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第六章 【二つの世界】
6-405 サヤへの期待
しおりを挟む『サヤ様……』
「ん?なに?」
盾の創造者の気配が消え、時間にして十数秒の沈黙がこの場に流れた。
その沈黙が息苦しく感じられ、その沈黙が耐えられなくなり真っ先に声を発したのはラファエルだった。
ラファエルは、この場の改善のための鍵となる人物のサヤに声をかけてみた。
それでも、返ってきた言葉は何の身もない軽い言葉だけだった。
しかし、ラファエルはそんな空っぽのようなサヤの言葉にも、その奥には”ナニカ”が詰まっているはずだと、これまでの対応からも判断していた。
だからこそ、ラファエルはその虚空な返答に対しても絶望を感じることはない。きっとこの状況を変えるためのモノを持っているはずで、自分がやるべきことを伺うべく、ラファエルはサヤに本来の質問を投げかけた。
『これから……どうされるのですか?』
「うーん……どうもできないねぇ。今のところは」
「前みたいに、この空間を出ることはできないってこと?」
次にハルナが、然程心配もしてないような口調でサヤに問いかける。
ハルナの言葉をを心地よく思わないサヤはイラっとした感情が湧き出てくるが、今はそんなことをする余裕がないためぐっと感情を飲み込んだ。
それでも、なんだか自分だけにその責任を負わされようとしていると感じ、感情の器から怒りが溢れた。
「っていうかさ、アンタはなんかないの?この状況を抜け出すナニかをさぁ。だってアンタずっとアイツに身体を乗った取られてたわけなんだろ!?アンタも頭ひねって何か考えなって!?」
『も、申し訳ございません!?』
その言葉に反応したのは、怒りを向けたハルナからではなく、まるで関係の無いラファエルからだった。
ラファエル自身もサヤに頼っていたところもあり、先の言葉が自分に対しても当てはまっている部分があると思ったらしく、サヤの言葉に反応してしまったようだった。
サヤは、本来怒りをぶつけた別の場所からお詫びが来たことに対し、気にする必要はないと答えた。
とはいえ、誰もこの現状を改善させる手段を持たないことは、今までの反応からわかった。
……ある一人を除いて
『……サヤよ』
「え?」
突然サヤの声で、自分自身の名を呼ぶ声がした。
サヤ自身はそのことに対し落ち着いた様子で、しかもその存在を待っていたかのように冷静に対応した。
「なんだ?何かいい手があるっていうのか?」
本来ならば、統合された存在は発声器官が人体には一つしかないため、どちらかがその身体の制御を取っていないと言葉を発することができなかった。
しかし、今はこの不思議な空間の中でそれぞれが物理的な形を持たず意識だけで存在しているため、同時に言葉を発することが可能となっていた。
『もちろんだとも。この空間は、世界を創造するためにしよう試験的に用意した空間なのだ。詳細はいま語るべきではないが、あの世界の縮小版と考えてもらえばいい』
「……」
サヤはその言葉に対し何の反応を見せなかったが、何か思うところがあった様子だった。ハルナはそのことに気付くも、説明の内容が理解できていないために黙っておくことにした。
『……どうやらわかっているようだな。この空間は壊すことができるのだ』
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