メイド・イン・メイド~機械仕掛けの恋人~

ゴサク

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お側に置いてくれますか?

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 次の日、俺はアミィと一緒に高天崎市で一番大きいメンテナンスセンターへと来ていた。メンテナンスセンターの中では、様々な種類のアンドロイドが行き来している。

 もちろん、俺と同じようにアンドロイドの主人の姿もちらほら見える。正直なところ、人間とアンドロイドはパッと見では違いが解らないもんだから、その景色は人間の病院と全く変わらない。

 不可抗力とはいえ、さすがに昨日のアミィはやりすぎた。今後もこの様なことがあるようだと、俺の管理責任が問われかねない。アンドロイドの不始末は、持ち主が責を負うよう法にしっかり定められているからだ。

 アミィを担当の係員に預け、部屋の前の長椅子に腰かけて天井を仰ぎながらしばらくボーッとしていた。

「何もなければいいんだけどな……」

 いや、ここまで来て何もないわけはないんだけど、口にしないと不安で押し潰されそうになるもんだからつい口走ってしまった。

 しばらくすると、自動ドアか開く音と共に部屋の中から係員が出てきた。その様子はあくまで事務的、俺の不安は加速する。

「響さん、こちらへ」

 俺は部屋の中に案内され、そこで担当の整備士から絶望的な説明を受ける。

「どうやら人格プログラムにバグが発生しているようですね。性格が攻撃的になり、日常生活に支障が出るということは稀にあることなのですよ。こういったケースの場合は複雑な人格プログラムの一部分だけの修正は非常に困難なのが現状です。私達としては取り返しがつかないことが起きる前に初期化する事をお勧めします」

 初期化。

 馬鹿な。

「そんな! 何とかなりませんか!?」

「難しいですね、まぁ幸いまだ購入されてから間もないようですし、こういった決断は早いほうがいいと思いますよ。何かあってからでは遅いですからね」

 野郎、好き勝手いいやがる。殴りかかりたい気持ちだけど、整備士の言うことも最もだ。何かあってからでは遅いという意見は俺には看破できない。

「解りました……もう少し考えさせてください」

 俺は沈痛な気持ちで顔を伏せながら部屋から出た。部屋の前ではきれいにクリーニングされたアミィが待っていた。

「どうでしたか? ご主人様」

 アミィは俺のもとに駆け寄って、こちらの様子を伺う。その目は俺の答えを待ちわびて不安そうにしていた。

「いや、どこも悪くないってさ」

 俺は無理やり作り笑いを浮かべながら、アミィに嘘をついた。そこまでしてでも、アミィが心配することだけは避けたかった。

「そうでしたか……それならよかったです」

 アミィの表情は、いくぶんか安心したようにも見えたけど、いつもの笑顔からしたら程遠かった。

「それじゃあ、帰ろうか、アミィ」

「はい、ご主人様」

 俺達はそのまま二人並んで家路についた。その足取りは重く、部屋に着くまで俺とアミィは、ほとんど会話を交わすことは無かった。

 ………

 夕飯を終え、俺は明日の仕事に向けて早めに休もうとした。しかし、アミィが俺に何か話したい事があるようだった。

「ご主人様」

 いつもの笑顔はない。アミィはただ無表情で見つめている。俺はそのただならぬ気配に背筋を正して、アミィに向き合う。

「今日の先生のお話なんですけど……ダメ、だったんですよね?」

 どうやらアミィには隠しきれなかったようだ。俺は今日整備士に説明された内容をアミィに伝えた。

 それを聞いたアミィは俺の方を真っ直ぐ見て言った。その目は、俺の目を捕らえて離さなかった。

「私、大丈夫ですよ。短い間でしたけど、私、幸せでした」

 俺は黙ってアミィの話を聞く。俺を見るアミィの瞳が見開かれ、次第に、俺を優しく慈しむような目に変わっていく。

「次にご主人様とお会いする時も、お慕い申し上げますから。だから、泣かないでください、ご主人様」

「え……?」

 俺の頬を、涙が伝う。そして、アミィは俺に言った。

「今日まで、私に良くしてくれて、本当にありがとうございました! またお会い出来る日を楽しみにしてますから! さよならは言いません! だって、私は、いつまでも、何があっても、ご主人様のメイドですから! 大丈夫ですよ! ご主人様!」

 アミィの顔はとびっきりの笑顔を浮かべていた。俺を悲しませないように、気張って、無理して。そんなアミィのいじらしい姿を見た俺の自制心は、限界だった。

「アミィ!!」

 俺はアミィを抱き締める。そして、俺は恥も外聞もなく泣き叫びながらアミィを抱き締める手に力を込めた。

「嫌だ! 俺は離したくない! 離すもんか! アミィは俺の家族だ! 絶対に、どこにも行かせない! だから、アミィが我慢することなんか何もないんだ!」
 
 そうだ、アミィは俺の家族だ、もう二度とたまるものか! 俺の叫びに、アミィの目からも涙が伝う。やっぱりアミィは我慢していたんだ。

「ご主人様……嬉しいです……何もできない……お役に立てない……それどころか、私が側にいるだけで迷惑をかけるかもしれない……そんな私でも……お側に置いてくれますか?」

 俺はアミィの言葉に何度も頷いた。アミィはアンドロイド、アミィが感じているこの気持ちはプログラムされた作り物、そんなことは解っている。それでも、俺は失うことが恐い、恐いんだ。

「あぁ……! あぁ……! いつまでも、俺の側に居てくれ……! 居て欲しいんだ……! アミィ……!」

 そうさ、法が何だ、責任が何だ、何だってしてやるさ。大丈夫、何かいい解決法があるはずだ。次の日、俺は仕事を休み、何かいい方法が無いか死に物狂いで探し続けた。
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