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第1章
忘れちゃうの…
とーさまとにぃ様が出ていった談話室で僕はグズグズと涙と鼻水を垂らしながら、立っていられなくて座り込んで泣いている。
「う゛…ぐす…ぅぅ」
「ルナイス。」
唯一部屋に残っていたノヴァに名前を呼ばれて顔を上げると、真剣な表情をしたノヴァが目の前に僕と同じようにしゃがみこんでいた。
「公爵様がなぜあれほど叱ったのか分かるか。」
「ぅ…ぼ、僕が…僕が勝手にぃ…勝手にぃ…危ないこと、した…からぁ」
ノヴァの問いに答えるとノヴァはコクリと頷いた。
「そうだな。しかし一番公爵様が怒った理由はそれではないと思う。」
「??」
「ルナイス。お前は私達に闇魔法が使えることを只黙っていただけでなく、意図的に隠していただろう。大切なこと…それも命に係わることを隠されては助けたくても、守りたくてもそれができない。特にアーバスノイヤー家は命を狙われることの多い一族だ。王族の中にもアーバスノイヤーを煙たがっている連中が居る。わかるな?」
ノヴァの言葉に僕は更に涙が溢れた。
3歳になる前からとーさまには何度も僕に何かあったら悲しいと、危険なことはしないでって言われてきた。
その度にとーさまが傷つくのは嫌だから、危ないことはしないでおこうって思うのに…僕は自分に何かがあって死んでしまったらとても悲しむ人が居るってことを忘れてしまう。
前世の僕は、死んでも別に悲しまれるような人間ではなかった。
両親は悲しむというよりも、きっと葬式が面倒くさいって思ったと思う。
世間体を気にする人達だからきっとお葬式は開いて悲しんでいるふりはしてくれるだろうけど…。
仲の良かった友達はいたけど、大勢いる友人の中の一人にすぎない僕の死を本当に悲しむ人何ていなかっただろう。
「死んじゃったね」くらいの存在だ。
そんな前世の記憶が邪魔をして、僕は僕が死んでしまって誰かが物凄く悲しむってことを忘れてしまう。
どーにかしたいって叱られる度に思うんだけど、無意識だからどうしようもなくて…。
「ルナイス。今思っていることを素直に話して。」
ぐずぐず鼻を鳴らしながら俯く僕の頬をノヴァの両手が持ち上げて僕とノヴァの目が合う。
今の僕のこのぐちゃぐちゃな感情をどう話したらいいのか分からなくて黙り込む僕をノヴァが呼ぶ。
「上手く話せなくていい。」
「…忘れちゃう。僕…むかしの僕には…僕が死んじゃって悲しんでくれるよーな人いなかったもん。……だから、だから…わざとじゃないの…忘れちゃうの。」
ルナイスとして生を受けてまだ3年だからなのか、前世の僕の気持ちの方が強いんだと思う。
昔の僕には助けてくれるような大人は近くに居なかった。
「大丈夫?」何て口にしても結局助けてくれるような人は一人もいなかった。
面倒臭そうだと思うとすぐに僕から離れていった。
自分のことは自分でどうにかしないと生きていけなかった。
そんな人生に疲れて…もう自分が生きていても死んでもどうだってよくなった。
自分さえも、自分のことがどうでもよくなった。
ルナイスとして生きている年月よりも、僕の記憶の中には前世の僕の記憶の方が多いから…だから前世の僕の気持ちが強く出てしまうのだと思う。
「ルナイス。」
どんどん昔の自分に引っ張られて、暗い闇の中に堕ちていきかけたところでノヴァに名前を呼ばれてハッと我に返る。
「昔のルナイスはどんな人だった?」
思いがけないノヴァの言葉に目を見開く。
僕に僕じゃない記憶があるんじゃないかって話していたことがあるけど、まさか本当に信じて…しかも昔の僕のことを知りたがるだなんて思っていなかった。
そこで僕はふっと気が付いた。
ルナイスとしてこんなに気にかけてもらっているのに…僕は昔の僕に皆興味ないんだって…悲しく思っていた。
この人達も、大切に思っているのはルナイスで…前世の僕はどうでもいいんだって…心のどこかで寂しく思い捻くれていた。
