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10話 誰よりも知っている
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惇希side
『ちょっと!ちょっと待って!なに?その自然なやり取り?』
驚いた雪は、俺たちの顔を交互に見て言った。
『ん?なにが?』
俺と透弥は顔を見合わせて、お互いなんの事を言われているのかさっぱり分からなかった。
そこで、大輝がはぁ~っと大きくため息をひとつ吐いて
『あのさぁ~、まぁ、初めて見たらそうなるよ。このふたりずっと一緒にいるから、家族みたいにお互いの好きなもんとか分かってて、しれ~っと交換してるの。俺も、初めて見た時びっくりしたわ!しかも【コレいる?】とかの会話もなく、しれ~っとやるからさ、ちょっとびっくりするよね?普通の人はそれ見たらびっくりしちゃうの!!』
『え?そうなの?』って、透弥が言って、もう一度、俺と透弥は顔を見合わせた。
俺たちにとっては、別に普通の事だったから、全然気が付かなかった。
でも、確実に雪の機嫌は悪くなっていて、少し口をとがらせてひたすら無言で、白米を口に運んでいた。
『違うって、ほんとに!違うって!!こいつが渡してくんの!だから、俺も渡しただけだから。いっぱい食べないと、腹減ったらこいつウルサイだろ?腹減った~って。だから、いっぱいたべさせてるだけ!!』
なんだか、訳わかんない言い訳して
『そうなの?』って、きゅるきゅるの大きなお目目の雪が、透弥の顔を覗き込んだ。
『まぁ~空腹は耐えられないなぁ』って、透弥が言うと
『じゃあ、僕のトマトあげるね♡』って、機嫌を直した雪が嬉しそうに言った。
雪が透弥にトマトを渡そうとしていると
『雪っ!トマトも食べなくちゃだめだって、いつも言ってるだろ!嫌いなものも食べなくちゃだめ!』
大輝が、お母さんみたいな口調で雪を叱った。
俺は、昨日の大輝の言葉を思い出してた。
【何度も言った】
大輝は、何度も雪に好きを伝えていて、そしてフラれてる。
それでも、こんなにいい関係を続けられている…
すごい、ふたりだ!
普通そんな風になれないだろ?
断られたら、気まずくて、今までみたいになれないのが普通だろ?
余程、お前らの方が普通じゃない!
でも…俺も、透弥に【好き】伝えていたら?って考えてしまう。
今とは少し違ってたのかな?
少なくとも、こんな状況には、なっていなかったのかもしれない。
なんて思っても、…もう遅い。
『だいちゃんはうるさいっ!昔っから、お母さんみたい!』
雪は透弥に隠れる様に、大輝の視線を避けた。
ズキっ…ズキ…
ふたりの距離が近づく度に、胸がズキズキと痛んで、胸の奥のもやもやが込み上げてくる。
ガタンっ。俺は堪らず立ち上がって
『ご馳走様、俺、先に部屋戻ってるから!』
『え?じゅんくん?体調悪いの?ねぇっ!』
透弥が心配そうに俺を見つめて
最近、透弥にそんな顔ばっかさせてる…
『違うって!初日だからさ、気合入れて、ビジュ整えとかないとって思ってさ』
お道化て見せると
『ははっ。じゅんくんもビジュ気にするんだぁ』って、雪は笑った。でも、透弥は全然笑ってなくて、嘘を見透かされてるみたいで足早にその場を去った。
俺が部屋に入ろうとすると
『じゅんくんっ、はぁはぁっ…』
大輝が後を追ってやって来た。
『速いって…どんなスピードで歩いてんだよ…はぁっはぁ』
息を切らした大輝が言った。
胸に手を当てて呼吸を整えた大輝が
『ごめん、なんか…俺、上手く出来なくて。あのふたりがイチャイチャしないようにって思ってたんだけど…うまく阻止できなかった…ごめん』
俺に謝ってきた
『大輝が謝ることでもないし、気にしてないよ。でもさ、大輝も、よく耐えてるよな』
『しぶといのが俺だから!雪を一番知ってるのは俺だと思ってるからさ!』
『そうだな…きっと、大輝が一番雪の事知ってるんだろうな?…俺もきっと、透弥の事よく知ってる。でも、透弥は雪を選んだ…』
『じゅんくん、それは違うって!』
大輝は俺を少し睨んで
『じゅんくんは、選ばれる選択肢にまだは入れてない!そうだろ?』
…大輝の言う通りだと思った。
『でも…もう、遅い。もういいよ。大輝には悪いけど、あのふたり幸せそうやし。透弥と雪…お似合いなのかもしれない…。』
ズキっとまた、胸が痛んだ。
自分で自分を虐めるような発言に、胸が痛くなって、俺の中の綺麗な薔薇の芽はすくすくと育っていた
俺の胸の中で苦しい恋の花の芽が、すくすくと育っていることを…
俺は、知らない。
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