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第六章 【二つの世界】
6-236 残りのひとつ
しおりを挟む「それで……もう一つの”ハルナ様”についてはどのようにお考えなのですか?」
マーホンは、これが本題だと言わんばかりの口調で、ステイビルに言葉を投げかける。
ステイビルは自分が一国の王であることは自覚をしているが、こうして未熟な自分に対し感情をむき出しにして意見を告げてくれる”仲間”がいることを嬉しく思う。
そして今は、そんな言葉を掛けてくれたマー本に対して、真摯な対応を見せる必要がある。
「最後に、ハルナの件だが……ハルナには、このままの状態を続けて欲しい」
「……といいますと?」
ハルナの反応を待つよりも先に、マーホンがステイビルが告げたその真意を伺った。
「ハルナとの関係は、このまま続けさせてもらいたい」
「それは、どういうお考えのもとで?」
その返しに、ステイビルは自分の考えを告げた。
「今回のハルナとの関係は、マーホンが取り仕切った通り、国をあげての結果だった。これをいまさら破棄をしては、色々と問題が生じるだろう。そのために……」
ステイビルはハルナの顔をちらっと見た。
「……そのために、ハルナには少し我慢をしてもらいたい」
その言葉を聞き終わったマーホンが、即座にステイビルに言葉を返す。
「……我慢ですか?一応聞いておきますが、どのくらいの期間、ハルナ様は我慢すればよろしいので?」
「それは……まだ何とも言えない。その問題を実際に取り掛かれるのは、グラキアラムの問題がすべて片付いた後になるだろう」
「では、それがどのくらいであるとステイビル様はお考えになられていらっしゃいますか?」
「それこそ、なんとも言えんよ。相手はあのカステオだ……この条件に乗ってくるかもわからん。まぁ、乗ってこなければ、通常の対応をするだけだがな」
その言葉が告げられたとしても、マーホンはステイビルへの追及の視線を外さない。
そのことを不審に思うステイビルは、まだ伝えていないことがあった。
だが、それを”いま”この場で伝えるべきかどうか、早々に判断し告げない選択をしていた。
「……それで、”いま”お考えになられていることは、それだけですか?」
「……?」
マーホンはステイビルの心の中が見えているのか、的確にステイビルを追い詰めていく。
それは、マーホンの中にあるひとつの疑問が、いまだ解決されていないためだった。
マーホンはそれを決して、こちらから確認することはなしない。
あくまでもステイビルがそれに気付いて、説明してくれることを待つ。
このことに関しては、エレーナもマーホンが何にこだわっているのかわかっていない。
だが、何か考えがあってのことであろうと信じ、この場面では何もしないことにした。
(ん……まさか……やっぱりそれだろうな)
ステイビルはマーホンの視線が外されないことの意味をようやく感じ取り、戸惑いつつも最後に残しておいた説明を始める。
「あー……それと、ハルナのことだが……ひとつ……言い忘れてた」
「……?何でしょう?ステイビルさん?」
名前を呼ばれたハルナが、下にさがりつつあるステイビルの顔を覗きこむ。
「うっ!?……あの、ハルナには……私の傍に……いて……欲しい。それは、作戦とかではなく……わたし自身の……願いだ」
その言葉を聞けたマーホンは、フンっと鼻から息を吐き、背もたれに身体を預けた。
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