今ノヴァに昔の僕のことを聞いてもらって、僕は驚きと一緒に嬉しく思い期待を抱いている。
「う゛…ぐす…ぅぅ」
「ルナイス。」
唯一部屋に残っていたノヴァに名前を呼ばれて顔を上げると、真剣な表情をしたノヴァが目の前に僕と同じようにしゃがみこんでいた。
「公爵様がなぜあれほど叱ったのか分かるか。」
「ぅ…ぼ、僕が…僕が勝手にぃ…勝手にぃ…危ないこと、した…からぁ」
ノヴァの問いに答えるとノヴァはコクリと頷いた。
「そうだな。しかし一番公爵様が怒った理由はそれではないと思う。」
「??」
「ルナイス。お前は私達に闇魔法が使えることを只黙っていただけでなく、意図的に隠していただろう。大切なこと…それも命に係わることを隠されては助けたくても、守りたくてもそれができない。特にアーバスノイヤー家は命を狙われることの多い一族だ。王族の中にもアーバスノイヤーを煙たがっている連中が居る。わかるな?」
ノヴァの言葉に僕は更に涙が溢れた。
3歳になる前からとーさまには何度も僕に何かあったら悲しいと、危険なことはしないでって言われてきた。
その度にとーさまが傷つくのは嫌だから、危ないことはしないでおこうって思うのに…僕は自分に何かがあって死んでしまったらとても悲しむ人が居るってことを忘れてしまう。
前世の僕は、死んでも別に悲しまれるような人間ではなかった。
両親は悲しむというよりも、きっと葬式が面倒くさいって思ったと思う。
世間体を気にする人達だからきっとお葬式は開いて悲しんでいるふりはしてくれるだろうけど…。
仲の良かった友達はいたけど、大勢いる友人の中の一人にすぎない僕の死を本当に悲しむ人何ていなかっただろう。
「死んじゃったね」くらいの存在だ。
そんな前世の記憶が邪魔をして、僕は僕が死んでしまって誰かが物凄く悲しむってことを忘れてしまう。
どーにかしたいって叱られる度に思うんだけど、無意識だからどうしようもなくて…。
「ルナイス。今思っていることを素直に話して。」
ぐずぐず鼻を鳴らしながら俯く僕の頬をノヴァの両手が持ち上げて僕とノヴァの目が合う。
今の僕のこのぐちゃぐちゃな感情をどう話したらいいのか分からなくて黙り込む僕をノヴァが呼ぶ。
「上手く話せなくていい。」
「…忘れちゃう。僕…むかしの僕には…僕が死んじゃって悲しんでくれるよーな人いなかったもん。……だから、だから…わざとじゃないの…忘れちゃうの。」
ルナイスとして生を受けてまだ3年だからなのか、前世の僕の気持ちの方が強いんだと思う。
昔の僕には助けてくれるような大人は近くに居なかった。
「大丈夫?」何て口にしても結局助けてくれるような人は一人もいなかった。
面倒臭そうだと思うとすぐに僕から離れていった。
自分のことは自分でどうにかしないと生きていけなかった。
そんな人生に疲れて…もう自分が生きていても死んでもどうだってよくなった。
自分さえも、自分のことがどうでもよくなった。
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「ルナイス。」
どんどん昔の自分に引っ張られて、暗い闇の中に堕ちていきかけたところでノヴァに名前を呼ばれてハッと我に返る。
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思いがけないノヴァの言葉に目を見開く。
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そこで僕はふっと気が付いた。
ルナイスとしてこんなに気にかけてもらっているのに…僕は昔の僕に皆興味ないんだって…悲しく思っていた。
この人達も、大切に思っているのはルナイスで…前世の僕はどうでもいいんだって…心のどこかで寂しく思い捻くれていた。
今ノヴァに昔の僕のことを聞いてもらって、僕は驚きと一緒に嬉しく思い期待を抱いている。
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