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第六章 【二つの世界】
6-182 地位
しおりを挟む「……アンタは一体何者なんだ?」
「「……はぁっ!?」」
思わず口から感情のままに変な声を出してしまったのは、エレーナとミカベリーだった。
どちらからの声を聞いていたハルナも、二人が発した声の意味がなんとなく分かる気がした。
ここまで周囲の者たちは、ステイビルの名を何度も呼んでいたはずだった。
その際には王子という今ではその地位から外されているが、敬称を付けてなんどもその名を呼んでいたはずだった。
しかし、ガレムの耳には残っていなかったようだった。
だからこそステイビルに対しても、他の者たちから見れば失礼にあたる言動をとることができていたのだろう。
「あ……あんた、この方が誰だか……本当に知らないの!?」
我慢できなかったミカベリーが、この場の空気を読んで真っ先にガレムに問い質した。
「は?誰が誰だか知ったこっちゃねぇんだよ……そんな言い方だと、なにか?こいつは、偉い貴族か何かなのか?」
ガレムは、相手が貴族であろうが特に気にする様子はない。
相手にとって失礼であったとしても、今までは自分のこの”力”だけでそういう者たちを黙らせてきた。
自分の態度に文句があるなら、そのことを口にすればいいだけだった。
今までのその結果の先には、ガレムが自分のとった態度を反省させられるようなことは一度もなかった。
「ステイビル……そう呼んでいたな?だが、それがどんな地位の者であろうとも……男という存在は、はこの世で”強い”か”弱い”かだけの判断でいい。いままでも、そうしてきた」
ガレムの言葉に対し、更なる反論をしようとしたミカベリーだが、その行動はステイビル本人によって制された。
納得のいかないところもあったが、本人が”問題ない”と言えばそれ以上のことは何も言うことはできない。
「……確かに、ガレムの言う通りだ。今の私には社会的地位などなく、ただの一般国民だ……これまでの経験はあるが、多くの者に必要とされていないのならば、無駄なものでしかないな」
「ステイビル様……」
エレーナは今の状況にあるステイビルの心中を察して、それ以上のことは言葉にできない。それも王選において自分たちの力が足りなかったせいでこのような状況となっていることも、今でもエレーナとアルベルトの心に突き刺さって抜けずにいた。
しかし、ガレムの言うことも理解できる……自分たちは今、王国という組織の中のルールに反した行動をとってしまっている。こうなれば、相手か自分が勝利を収めないことには、その存在が認められることはない。
それ以上のことを成すには、結果として表す他にないこともエレーナたちもステイビルも理解していた。
「……ふーん。なんかいろいろあることはわかった。だが、それが何なのかまでは判らんがな」
ガレムはガレムなりにこの場の思い空気を察し、いま自分ができる限りの気を使って見せた。
「だが、いまの俺はアンタたちに挑んでも勝利することは出来ないだろう。あんた達二人がかりでなく、一対一でやったとしても……だ。だから、こういうのはどうだ?」
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