況を見守っている。



「私は……そんなことは、どうでもいい。お前は腕に自信があるようだな、少しだけその実力を見せてくれないか?」



「……は?なんで俺がアンタとやり合わなきゃなならねーんだ?」


ステイビルはガレムの言葉を無視して、アルベルトが持ってきた訓練用の木刀を二本をそれぞれ左右の手で受け取る。

ステイビルは右手で持った木刀をガレムに向けて差し出し、受け取るように差しだす。
だが、ガレムはその差し出された木刀をすぐには手にすることはなかった。


「……どうした?アルベルトに負けて、その牙は折れてしまったのかな?」



「……っ!?言ってくれる!!」



ガレムの目には再び、野心という名の炎が灯った。
その前までは、アルベルトの技術を何とかして習得させてもらえないかという思いで一杯だったが、ステイビルの挑発がガレムの中の優先順位を変化させた。


「……骨が折れても俺のせいじゃないからな?」


そう言ってガレムは、ステイビルが差し出した木刀を掴もうとする……が、その握る手の中には何もなかった。


「……おい、何の真似だ!?」


ステイビルは、ガレムが伸ばした手で木刀を掴もうとした瞬間に手を放し木刀を床に落とした。
落下した木刀は床に当たるが垂直に跳ねて、ガレムが掴み損ねた後に再びステイビルの中の手に収まる。


「どうした?やる気があるなら、俺からこの木刀を奪ってみるがいい……それとも、そんな力は持ち合わせてはいないのかな?」


「クソヤロウが!!!」



ガレムはそう吐き捨てて、ステイビルの持つ木刀を奪おうと襲い掛かってきた。









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