幸せになるための絶対条件

白夜

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19話 執事

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19話 執事


鷹司駿side


夢を見た。
久しぶりに、拓人が俺に笑いかけて、昔みたいに一緒に遊んでいる夢だった。

懐かしい…。

昨日キスをして、拓人を泣かせてしまった…。
なんだか少し罪悪感…


まさか泣かれるなんて思ってなかった。

誰よりもずっと長く近くに居て、誰よりも俺の事を分かってるって思ってたから…

まさか、泣くなんて…

たかがキスで、泣くか?

ある程度顔さえよければ誰とでも出来るだろ?

俺の顔が好きじゃないのか?

いや、そんなわけない!

俺だぞ?

この俺とキスしたい奴なんて、山ほどいるのに?

それとも、嬉しくて泣いたのか?


いや、あれは嬉しくて泣いたって感じじゃなかった


頭の中は、拓人の涙の理由ばかりを探していて、完全にそれしか考えられなくなってた。




トントンって、寝室のドアがノックされた。

『おはようございます。駿様、朝食の準備が出来ました。』

いつもと変わらない拓人の声に安心感を覚えた。

昨日泣かせてしまった罪悪感は、ほんの少し薄れた。

―――よかった、いつも通りだ


ホッと一息ついてから、
『わかった…今、行く』
平静を装って、支度を整えた。

ドアを開けると、いつものように、拓人が立って頭を下げていた。

表情は見えない。

『…シーツ…変えさせといて。』
あえて冷たく言い放った。

『あ、それなら自分が…』
頭を下げたまま、拓人が言った。


『他の者にさせろ!一緒に来い!朝食にする』

『は…はい。』

拓人に汚れたシーツを変えてもらうのが、なんだか少し恥ずかしかった。

拓人をおかずになんて…バレる事は無いけれど…。

なんだか、拓人にはシーツ変えて欲しくなかった。
夜は住み込みの拓人しかいないが、昼になればお手伝いさんが2~3人来て、家事をする。

朝食が準備されている席に着いて、
『…拓人、一緒に食べよ』と、伝えた。


『……いえ…自分は…けっこうです』
拓人は、表情を変えずにさらりと断った。

俺の誘いを断るのは、こいつくらいなものだ!


『………わかった。』
俺も、あえてそれ以上は何も言わなかったけれど、なんだか不満で苛立つ自分がいた。


今までそれが当たり前だったのに、なんで気になるんだ?


それに、拓人は一体いつ朝食を食べているのだろう…?
そんな当たり前の疑問さえ、今まで抱かなかったのが不思議なくらいだ。

朝食を終えて、拓人の運転する車に乗り込んだ。

いつものように、今日のスケジュールが伝えられて、いつも通りオフィスに向かう。


『いつものホテル予約しておきました。プロの方の資料を用意しておきましたので、目を通して下さい。』

一瞬何のことかわからなかったが、すぐに昨日俺が言った【男を抱きたい】って事だと理解した

プロ…か。

用意された資料に目を通した。

拓人が用意しただけあって、どれも俺の好みの顔で整った美しい顔をしていた。
俺の好みを熟知している拓人らしいチョイスに笑えた。

『さすが…拓人だな』
苦笑している自分に驚く。

『ありがとうございます』

その、【ありがとうございます】には、何の感情も感じられなかった。


男たちのプロフィールには受と両と書かれていて…
あぁ、男には受け側と攻め側があるのだと、今更ながらに気が付いた。

『なるほど…抱かれる側だから受けか』

思わず、声に出してしまったが…

拓人は何の反応も見せない。

両と言うのは、受けも攻めも両方と言う事なのだろう。相手によって変えられる…または、同じ相手でも両方イけるという事なのだろう。

一通り資料に目を通したが…イマイチ…ピンと来ない。

『拓人が選んでおいて、別にどれでもいい』

資料を投げ出して、窓の外の流れる景色を見た。

『…どれでも、ではありません。誰でもいいが正解です。』

時々拓人はすごくうるさい!
人に対する接し方には特に…うるさい!

『はいはい、誰でもいい…どれも、ピンとこないから。』

『誰でもいい、誰もピンとこないですね。かしこまりました。私が選んでおきます。』

オフィスに着くまでの時間、スマホで【男同士】を検索すると、すぐさま、たくさんの行為が映し出された。

画像や解説を見て、まぁなんとなくわかった。

でも、そんな画像を見ても…気分が盛り上がらないのは…なぜだろう?


やっぱり、俺…男は無理なのかも?って思う。


オフィスに着いて、仕事を始めると、一日というのはとても早いもので、気が付けばもう夕方になっていた。

『お夕飯はどうなさいますか?いつもどおりホテルのルームサービスになさいますか?』

執事の口調で拓人が俺に問いかける。

『…ん~。別に…食べたくないけど…。拓人は、何が食べたい?』

『えっ?』
真っ黒な瞳をまん丸くして、驚いている。

『この前さ、羽柴佑一郎と三人で食べたじゃん?あれ、すごく楽しかったからさ。』

嘘ではない、でも、羽柴の事が頭にあったかと言われれば、嘘になる。
頭にあったのは、昨日の泣き顔の拓人だった。
まるで、ご機嫌でも取るみたいに拓人を誘ったのだ。


『…あれは…羽柴様がいらっしゃったからです。』

『いいから、言えって。命令だ!』
拓人は、俺の命令に必ず従う。

そう教育されているからだ!

渋々答える拓人の表情からは、何も読み取れない。

『…焼肉…ですかね…』

『じゃ、行こう!』

『えっ?ええ?』
戸惑う拓人が可愛くて

『一緒に食べようって、言ってんの!!ほら!行こう拓人!』

たまには、執事じゃなくて…拓人のままで、昔みたいにしてもいい。

楽しかった、あの頃みたいに、執事としてじゃなくて、友達の拓人として、食事をしてみないか?


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