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第六章 【二つの世界】
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しおりを挟む”――この世界が好き”
ハルナのその言葉が、マーホンの気持ちを決めさせた。
それと同時にマーホンはハルナの前で片膝を着いて胸に手を当ててこの国で忠誠を誓う体勢をとる。
「いいですか……ハルナ様?私はいつもあなたの味方です。ですから、この件全てわたくしにお任せくださいませ。もちろん何か行動を起こす前には必ずハルナ様に、お伝えいたします。その際にお気の召さないことがありましたら、遠慮なく叱っていただいても構いません。決してハルナ様の悪いようには致しませんので、この件わたくしにお任せくださいませ」
そう言いながらマーホンは、ハルナからこの申し出の許可を得るために深々と頭を下げた。
ハルナは戸惑いながらも、マーホンがなぜここまで自分に尽くしてくれているのか疑問に感じていた。
出会った当初は、”そういう嗜好”を持った人物ではないかとエレーナと話し合った時もあった。
付き合いが長くなるにつれて、そのような不埒な考えは自分たちに尽くしてくれるマーホンに対して失礼だという気持ちにいつしか変わっていった。
マーホンは本当にハルナたちに対して、自分の利益以上の協力をしてくれた。
王選の中でも、マーホンの協力についてはとてもありがたいことだったが、やはりハルナの中に燻っている疑問が解消されずにここまできていた。
ハルナはここで、今まで聞けなかった疑問をマーホンに対してぶつけることにした。
「マーホンさん……これまでのことも含めて、マーホンさんの協力はなんていうか……とても感謝しています。ステイビル王子だけでなく、エレーナも。もちろん私もですよ?ですが……どうしてそんなに良くしてくれるのですか?」
その言葉にマーホンは下げていた頭をあげて今までに見たことのないくらいの怯えた顔を見せていた。
「あの……実は……」
「……?」
ハルナは、今までに見たことのないようなマーホンを見て不思議に感じている。
その気持ちを汲みとって、ハルナは心配さないように笑顔でマーホンの先の言葉を促した。
「本当に笑わないでくださいね?……あの、私」
「は…はい?」
「わたし、ハルナの様をお姉さん……みたいに……思って、その!?」
「ふふ……フフフ。あはははっ!」
ハルナは、緊張の糸がほぐれてその反動で笑いが込み上げてきて止まらなかった。
「は……ルナ……さま?」
その様子をマーホンは何が起きたのか判らず、ただただ笑いが収まるのを待っていた。
すると、次第にその笑い声は収まっていく。
そして、ハルナは自分の目に浮かんで流れた涙を人差し指で拭った。
「どうされました……?あ、私がハルナ様に失礼なことを……申し訳ございません!?」
そういうとマーホンは正座した状態になり、額を地面に擦り付けた。
それは自分が可笑しなことを言ってしまったことへの謝罪と、初めてともいえる自分の本音を語ってしまったことに対する恥ずかしさとそれを嘲笑されたことへの痛みによって、ハルナに顔を向けることができなくなった。
「……っ!?ち、ちがうの!……はぁはぁ……ごめんなさい、本当に……でも違うんです!」
「……?」
少しずつ落ち着きを取り戻そうとする、ハルナのことマーホンは再びその様子を顔をあげて見つめる。
「あの、安心したんです。もっとひどいこと言われるのかと思って……」
「今までもハルナ様のことを悪いと思ったことは一度もございません……それよりも逆にご迷惑なんじゃないかって……で、でも時間が経つにつれて、ハルナ様が、本当の家族で自分のお姉様のような気がしてきて……もちろんそんなことを思うことは不敬であることは承知しておりますが……ハルナ様お優しいですし……それで、それで」
ハルナは床に着いていたマーホンの手を、優しく手にして床の汚れを払ってあげた。
「私はマーホンさんのこと、家族のような友だちと思っていました。いつもありがとうございます、そして、これからもよろしくお願いしますね!」
その言葉を聞き、マーホンの目からは涙が零れ落ちた。
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