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第六章 【二つの世界】
6-187 誤り
しおりを挟む「ちょっと、ガレム。どこへいってたの?」
ミカベリーは少なくなった屋敷の中の雑用をこなしている途中、廊下で出くわしたガレムに声をかけた。
町の様子を見回っていたガレムは、エレーナの屋敷の中に戻ってくる。
騎士団を抜けたガレムは、その身を寄せる場所をなくしてしまった。
とはいえ、今回の件で協力を仰いだステイビルは、エレーナにお願いをしてガレムをこの建物中に住まわせることになっていた。
「……外を見回っていただけだ。何も悪いことはしてないだろ?」
ステイビルがモイスたちとフレイガルに到着しあの騒動の後、ステイビルたちは町の中を隠れて巡回していた。
アルベルトが調べると、元々フレイガルに派遣されていた警備兵はたちには今回のことは何も知らされていない様子だった。
そのため、ステイビルたちは自分たちでこの町の警備をすることにした。
もちろんその対象は、一般的な犯罪者や侵略者などではなく、王国に反する自分たちを消し去ろうとする者たちへの警戒だった。
今回の警備は、エレーナやステイビルたち自身のための警戒であるため、王国側の力に頼ることはできない。
だからこそ、ステイビルたちは自分自身でこの町の警戒を別な視点から見回っていた。
しかし日にちが経つにつれて、ステイビルは今の状況を不思議に感じていた。
王国側からすれば警備兵に命令を下せば、今のエレーナたちは反逆罪として捕らえることができるはずなのだが、キャスメルはそれをしようとしないどころか、エレーナたちに通常通りの生活を行わせている。
何事もなかったかのように、王国から町の運営資金も定期的に届いていた。
それはステイビルたちを油断をさせているのかはわからないが、この不利な状況の中で仕えるものは使わせてもらおうということになった。
そのうえで警戒することに越したことはないと、身を隠しながら街中を警戒していた。
ミカベリーはガレムの当たり障りのない返答を,そのまま受け取ることはしない。
ガレムの一挙一動を観察し、何かボロを出さないかと待ち受けていた。
「ふーん……ならいいだけど。裏切るようなことしないでよね」
「裏切る……ふん!俺は自分のためにここに残り、その許してもらっている。それ以上のことをするつもりも無い」
「ま、ステイビル王……っと、ステイビル様が何もおっしゃらないのなら、私も言うことはないわ」
「ステイビルという人物が元王子であろうが一般国民であろうが、俺にとってはどうでもいい。もうこれ以上の用がないなら……いかせてもらうぞ」
そう言ってガレム後ろを振り向いて、自分に与えられた部屋まで戻っていく。
ミカベリーの疑う視線を受けてはいるが、全く気にもせず自分の部屋を目指して。
メイヤもミカベリーもガレムという男をこの家に置いておくことに反対し、エレーナに何度も今すぐ追い出すようにお願いをした。
だが、エレーナはその申し出を受け取ることはなかった。
ステイビルが、”問題ない”とそう判断していたからだ。
しかし、最終的にその判断が結局は誤りであったことになるのは、その日から数日後のことだった。
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