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第2章
嬉しいお誘い
お食事会をした日から一ヶ月と少し。
僕の体の中の魔力循環もだいぶ良くなり、国による事件の処理も落ち着いた。
学園にも通常通り行けるようになり、朝、にぃ様と一緒に馬車に乗り通う平和な日常が戻ってきた。
そんな穏やかで寒さを感じ厚着をするようになった今日。
にぃ様達が学園を卒業する。
「…どうしたルナイス。」
「…今日でにぃ様と学園へ通うのが最後だと思うと…胸がぐぅってなります。」
馬車の窓からお外を見ていた僕、おそらくすっごく微妙な顔をしていたのだと思う。
にぃ様に声をかけられて、きちんとお答えしたいのだけど…寂しいだけではないような複雑な心境を上手く言葉にできなくて、返事も微妙になってしまう。
「あぁ…僕も寂しい。」
「っにぃ様!」
にぃ様が″僕″って言う時はとってもプライベートな時。
寂しそうに微笑むにぃ様に堪らない気持ちになって思いっきり抱き着いてしまう僕だけど、日頃鍛えているにぃ様は揺れることなく僕を受け止め、抱きしめ返してくれる。
しばらくそのままじっと抱擁を交わし、従者からのノックでお互いの体を離した。
「よぉ、アーバスノイヤー兄弟。」
「あぁ。」
「ご機嫌よう、ヒュー様。」
馬車を降りてすぐに僕達を待っていたらしいヒュー様に挨拶をすれば右手を軽く上げてよっとされた。
いつもはもうちょっと貴族同士っぽい感じで挨拶をするけど、今日は周りに人が少ないこともあってかすごくフランクな感じだ。
「学生最後の日なんだ。今日くらい只の同級生として過ごしてもいいだろ。」
二人のいつもと違う雰囲気に首を傾げる僕にヒュー様が二ッと笑って理由を教えてくれる。
なるほどっと僕が納得したところで二人が歩き出したので、僕もついて足を進めた。
にぃ様は卒業後、アーバスノイヤー家の正式な後継者と公表されて領地の運営に関わっていくことになっている。
しばらくは他領地へ挨拶兼視察へ行ったり、とーさまと一緒に遠出されることが多いのでとーさま含め顔を合わせる機会がぐっと減る。
寂しいけれど、絶対に必要なことだから我慢だ。
ヒュー様もヒル家の後継者として、にぃ様と同じように忙しくなるみたい。
そして二人とも父親と同じ近衛騎士団、王国騎士団に入団することも決まっている。
騎士団は実力主義だから入団するのはにぃ様達が望んだことで、実力があると判断されたから。
とーさまが現在やっていることだけど…改めて考えると領地運営に騎士団業務に、すっごく大変なことだ。
これから取り組んでいくにぃ様を尊敬するけれど、それ以上にとーさまへの尊敬度がぐぐぐーっと上がったことは言うまでもない。
そんな多忙な日常を送る前に只の学生として過ごすっていうのはすごく素敵なことだと思う。
それに僕は只の友として接する二人の雰囲気が大好きだ。
にぃ様は僕に接するよりもヒュー様への反応は少しばかり冷たいように思うけど、信頼していることが言葉のところどころから感じ取れるし、ヒュー様だって揶揄うような言い方をよくされるけれど、同じようににぃ様を信頼していることが分かる。
こんな風に穏やかに話す二人を見るのは、もしかしてこれが最後になってしまうんだろうか…
そう思うと何だか切ない。
「ルナイス。今日は昼を一緒にとって、帰りも共に帰ろう。」
ふっと後ろを歩く僕を振り返ったにぃ様がそんなことを言ってきたので驚いて立ち止まる。
校舎が離れていたり、にぃ様が忙しかったり、僕があんまり学園に通えなかったりで、学園でにぃ様と接触する機会は思っていたよりも少なかった。
今日も同級生と最後の学生生活を過ごすのだと思っていたから、予想もしていなかったお誘いを理解した途端に、顔がだらしなくふにゃっとしてしまう。
「言葉を発さなくても返事が是であることが分かるな。」
「癒される。」
「確かにな。」
言葉が出てこないくらい嬉しくてコクコクと何度も頷く僕を見て、2人が色々言っているけれど、思考がふわふわとしている僕にはあんまり意味が理解できなかった。
でも良い評価を貰えているのだなってことは理解したので、僕の顔はさらにだらしなくなってしまう。
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