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第六章 【二つの世界】
6-302 あの日の出来事1
しおりを挟むいまだに盾の創造者が黙っていることが気になっているハルナだが、まずはこのまま自分の疑問の解決について続けることにした。
ハルナはこれから確認しようとする事実に、胃のあたりが締め付けられるような感覚が生まれた。
だが、それを聞いておかなければ、安心することができない。
再び訪れたこの世界を離れる前に、騒動の中で連れ去れてたしまった、ミレイの存在が無事なのかどうかが気になっていた。
最期に見たこの世界でのエレーナの表情は、今思い出しても胸が締め付けられ痛みを感じてしまう。
幼い我が子を連れ去られ、今すぐにでも追いかけたい気持ちを抑えながらも、王国の兵と衝突が起きていたことに対し、自分の感情を抑えながら冷静に対応していたエレーナはハルナの知らないエレーナだった。むしろあの時は――本当の世界では仲の良かった――メイヤのように、サヤの友人である自分に対して罵詈雑言を浴びせてくれた方が自分にとっては気が楽だった。
ハルナは一度深呼吸をし、知りたくない事実と向き合う覚悟をした。
「それで今……ミレイちゃんは?」
「……あの娘ならば、今は親の元へ帰っているだろう」
ハルナはその答えにホッとするも、無事に帰ることができたのか心配になった。
「うむ、命には問題は無かろう……」
「命……には?どういうことですか!?」
ハルナの心配とは無関係に、剣の創造者はハルナにとっては信じられない返答をする。
「命には問題がないと言った……その言葉通りのことだ。そちらの反応から推測するに、何かを行ったのではないかという疑問を持ったのだと思うが、それについても間違ってはおらぬ」
「ミレイちゃんに……何をしたんですか!?」
明らかに何かをしたと告げる盾の創造者に対し、ハルナは明らかに敵意とよばれる感情を向けた。
だがその感情も次の剣の創造者の言葉で、一瞬にして困惑の渦の中に巻き込まれて消えていくことになる。
「……あの人間が持っていた元素を全て利用させてもらった。その反応を利用して、ハルナはもう一つの世界へ戻ることができたのだ」
「――え?」
ハルナは自分の知らない事実を知り、その先の言葉と思考を一瞬だが失った。
サヤが自分に対し敵対宣言をした後、一度ステイビルたちのところへ戻った。その後、眠った後に起きた時には元にいた世界へと戻っていた。
あの不思議な出来事が剣の創造者の言葉からすれば、理由なき出来事ではなかったということになる。
しかもそれは自分が望んだことではなく、それ以外の者が勝手に判断し行ったことになる。
その判断のおかげで、エレーナとアルベルトの子の特殊な能力が失われてしまったことは、ハルナにとっても納得できる内容ではない。
むしろ、こうして再びもう一つの世界に戻ってきたことにより、そのミレイの犠牲を無駄にしてしまったことになる結果となった。
その処理できない思いは怒りの感情へと変わっていき、ハルナの感情は爆発しそうになっていた。
しかし、またしても剣の創造者の言葉によって、その感情は行き場をなくしてしまうことになった。
「この結果は、私ではなくこの身体の持ち主……サヤが望んだものなのだ」
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