メイド・イン・メイド~機械仕掛けの恋人~

ゴサク

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嫌いになりましたか?

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「……そろそろか」

 アミィはポツリとつぶやいた。その声は、何だか名残惜しそうなようにも聞こえた。

「時間だ、悪いな。それじゃあ、コイツらの後始末は頼んだ……ぜ……」

 アミィの目から生気が抜け、表情が消えてしまった。そして、アミィの動きが魂が抜けたように、完全に止まった。

 しかし、すぐにアミィの目に生気が戻る。よかった。見た感じ、どこにも異常はなさそうだ。

「あ……」

 アミィは虚ろな目で俺の方を見つめている。そして、思い出したかのように眼を見開き、アミィは俺の傍へと駆け寄る。

「ご主人様ぁ~!!」

 アミィの顔は、一瞬で涙でぐしゃぐしゃになってしまった。その顔からは、さっき見せた自信たっぷりのアミィは完全に消え失せていた。
 
「大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!? 痛い所は無いですか!?」

 アミィは目に涙をたっぷりと浮かべながら、早口で捲し立てる。その声は、こっちの方が心配になるくらい悲痛なものだった。

「あぁ、大丈夫、何ともないよ、アミィ」

 蹴られた所からは大分痛みは引いていた。外傷も殆ど無いようだ。俺はアミィが心配しないように、アミィの頭を優しくポンポンと叩く。

「よかった……よかったです……ご主人様……!」

 アミィはギュッと目を閉じながら、俺の腰元に抱きつく。よかった、さっきまでとは違う、いつものアミィだ。

 俺はふと、周りの状況に目をやった。周りは死屍累々の惨状、このままここにいたら何があるか解ったものじゃない。

 さっきアミィは『後始末は頼む』と言ってたけど、俺はこの場から逃げることにした。幸い周囲に人気は無く、連中もすぐに起き上がる事が出来るだろう。服のクリーニング代が気になるところけど、この際こいつらには泣いてもらうことにしよう。

「逃げるぞ! アミィ!」

 俺はアミィをお姫様だっこで抱えて走り出す。いち早くこの場から離れたい一心で、俺はついこんなことをしてしまった。

「ふぇっ? ご主人様!?」

 アミィは俺のいきなりの行動に、目を見開いて驚いている。それでも、アミィは俺にされるがまま、黙って俺に身を任せてくれた。

 かわいい女の子にお姫様だっこをしてあげる、これは誰しも一度は憧れる男の夢だろう。本当に、こんな状況じゃなかったら至福の時間なんだけどな。

 それにしても、アミィの体は、本当に軽い。この軽い少女が先程の大立回りをやってのけたのだ。

 俺は、さっきの出来事が今でも信じられない。荒々しい口調、低い声、自信に満ちた笑顔。まるで、全くの別人を見ているようだった。

 やっぱり、後でアミィにこの事について聞かないといけないよな。俺はアミィを抱えたまま走り続け、そのまま家路へとついた。

 …………

「落ち着いた? アミィ」

「はい、お気遣いありがとうございます、ご主人様」

 俺達は部屋に戻り、お茶を飲みながら顔を見合わせていた。アミィの顔はやっぱり何だか不安そうだけど、俺は意を決してアミィに尋ねた。

「アミィ、色々あった後で悪いんだけど、さっきの事、覚えてる?」

 アミィは恐る恐る口を開く。その表情は、相変わらず暗いままだった。

「はい、ぼんやりとですけど、私、何とかしなきゃって思って、気づいたらあんな事に……まるで自分が自分じゃないみたいで、ちょっと怖いです」

 そうだろうな。確かにはあの時のアミィは普段とはかけ離れていた。

「……嫌いになりましたか?」

 アミィはポツリとつぶやく。その声は、何だか少し震えているようだった。

「あんな乱暴な私、嫌いになりましたよね?」

 そう言ったアミィは、うつむいて今にも泣き出しそうだった。止めてくれ、アミィ、俺はアミィのそんな顔は見たくない。

「そんなことないよ、今日は助かったよ。危ないところを助けてくれてありがとうな、アミィ」

「本当ですか? 本当に、私のこと、嫌いになってませんか?」

 アミィは上目遣いで俺を見上げる。涙で光る不安げな目、不謹慎だけど、可愛い、可愛いすぎる。

 俺は思わずアミィを抱き締めた。いじらしいアミィの姿に、抱きしめずにはいられなかった。

「うん、安心して、アミィ。俺はどんなアミィでも大好きだから、な?」

「ご主人様ぁ……」

 アミィは俺の胸のなかでしばらく泣き続けた。俺はそんなアミィを、泣き止むまで抱きしめ続けた。

 今、俺が心配しているのは全く別の事だった。アンドロイドは人間を傷付けられないようにプログラムされているはずなのだ。

 これは現代社会の大原則。一般社会を生きる上で当然の知識だ。俺は一抹の不安を胸に、アミィを抱き締め続けた。
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