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第六章 【二つの世界】
6-327 聞かされた真実
しおりを挟む”自分がいる世界と別な世界がある……”
そのことを聞かされたステイビルの頭の中は、眩暈にも似た自分がどのような状態かも判らないような感覚に襲われた。
サヤから聞かされた内容は、この世界のステイビルには理解し難いものだった。
「ま……まさか……自分の他にもう一人の自分が……しかも、自分が……複製?」
その影響はステイビルだけでなく、この部屋の周囲にいたメイドや警備兵たちも同じように呆然としていた。
「……残念だけどね、本当のことなんだよ。それをやったのもこの”剣の創造者”っていう奴の仕業なんだけど。それでも、アンタたちの”本物”が消されないためにやったことらしいから、許してやってよ」
「では、サヤ様も……もう一人いる……わけではなさそうですね」
ステイビルの理解をしきれていない頭の中で、わずかに浮かんだ疑問が間違いではないことをサヤは告げる。
サヤとハルナは、どちらの世界においても唯一の存在であった。
これは元々、この世界の存在ではないことが影響をしているのだろうとサヤは説明する。
その裏でこの世界を創り出した剣の創造者は、その説明が間違いではないとサヤに告げた。
「そうみたい……でも、その中でも色々細かい差はあるらしいね」
ハルナから聞いた話だと、この世界にはグラキース山に存在していたエルフの村から出たブンデルが、この世界では存在していないと聞いていた。
そのことを剣の創造者に確認すると、元の世界の状況を完全に複写することはできなかったらしい。
あの時はオスロガルムを倒され、その存在が資源へと還っていく際に、この世界の器が溢れ出てしまうためにもう一つの世界を用意したと、サヤは剣の創造者から説明された。
この世界の人物を創り出す能力についてサヤは問いかけると、剣の創造者もこの世界の仕組みを研究しており、何もない所から創ることはできなかったが、今の世界の情報を写すことはできたといった。
それも初めての試みで、どのようになるかはわからなかったが、概ねうまくいったという。
しかし、完全には写すことができなかったために、この世界に存在する生き物たちにこのような失敗が出てきてしまったのではないかと、剣の創造者は自分が行った行為の結果をそう判断していた。
そこまで詳しくステイビルたちに説明したとしても通じることはないだろうし、それを理解したからと言ってどうすることもできないのは判っていた。
だから、サヤはそれ以上のことは何も言わず、ステイビルたちが受けた衝撃が収まるまで黙って見守っていた。
そして、一番初めに落ち着きを取り戻した……とまではいかないが、話を先に進める決意をしたステイビルは額に滲んだ汗を拭うことなくサヤに向き直した。
「し、信じ難いことではありますが……サヤ様がおっしゃるのならば……そうなのでしょう。となれば我々は一体どうなってしまうのでしょうか?ある日突然消されてしまうことも……」
「今のところそれはない……とも言い切れないんだけど。そうならないように、アンタたちに協力してほしいことがあるんだ」
そう言ってサヤは、ステイビルにこの国に起きた変化があれば、自分が来た時に報告をしてほしいとお願いをした。
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