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第六章 【二つの世界】

6-317 ハルナがいなくなった日10

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「で、ですが……あなた様は、生物を創造することはできない……と?」


「そうだ……私にはそういう能力はなかった。だが、興味はあったのだ」


「……?」





「しかし、存在は造り出せてもその実態までは完成することがなかった。だからは私は、世界の中でその存在を隠しておいたのだ」


「存在……それは、どういうことでしょう?」



剣の創造者は、自身が創った存在について説明をした。

剣の創造者が言う存在とは、実態を持たない”意識”だけの状態だと説明する。
剣の創造者は、生き物が実体とそれを司る意識がそろった状態だと理解をしていた。
実体の在り方は様々で、精霊のようにその身体を元素によって保つ生き物や、魔物のように瘴気によって構成されていた。
その中身の意識だけは生み出すことができたが、その入れ物である実体を創ることはできなかった。
そのため、剣の創造者はその存在を世界のある場所へと隠し、その存在を封印したままにしたという。
その存在は、意識としては存在していたが、経験や知識を持ち合わせておらず、ただその場所で長い時間を過ごしていたという。



「そこで、サヤがその存在を偶然にも見つけ出し、私が作り出した存在……お前たちが呼ぶオスロガルムという存在に接触をした。私も初めは信じられなかったが、あの空っぽの器だった存在がどういう訳か実体を持ち、この世界の中で存在を主張することになるとは……」


「その話は、ハルナから以前聞いたことがあります。王国ができる遥か以前に、サヤという者が偶然にもオスロガルムが潜んでいた場所に出現したといっておりました。そのため、最初に接触したのが、あのオスロガルムだったということです……ですが、お聞きになられていないのですか?」


「あぁ。”この者”は、そういう話はしてくれなかったのだ。なぜかは知らんが……な。ただ、感謝というのか。そういった感情もある」


「感謝……ですか?」



エレーナは目の前の大きな存在に、驚いて耳にした単語を繰り返した。



「あぁ、そうだ。あの私が創り出した存在を形にしてくれたことと、この世界から消してくれたことにな」


”消した”という言葉に、エレーナは引っ掛かりを覚えて不快な気持ちになる。
しかし、その感情を抱くことすらも無駄だということは薄々判っていた。この世界を創った存在とは、その世界で生きている常識や倫理の話しは通じないということを。

それを黙って居ようとしたエレーナの背後から、ニーナの声がした。




「どうしてオスロガルムを倒したことが、感謝されることなのですか?あなたが創った存在なのでしょ?」


「それは、私では手が出せなかったのだ。なぜか、我々や我々が創りだした力ある存在には危害を加えることができぬ。ステイビルたちは見たことがあるであろう?」




ステイビルたちは、最初にオスロガルムと対峙した時のことを思い出し、モイスのブレスやオスロガルムからの瘴気の攻撃が不自然に避けていったことを頭に浮かべた。



「だから、それをサヤが消してくれたことは感謝をしている」







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