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第5章
つい口から出た気持ち
お腹が落ち着くまでのんびり過ごした後、僕達は馬に乗ってお散歩をすることにした。
厩舎がユエのお家の近くにあって、僕に気が付いたユエが自分が僕達を背に乗せて行く!と張り切っていたけれどそれを振り切って馬に乗ったのには少々心が痛んだ。
ホルス様はのんびりおねんね中であったが騒ぐユエの声を聞いて起きてきてくれたので助かった。
ユエの背に乗ってのお散歩でもよかったのだけど、朝から目立ち過ぎるのはちょっと嫌だった…特に今日は。
『こやつは我が相手をしよう。気にせず行ってくるといい』と言ってくれたホルス様は、久々のにぃ様との時間を静かに過ごしたいと思っている僕の気持ちを、汲み取ってくれたのだと思う。
さすがホルス様。
近くにあるちょっとした泉まで馬を走らせて、泉で馬を休ませがてら近くの大きめな石に座る。
「思い返したら、にぃ様とここまでしっかりと休日を一緒に過ごしたことってなかったですね」
困った時や寂しく思った時はどんなに忙しくても幼い頃からにぃ様は傍に居てくれたように記憶しているけれど、改めて考えてみると休日を丸一日二人きりでゆっくりと過ごしたことはなかったと思う。
「この歳になってやっとかと思うと…複雑だ」
「ふふ…にぃ様は絶対そんなことないっておっしゃるって分かっているのですが、僕はずっと僕のことでにぃ様が寂しい思いをされていないか…辛い気持ちを隠されているのではないかと後ろめたい気持ちがあったんです。ずっと謝りたかった。この謝罪が僕の自己満足であると分かっていながら…僕はにぃ様に謝罪をすること以外の言葉が見つからないのです」
ふっと言うつもりはなかったけれど、ずっと胸に抱えていた思いが口からこぼれ出た。
にぃ様が驚いた顔で僕を見ているのが視界の端で分かるけれど、まっすぐとにぃ様の方を見ることが出来ない僕をしばらくじっと見ていたにぃ様は不意に立ち上がり、そして僕の目の前に腰を下ろした。
「忙しくあまり家にいない父上ともう二度と会えない母上…忙しくてあまり傍に居られない使用人に寂しさを感じたこともあったが、ルナイスがその寂しさを全て埋めてくれた。それどころか辛いと感じた時、何時も慰めてくれたのはルナイスだった。お前が俺を無条件に求め愛してくれたから俺は寂しくなかったし辛くなかった」
「っそんなの!…そんなの僕の方が!にぃ様が無償の愛を与えてくださったから!だから僕は前世からのなくならない穴を…寂しさを…悲しさを…虚しさを全部埋められた……前世含めて、初めて生きていたいって思えるようになった…にぃ様は僕の騎士で女神です!大好きにぃ様!」
感極まって目の前に片膝をつくにぃ様に思いっきり抱き着く。
昔よりも太く逞しい首に、あまり逞しくなれなかった僕の細めな腕を巻き付けてグスグスと泣きながら額を鎖骨あたりにぐりぐりとめり込ませる。
そんな僕を体感がしっかりしすぎているにぃ様は笑って抱きしめ、受け止めてくれて…こんな風に僕を思ってくれる人何て出会えて、傍に居て当たり前じゃないって分かってるからぎゅうって心が苦しいくらい幸せな気持ちになる。
厩舎がユエのお家の近くにあって、僕に気が付いたユエが自分が僕達を背に乗せて行く!と張り切っていたけれどそれを振り切って馬に乗ったのには少々心が痛んだ。
ホルス様はのんびりおねんね中であったが騒ぐユエの声を聞いて起きてきてくれたので助かった。
ユエの背に乗ってのお散歩でもよかったのだけど、朝から目立ち過ぎるのはちょっと嫌だった…特に今日は。
『こやつは我が相手をしよう。気にせず行ってくるといい』と言ってくれたホルス様は、久々のにぃ様との時間を静かに過ごしたいと思っている僕の気持ちを、汲み取ってくれたのだと思う。
さすがホルス様。
近くにあるちょっとした泉まで馬を走らせて、泉で馬を休ませがてら近くの大きめな石に座る。
「思い返したら、にぃ様とここまでしっかりと休日を一緒に過ごしたことってなかったですね」
困った時や寂しく思った時はどんなに忙しくても幼い頃からにぃ様は傍に居てくれたように記憶しているけれど、改めて考えてみると休日を丸一日二人きりでゆっくりと過ごしたことはなかったと思う。
「この歳になってやっとかと思うと…複雑だ」
「ふふ…にぃ様は絶対そんなことないっておっしゃるって分かっているのですが、僕はずっと僕のことでにぃ様が寂しい思いをされていないか…辛い気持ちを隠されているのではないかと後ろめたい気持ちがあったんです。ずっと謝りたかった。この謝罪が僕の自己満足であると分かっていながら…僕はにぃ様に謝罪をすること以外の言葉が見つからないのです」
ふっと言うつもりはなかったけれど、ずっと胸に抱えていた思いが口からこぼれ出た。
にぃ様が驚いた顔で僕を見ているのが視界の端で分かるけれど、まっすぐとにぃ様の方を見ることが出来ない僕をしばらくじっと見ていたにぃ様は不意に立ち上がり、そして僕の目の前に腰を下ろした。
「忙しくあまり家にいない父上ともう二度と会えない母上…忙しくてあまり傍に居られない使用人に寂しさを感じたこともあったが、ルナイスがその寂しさを全て埋めてくれた。それどころか辛いと感じた時、何時も慰めてくれたのはルナイスだった。お前が俺を無条件に求め愛してくれたから俺は寂しくなかったし辛くなかった」
「っそんなの!…そんなの僕の方が!にぃ様が無償の愛を与えてくださったから!だから僕は前世からのなくならない穴を…寂しさを…悲しさを…虚しさを全部埋められた……前世含めて、初めて生きていたいって思えるようになった…にぃ様は僕の騎士で女神です!大好きにぃ様!」
感極まって目の前に片膝をつくにぃ様に思いっきり抱き着く。
昔よりも太く逞しい首に、あまり逞しくなれなかった僕の細めな腕を巻き付けてグスグスと泣きながら額を鎖骨あたりにぐりぐりとめり込ませる。
そんな僕を体感がしっかりしすぎているにぃ様は笑って抱きしめ、受け止めてくれて…こんな風に僕を思ってくれる人何て出会えて、傍に居て当たり前じゃないって分かってるからぎゅうって心が苦しいくらい幸せな気持ちになる。
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