王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第4章

早く消し去りたい甘い言葉


『ガーネット!!』



目的の地へ辿り着いて僕達はククちゃんがすかさず展開してくれた氷壁の裏に着。

ホルス様とククちゃん達も氷壁の近くで、ガーネット達からは距離を取って見守るスタイル。



ガーネットは現れた旦那様にむっとして顔を背けるが、飛んで逃げる元気はないようで地面に伏したまま。

そんなガーネットを見てあわあわと心配しまくっている旦那様。





『こんなに弱って!!ガーネット、お前は誤解してる!俺は浮気などしていないぞ!!』

『ふん!私見たんだから!若い子と楽しそうに飛んでたじゃない!!』

『あれは別の火山から来た子で道に迷ったと言うから案内してただけだ!』

『それにしては随分と笑ってたわよね!?』

『お前と子の話をしてたんだ!』



旦那様が頑張ってガーネットに誤解していることを告げるが、ガーネットは頑なに誤解じゃないと言う。

ヒートアップする2体の影響で氷壁が少しずつ溶けてきているがすぐ傍に居るククちゃんが程よい冷気を送ってくれるから暑さは感じない。


ラプラス様もノヴァ達もレッドドラゴンの夫婦がどんな会話をしているのか興味津々の様子だけれど、あの痴話喧嘩の内容を口にするのは嫌だ。




『…例えばどんな話?』

『凄く情熱的な妻がいて、最近子を産んでくれたことと生まれる子がどんな子になるかとかそう言ったことだ!な?誤解だろ?俺にはお前だけなんだ!!』


『へー…それ、ほんとなの?』


『本当だ!』


『龍神様に誓って?』


『誓う!』





売れないラブコメみたいな会話をずっと耳にして砂吐きそう。


僕もノヴァと周りを気にせずイチャイチャすることがあるけれど…今度からは気をつけよ。








「何か…解決したっぽいよ。」


へへっと笑って告げた僕に、ノヴァ達は詳しく聞きたそうにしながらも僕の微妙な表情にその気持ちを抑えてくれた。

だけどラプラス様にはそんな僕を気遣う必要も義理もないのでぐいぐいくる。



「ドラゴン夫婦の仲直りの会話とは!?」

「…帰ったら紙に書いて提出します。」

「??分かりました。楽しみにしております!」




何とか口からあの会話を再現することは免れたけれど、この後紙に書き起こさなくてはいけないと思うと憂鬱。

でもでも…口にするよりは断然マシだしたぶんその報告書はノヴァも見たいだろうし。




未来の自分の精神が心配だけれど、もう未来の自分に頑張ってもらうしかない。












そんなこんなでまだ少しツーンとしたままのガーネットだったけれど、旦那様に力を分けてもらって夫婦と卵の子揃って元の住処へと帰って行った。


その夜


ラプラス様の沼地の屋敷にて



疲労困憊のホルス様は小さなドラゴンの姿で僕の腕に抱かれて微睡んでいる。

どうやら僕から神力やら魔力やらを吸収しつつ眠っているらしく体から魔力が抜けていく感じがするが、未だに魔力量が多くそれが原因で体調を崩す時もあるくらいなので僕としては全く問題ないどころか貴重な小さきホルス様を抱っこできるし一石二鳥な感じである。



ノヴァもホルス様の今回の心労を思ってか僕がホルス様を抱いて連れ歩いていることに特に何も言ってはこなかった。

人の姿だと嫉妬するけど、ドラゴンの姿だったら対象外なのかもしれない。




緊急の用事が終わって、忘れていた食を摂取してから僕達はそれぞれ与えられた部屋に戻り休息をとることになったのだが…僕は今、机に向かい心を無にして報告書を書いている。

膝の上で安らかな寝息をたてるホルス様だけが僕の心を癒してくれている。





「…ルナイス、もう寝よう。報告書は明日にでも…」


「いや…もうあの他人の甘ったるい会話を記憶していたくない。早く消去したいから仕上げさせて。」


「あ…あぁ。」



あまりの僕の虚無顔にノヴァが声をかけてくれるけれど、僕は今夜報告書を仕上げてしまいたかった。

あんな使い古されたような少女漫画のセリフみたいな会話を早く僕の海馬から追い出したい。



無心であの時のレッドドラゴン夫婦のやり取りを字におこしていき、やっと報告書が終わったという時には既に夜も深い時間だった。

膝の上で寝ていたホルス様は何時の間にか居なくなっていて、ぐぅーっと真上に上げて伸ばした掌にすっと別の手が絡まってきて驚きすぎて「わっ!」と大きな声を出してしまった。




「お疲れルナイス。」


「ノヴァ…あ…もしかして部屋をあっためてくれてたの?」


「あぁ。ホルス様はあそこに。」



僕の手に絡まってきた掌はノヴァのもので、声を掛けられてやっと部屋が暖かい事に気が付いた。

ノヴァが指さす方にはふかふかの布が詰められた籠があり、そこに小さいドラゴンの姿のホルス様が気持ち良さそうに眠っていた。





「寝るか?」


「うん。」



僕が報告書を書き終えるのを待ってくれていたらしいノヴァの問いかけに申し訳ないと思いつつも嬉しくて、僕の掌から離れていった手が再び僕に差し伸べられたので、今度はその手に僕が手を絡ませる。

一緒にベッドの中に入り毛布をしっかり被って二人隙間が無いくらいくっつく。


僕より体の大きなノヴァが僕を隠すように包み込んで寝るので、それが凄く心地良くて僕はいっつもすぐに眠りについてしまう。


でも今日は…




「ノヴァ…ありがとぉ。」

「っふ…おやすみ。」

「ん。」


報告が終わるまで待っててくれたこととか、僕の行動の手助けをしてくれたりとか…いつも甘えちゃうけど、それは当たり前のことじゃないって分かっているからお礼はちゃんと伝えたい。

ノヴァに頭を優しく撫でられて、僕は今度こそ睡魔に抗うことなく夢の世界に飛び込んだ。






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