幸せになるための絶対条件

白夜

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16話 幸せを願う

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16話 幸せを願う


和希side

『ただいまぁ~』

佑くんの声が聞こえると、秀明は一目散にその声のする方へ走って行った。


ん?

その光景は…俺に違和感を抱かせただけじゃなくて、

何とも言えない不信感さえも抱かせた。

俺は、夕飯の準備をしながら、横目で、コソコソと話をしながら秀明の部屋へ連れて行かれる佑くんを見ていた。


これは…昼間見てしまった

【なにわや】の出来事となにか関係があるのだろうか?

そもそも、あれは…佑くんだったのだろうか?

答えはわかっている。

あれは確かに佑くんだ。
今日着ていたスーツと全く同じだった。
服装まで全く一緒の、他人の空似はいないだろう。

やはり、あれは佑くんで間違いない。
そして、一緒にいたあの男も…やはり、あの公園にいた御曹司で間違いないんだろう。



夕飯の準備が整って、
テーブルには夕飯が並んで子供たちは席についていた。

あつしは熱がまだ少しあって、お粥をさっき食べさせて、今は静かに眠っている。


秀明の恋人の直は、仕事で遅くなるらしい。

あとここにいないのは…佑くんと秀明。

『佑くんと秀明を呼んで来てくれる?』

しっかり者の小学生のリーダー的存在の飛羽(とわ)に言うと

『わかった。』
飛羽は、秀明の部屋へ向かった。

しばらくすると、飛羽と秀明と佑くんが来て、何事もなかったかのように、席についた。


『いただきますっ』

食事が始まると、俺は秀明と佑くんを交互に見た。
ふたりは時折、視線を合わせ…何か言いたげな様子で、いつもと違うってことだけはよくわかった。

いつもの様に、食べながら子供たちの学校での話を聞き、みんなの話が終わると俺は佑くんに問いかけた。

『あのさ、佑くん。今日さ…お昼何食べた?』

『え?あ…なんだったかな?コンビニだったかな?』

あれは昼頃の出来事だった。
昼食は【なにわや】で食べたと、言って欲しかった。

隠す必要がないことだと、俺に話してくれれば、俺の不安もなくなるはずだった。

けれど、明らかに隠した。




『そっかぁ…【なにわや】に入って行った人が、佑くんに似てたような気がしたんだけど、気のせいかな?』

『えっ!』
『えっ!』

佑くんと秀明が同じ反応をする。

なんで秀明までそんな反応をするのかわからない。

『イルワケナイダロ、ミマチガエジャナイカ?』

いやいや…嘘下手か…。


その反応でよくわかった。
あれはやっぱり佑くんだ。

そして、嘘をつくということは…俺に知られたくないことがある…

俺に隠さなければいけないことなんだな?


そういう事…だよな。

俺の心は、静かにショックを受けていた。
あの御曹司カッコよかったし…

俺にないもの全部持ってるし…



『そっか…見間違いか…ごめん。』

悲しいというよりも…怖かった。
佑くんが俺のそばから居なくなるのが、怖くて…

いつかはなくなってしまう【幸せ】

…佑くんがいなくなってしまうのが怖かった。


俺は、こんなにも【幸せ】に慣れてしまっていたのだと、胸が痛んだ。


毎日好きな人が近くに居て、いつでも触れられる距離で…
【好き】をいつでも感じられて…
もしかして、この【幸せ】がずっと続くんじゃないかって思ってた。

今までいた誰よりも…佑くんが好きだから…


【トクベツ】な存在の佑くんだから、今まで見たいに大切な何かを失う事なんて起きないなんて

幸せに溺れてた…


でも、幸せは突然なくなる。

俺は知っている。

あの日、公園であの御曹司と佑くんが出会ったのが運命なら…

きっと、俺の【幸せ】な時間は、ひとときの幻で

俺にひとときでも【幸せ】を与えてくれた事を感謝しなければいけないのだ。

佑くんの【幸せ】を願うなら…

俺は、静かに身を引くべきなのだ。



『和希?おい!和希!』
向かいに座っていた佑くんが、俺の顔を覗き込んだ。

『あ…なんでもない。こうやって、みんなでご飯食べられるのって幸せだなぁって思ってさ。…忘れないでおこうって思っただけ…』


『は?何言ってる?急にわけわかんない事言い出して、どした?』

たぶん、俺…すげー暗い顔をしていたんだと思う。

佑くんが
『大丈夫!俺がみんなの幸せ守るから!』
って、言った。


その言葉の意味を、この時の俺は知るはずもなかった。

ただ、佑くんを失ってしまうかもしれない現実から、逃げたかった。


いつまでも続く【幸せ】な夢を見ていたかった。

俺に残された【幸せ】って、何だろう。

佑くんが【幸せ】をくれていた。
でも、佑くんの【幸せ】ってなんだ?

俺は佑くんの【幸せ】になれているのか?

施設の子供たちが、親がいなくても立派に成長して【幸せ】になってくれることをいつも願ってる。


そんな風に、俺は佑くんの【幸せ】を願えるのか?

佑くんの【幸せ】がここにない何かだとしたら?

俺は、佑くんを手放すことが出来るのか?

知ってしまった佑くんと過ごす時間の尊さを、今、手放せるのか?

俺は、佑くんの幸せを…願う。



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