211 / 427
第4章
庭師の正体
家の前に着いて馬車から降りた僕は扉を開けた先の光景に口を開いたまま固まった。
扉を開けた先にはまるで前世の開店祝いのように大量の花が飾られていた。
これはノヴァも知らなかったようで、ノヴァも無表情のままじっと花を見て固まっている。
「これは?」
「レドモンドが用意したようです。目出度い日だから、と。」
僕の呟きにすぐに確認を取ってくれていたヨハネスが答えてくれる。
とーさま達から特別植物に愛を持った人物で、少々癖があると聞いていたが…なるほど。
「見たことがない花が沢山あるね。」
「…ルナイス…あれは精霊が住む森にしか咲かない花だ。治癒効果がある。…レドモンドを呼んでくれ。」
ほんのり光っているようにも見える花達を興味深く眺めていると、ノヴァがそれらは精霊の森にしか咲かない貴重な花であることを教えてくれた。
近くに居たたま(アーバスノイヤー家の伝達係からこの屋敷の使用人になった。妹のポピーも一緒。)にレドモンドを連れてくるよう告げたノヴァは僕の腰に手を添えて、近くの部屋へと誘導した。
しばらく用意されたお茶を飲みながら待っていると、レドモンドを連れた たまが部屋の扉を叩いた。
「レドモンド、そこに。」
「…失礼します。」
ノヴァが向かいのソファに座るよう促し、レドモンドが戸惑いながらも着席する。
「玄関に飾ってあった花全て…お前が用意したのか?」
「…はい。あ!ウォード家のお金は一切使っておりません。私の個人的なお祝いの気持ちとして用意させていただきました。…迷惑でしたでしょうか?」
ノヴァの問いにレドモンドは家のお金を無断で使ったと思われたと思ったようで、弁明をしながらも表情は段々と暗くなっていく。
「否、迷惑ではない。気持ちは嬉しい。」
「レドモンド。素敵なお花を贈ってくれてありがとう。」
そう言えばレドモンドが綺麗なお花を用意してくれたことへの感謝を告げていなかったと思い、お礼を伝えるとレドモンドの表情が少し明るくなった。
問題はあるけれど、飾られた花達からはお祝の気持ちが凄く伝わってきた。
その気持ちが籠った花を見て、とても嬉しい気持ちになったことをまず感謝しなければいけなかったなっと一人反省。
「そうだな。レドモンド感謝する。」
ノヴァもそう思ったようで、僕に続いてレドモンドへ感謝を告げれば、彼はニコリと笑み小さくお辞儀をした。
「今回君を呼んだのは飾られていた花が精霊の花だったからだ。どこで手に入れてきた?」
「あぁ、そのことでしたか。実はホルス様に何か贈り物が用意できないかと相談しましたところ、あの花が良いのではないかとご教授頂いたのです。人族からすると珍しいから驚くぞっと。」
しばらく姿を見ていないホルス様の名前が出てきてピクンと体が反応してしまった僕はノヴァにクスっと笑われてしまった。
仕方ない。あの肉体美をしばらく見ていないのだから。
ホルス様は僕の護衛をしてくれているけれど、あの人の勤務形態は自由だ。
ドラゴンを人間の常識やルールに縛るわけにはいかない。
それにお給料はお小遣い程度で良いって言われてる。
あんまり人間の通貨を持っていてもホルス様には意味がないからって。
ホルス様の名前に引っ張られてしまったが…レドモンドの言い方はなんか…
「理由は分かったが、だからと言ってあの花は簡単に用意できるものではない。どのルートから手に入れた?」
「んー…もしかして…レドモンドは人族じゃないんじゃ?」
ノヴァが何か言ってるなぁっと思いながら、考え付いたことをポツリと口にするとレドモンドは意味ありげに笑った。
「…」
「「…」」
何も言わないけれど…この沈黙は肯定と捉えて間違いないだろう。
「…そうか。あの花は全て私達の自室に飾らせてもらう。いいか、人族が珍しいとする植物を今後人目のある所に出すな。良からぬことを考える輩はそこかしこに居る。最悪お前が捕らえられ攫われるやもしれん。」
「御意。」
ふぅっと息を吐き出したノヴァはレドモンドにそう言い聞かせ、僕もそれに頷く。
レドモンドを返して部屋に残った僕とノヴァとヨハネスは互いに視線を合わせ頷く。
彼はたぶん精霊族だ。
あなたにおすすめの小説
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】
本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。
Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited.
© 魯恒凛 / RoKourin
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
推しの運命を変えるため、モブの俺は嫌われ役を演じた
月冬
BL
乙女ゲームの世界に転生した俺は、ただのモブキャラ。
推しキャラのレオンは、本来なら主人公と結ばれる攻略対象だった。
だから距離を置くつもりだったのに――
気づけば、孤独だった彼の隣にいた。
「モブは選ばれない」
そう思っていたのに、
なぜかシナリオがどんどん壊れていく。
これは、
推しの未来を知るモブが、運命を変えてしまう物語。
事なかれ主義の回廊
由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・