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第5章
姫ポジのヒュー様
しおりを挟む魔界に仕置されたアイダオ国からの刺客はぐっと減り、最近では攻めて来る国もなくにぃ様達もお家に帰ってベッドで眠れるようになり、以前より顔色が良くなってきた。
アイダオ国が余裕ないうちにアーナンダ国からは数名の偵察部隊を送り込んでいて、アーナンダ国へ刺客を送り込んでいる証拠や他国にとって脅威となりうる所業の証拠などを集めているそうだ。
そして近々アイダオ国にアーナンダ国の王国騎士団が攻め込み、もうアーナンダ国の占領地にするって結論が出たみたい。
何回追い払っても鬱陶しいから、もうちょっかいかけてこれないように取り込もうってなったんだって。
にぃ様が所属する近衛騎士団は有事に備えて国からは出ないから今回僕の近しい人でアイダオ国へ行くのはヒュー様だけ。
ヒュー様を気に入っているレッドドラゴンが一緒に行きたがっているようだけど、国外で共に戦うとこれまた周りの国が五月蠅いので連れていけないのだが…それならばとレッドドラゴンはヒュー様が行けないように自分とヒュー様に誰も近づけないように周りに炎の壁を作り出してしまい、急遽僕が呼ばれることとなった。
『あーあー…今すぐヒュー様を解放してくださぁい』
『ん?この声は愛子か?愛子の頼みでも吾輩はこやつを戦場には行かせんぞ!!』
炎の壁の向こう側にいるレッドドラゴンに声が届くように念話でヒュー様解放を促すが、レッドドラゴンはグゥロロロロロ!!と威嚇の声を上げ炎の壁の威力を更に強めた。
ヒル侯爵家の庭は広いがこのままでは色んなものが燃えちゃうので、周りでは水魔法適合者の方々が控えて飛び散って木に燃え移りそうな炎の種を消している。
結構な大事だがヒル侯爵様は豪快に笑っている。
「ははははは!!ド、ドラゴンに囲われるとは!!あははははは!!」
どうやら姫のごときドラゴンに守られている我が子が面白くて仕様がないらしい。
そんな侯爵様の様子に周りも焦った様子はなく、ドラゴンの炎の威力に目を輝かせて触ってみてはあちちっと離れたり、分析したり自由だ。
唯一顔面蒼白になっているのはヒュー様に出陣の準備をするようにと伝令をしにきた王家の使いの者で、彼はすごく心配そうに炎の壁を見ている。
あ、もう一人顔面蒼白の人が来た。
「ヒュ―様!!」
ロザリア様がスカートの裾を上げて走ってきて、そのまま炎の壁に突っ込もうとするから流石に周りの騎士達が羽交い絞めにして止めている。
ご令嬢を羽交い絞め…
「離しなさい!!ヒュー様を助けなくては!!」
強い口調で周りに言い、跳ねのけようと暴れるがそこはヒル家で鍛えられている騎士達。
更に力を強めてピクリとも動けないようにしている…
あれはいいのだろうか?と首を傾げ侯爵様に視線を向ければ気にしなくていいと顔を横に振られた。
ま、とりあえず大丈夫そうなので本題の方へ
『ドラゴンさんはヒュー様が負けるとお考えなのですか?ヒュー様は強いから大丈夫ですよ』
『こやつが強いことなど吾輩が一番知っておるわ!しかし人間はすぐ怪我をする!吾輩はこやつが血を流すことが許せんから吾輩を連れていけと言うておるのにこやつときたら頑なに連れていけんと首を振る!』
ヒュー様ってお姫様ポジションだったっけ?とつい笑いがこぼれる。
ロザリア様しかり、レッドドラゴンしかり、まるでヒュー様を高貴なご令嬢のように扱っていて、そのヒュー様は筋骨隆々な逞しい王国騎士団副長であるのだから笑わずにはいられない。
『おいルナイス。お前今俺の事馬鹿にしただろう?』
ふっとレッドドラゴンとは違う声の念話が頭に届いてビクッと体を揺らす。
ドラゴンとの会話はヒュー様には伝わっていないはずなのに何故分かったのだ。
『何かそんな感じがした。それよりもこいつに伝えてくれ。無傷で必ず帰ってくると』
『その言葉を彼は信じてくれるでしょうか?』
『それはお前の説得次第じゃないか?』
『僕がヒュー様に入れ込んでいる彼を説得できると?』
『入れ…あぁ。お前が実は人を誘導するのが上手いことは分かっているからな』
『何のことでしょう?』
僕はヒュー様の言葉に首を傾げて、返ってこなくなった念話に改めてレッドドラゴンを説得するため念話を送る。
『ヒュー様から伝言です。無傷で必ず帰ってくる、だそうです』
『少し前に油断して頬を怪我しておったくせに』
レッドドラゴンから返ってきた言葉にぶっと下品にも噴き出してしまった。
ほ、頬のちょっとした怪我でこの扱い。
「離しなさい!ヒュー様今参ります!」
いつもは落ち着いていて聡明なロザリア様も姫を救う騎士のごとくで本当に面白い。
面白いのだけど、そろそろ帰りたいんだよね。
今日から実家を離れてノヴァと一緒にお家に帰る予定だし。
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