王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第5章

ヒル侯爵家帰還

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アーナンダ国の王国騎士団がアイダオ国へ進軍してから一月。



やっとヒル侯爵様とヒュー様が帰還され、今日は二人と夫人達も合わせて皆でチルを迎えに来る予定だ。

チルはウォード家にいる間、自主的にも家庭教師からも積極的に知識を学び、そしてノヴァからは魔法を学んだ。
休憩時間を僕が声をかけて作ってやらなきゃいつまでも勉強してそうな勢いだった。


それくらい今のチルは自分の武器を欲していたのだと思うと微笑ましいような切ないような…



休憩時間には家に来るパンたちドラゴンと遊ぶ機会が何度かあって、最初は幼くても大きな体をしたドラゴンに怯えていたけれど、ドラゴン達もそんなチルに無暗に近づかず優しく接してくれたおかげで今では背に乗って辺りを一周するくらいには仲良しになっている。

昨夜は夕食の席で、迎えが来ることを知ったチルは嬉しそうにしながらもドラゴン達と遊べなくなることに凄く残念がっていた。






確かなことは分からないから昨夜はチルに言わんなかったけど、ヒュー様はレッドドラゴンと相性が良いようだし、そのうちヒル家にもドラゴンが住まうんじゃないかなって思ってる。

僕としてはレッドドラゴンはあまり賢い生き物でないから、そこが心配の種ではあるのだけど…


まぁ…その辺りはヒュー様がこれからどうにかしていくと思うし。











「ルナイス、チル様。ヒル侯爵家の皆様が迎えに来られました」


チルと一緒にドラゴンの背を水で濡らした布でゴシゴシと拭いてやっているとノヴァがヒル家の到着を知らせにきてくれたので、急いでチルと僕は部屋に戻って服を着替えて、ヒル家の皆様が待っている応接間へと向かう。





「「「チル!!」」」

応接間に入ってすぐにヒル侯爵様と夫人、それからヒュー様が立ち上がってヒルを抱きしめた。


ロザリア様は少し離れた所でそんな家族の再会を穏やかな目をして見守っている。





「父上、兄上…ぶ、無事で…無事でよがっだぁ!」


ヒル侯爵様の腕から解放されたチルがヒル侯爵様とヒュー様を見て、途中までは頑張って涙をこらえ無事の帰還に対する挨拶をしようとして、しかし我慢ができず号泣しながらの挨拶となってしまった。

そんなチルのことを今度はヒュー様が逞しい腕で抱きしめてヒックヒックとしゃくりあげているチルを優しく宥めた。






チルの涙が落ち着いた頃、座るように促して使用人に用意させた簡単な軽食を食すよう促し、ウォード家に居る間のチルの頑張りを皆さんにお話しした。

もちろん僕が能天気な公爵令息だとチルに思われていたことは内緒にしたのだけど、武器は剣だけではないのだと僕に教えられたと興奮気味に話すチルによってヒュー様には何となく察せられているような気がする。


今はチルの話に聞き入ることに夢中になっているから何も言ってこないが…そのうちどこかで揶揄われそうである。






いっぱい泣いて、いっぱい食べたチルは安心からか片手にパンを持ったままコクリコクリと船をこぎだし、数秒後には深い眠りの世界へと旅立ってしまった。




「家で中学年の授業は受けていたので学園に戻ってもチルが勉強で困ることはないと思います。ちょっと心配になるくらい頑張っていたから寧ろ戻ったら授業を物足らなく感じるかもしれませんね」

ふふっと笑って伝えると、侯爵様も夫人もありがとうっと笑って下さった。

ヒュー様は腕を組んでうんうん頷いているけれど、頑張ったチルのことを凄く誇らしく思っているのだと伝わってくるから面白い。





「ドラゴン達の背に乗って遊ぶのが楽しかったらしく、侯爵様方に会えるのは嬉しいけれどドラゴンに会えなくなるのは寂しいそうですよ」


「あぁ…ルナイスあのドラゴンはどうだ?」



「あぁ、あの子ならホルス様達からしっかり躾を受けたようで大人しくしてましたよ。今日は家族の再会の場を邪魔するなっとリーダーに言われて何処かへ連れていかれてますけど……どうやら我慢できなかったようですね」




話している途中で侯爵様方のいる向こう側の窓からのぞく目を見つけ苦笑いが零れる。


僕の言葉に勢いよく振り向いたヒュー様はばっと立ち上がると窓を開けてドラゴンの顔をわしゃわしゃーっと撫でくり回した。

どうやら会いたかったのはドラゴンだけではなかったよう。







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