メイド・イン・メイド~機械仕掛けの恋人~

ゴサク

文字の大きさ
4 / 18

ご友人です!

しおりを挟む
 今日もいつものように、もはやルーチンワークと化した仕事が始まる。オフィスにはずらっと机が並び、皆黙々とキーボードを叩いている。そして、これもまたいつものように同僚が俺に話しかけてくる。

「オイオイオイ」

「何だ、やかましいぞ、昌也まさや

「まぁ、そう言うなって。それにしても、お前もいよいよメイドデビューか~」

 昌也が少し感慨深そうに俺の方を見る。ちょっと上から目線のような物言いに、俺はぶっきらぼうに答えた。

「いや、何で知ってんだよ」

「何でも何も、腕に付けてんじゃんかよ」

 あぁ、そういえばそうか。俺は、自分の右腕へと目をやった。こいつはメイドアンドロイドに同梱されてたバイタル管理用の端末。相互に位置が解る機能や非常時の通話なんかも出来る代物だ。

「ちなみに何型?」

「……0796型」

 俺の答えに、昌也は大袈裟に反応する。

「うわっ! ロリコンがいやがる!」

「うるせぇ! 悪いか!」

「開き直るなよ……からかいがいがねぇなぁ」

 もはや俺は自分がロリコン扱いされようがどうでもよくなってしまっていた。こんなんだからメイドアンドロイドに走った側面も無いでもない。

「お前だって4961型なんか買いやがって! ドMが!」

「ど、ど、ど、ど、ドMちゃうわ!」

 嘘つけ! お前がドMなのはもはや周知の事実だ!そんなんだから彼女も出来ないんだ! まぁ、俺が言えた口でもないのも事実なんだけど。いかん、なんだか悲しくなってきたぞ。俺はそんな気分を振り払うべく話題を切り替える。

「昌也、真面目な話、俺達の給料だとお前の場合ローンキツくないか?」

「あぁ……今日も昼飯はあんぱんと牛乳だぜ……」

「よくやったよお前も……」

 ちなみに、MID型のメイドアンドロイドは型番の数字が大きいほど値段が高い傾向にある。4000番台にもなれば下手をしたら4桁の諭吉が飛ぶレベルだ。俺は比較的安価な3桁で妥協した。それでも新車が買えるくらいは楽に飛ぶんだけどな。

 俺も一度昌也のメイドを見たことあるけど、確かに値段相応の気品があった。やっぱり人気の型番は違うぜ。

「そういえばさぁ」

 俺がパソコンの方に目を戻そうとすると、飽きずに昌也が話しかけてくる。いいから仕事をしろ、仕事を。

「今度は何だ」

「最近見つかった新種のウイルスって聞いたことあるか?」

 何だか昌也らしからぬ話題が口から飛び出した。面白そうだから聞いてやろうじゃないか。

「ウイルス?」

「何でも、アンドロイドに感染する奴でさぁ」

「ほーん」 

「感染したら、ドえらいことになるらしいぜ」

 このご時世、ウイルス感染とは珍しい。基本的にアンドロイドには外部からの攻撃に備えて防御プログラムが定期的に自動更新されるはずなんだけど。更新頻度も鬼のように多いからウイルスに感染したって事例なんかここ数年聞いたこともない。

「具体的には?」

「知らん! 俺も今朝ニュースでチラッと聞いただけだからな!」

 昌也はケラケラと笑いながらこちらを見る。本当に、話題の割には緊張感の欠片もないアホ面だ。

「役立たずが! いい加減な情報を持ってくるんじゃない!」

「まぁ、とにかくヤバイんだって、俺達だってメイドアンドロイドの主人な訳だから、他人事じゃないだろ?」
 
 昌也の顔が少し真剣な表情になる。言っていることは正論なだけに、俺も真面目に答えた。

「まぁ、近々アップデートで対策されるだろ。そんなにヤバイんなら」

「そ~だな。ま、俺達でどうこうできることじゃないし、こんなこと言ったってしょうがないか」

 そんなやりとりをしていると、俺の背後から殺気を感じた。俺は恐る恐る後ろを振り向く。

「精が出るじゃあないかぁ~ 響ぃ、せきぃ」

 ヤベェ! 課長だ!この課長、この会社では知らぬものはいないほどの手練れ。巻き舌な独特の話し方が耳に残る、今時珍しい熱血漢おとこだ。

「諸君、今はぁ~、なぁ~んの時間かなぁ?」

「紫崎興業営業部、絶賛稼働中です」

「宜しい、解っているようだなぁ。解っているならぁ、真面目に手を動かせぃ!」

「「スミマセンでした!!」」

 今の俺たちには鬼の課長の方がウイルスより何倍も驚異だ。下手したら容赦ない物理攻撃が飛んでくる。俺たちは不本意にも仕事に戻るハメになった。さあ、今日も一日、張り切っていきましょうかね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

メイドが世界を救った話

Masa&G
ファンタジー
世界を救った英雄ブラン=ハーメル。 今では王都で、すっかりぐーたらな生活を送っている。 そんな彼の世話役になったのは、 19歳のメイド、モニカ=ハブレット。 かつて英雄に憧れた少女と、 かつて英雄だった男―― 文句を言いながら洗濯をして、 ため息をつきながらも、今日も世話は続いていく。 ――やがて再び、ドラゴンの影が現れる。 これは、メイドと元英雄の少し不器用で、少しあたたかい物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

処理中です...