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第5章
魔界からの詫びの品
「ホーク子爵。貴殿がそのような発言をするとは思わなかった。しかし、貴殿の疑念は良く分かる。私もまだ若い彼等には重すぎる責任だと思った。…しかし、仲介人としてウォード伯爵を望んでいるのは紛れもない悪魔族側なのだ。ウォード伯爵以外の者であるならば友好的な交流関係になるのは難しいという答えを得ている。それは、ウォード伯爵が悪魔族にとって操りやすい人物であるからではなく、寧ろ簡単には掌で転がってくれなさそうなところが良いとのこだ」
「その悪魔族の言葉を信用できるのですか?」
「できる。なぜなら、ここに『ウォード男爵改め伯爵が仲介人となるのであれば魔界はアーナンダ国に門を開き、友好関係を結び、決して傷つけない。傷つけた場合にはこちらもそれなりの対応を図ることを誓う』という魔法誓約書があるからだ」
そう言うと国王様に近づいた宰相さんが差し出した紙をばっと開き、その場にいる全員に内容が分かるように広げて見せた。
ここからじゃ遠くて紙に書いてある内容までは読めないけれど、宰相さんが持ってる紙がただの紙でないことは紙から感じる魔力と文字から感じる魔力で分かる。
それに込められている魔力がそこら辺の人が適当に書いたものではないことも、あの紙から感じられる魔力で分かる。
「またこの契約書を我に持ってきた悪魔族マルコシアス殿は魔王から『最近部下や眷属共がそちらに興味をもち何度も界渡りをしているようで、迷惑もかけていることから契約とは別に詫びとしてこれを贈る』とこれを受け取っている」
少し僕達から視線を外してそう言う国王様と宰相さんが僕たちの前に出したのは1つの美しい剣。
その剣からは禍々しいほどの魔力を感じる。
あれはただの剣ではなく、魔剣だ。
それもすごいやつ。
これは僕達も事前に聞かされていなかったことで、じっと国王様と宰相さんに視線を向けるけど絶対に合わない。
矛先を変えてクラージュ殿下に視線を向けるけれど、こちらは顔には出していないが僅かな魔力の揺らぎから彼も初耳なのだと分かる。
「…それは、既に受け取ったのですか」
「…あぁ」
ホーク子爵の質問に頷く国王様にその場は再び静寂に包まれる。
ガチャ
「こ…国王様。ラプラス様がご到着されました」
そんな異様な空気感が漂う中、扉を開いた近衛騎士が一瞬固まってしまったけど、直ぐに気持ちを切り替えて職務を全うした。
素晴らしいと拍手を送りたくなった気持ちから、近衛騎士の口から聞こえてきた名前になるほどっと、この異様な空気を取っ払ってくれるだろう人物の名前にほっと息をつく。
「何をしているのです国王様。魔剣をそのようにしていては危険ですよ。早く鞘に戻した方が良い」
顔を見せたラプラス様は剥き出しの魔剣を目にすると国王様に鋭い視線を向け忠告した。
ラプラス様の言葉に宰相さんが慌てて鞘に戻している。
南の地を治めるラプラス様はあまり王都に現れないし、社交の場にも顔を出さなかったから初めてラプラス様を見る貴族達は国王様に対する態度に顔を険しくしている。
「それは魔王の魔力が込められているので魔除けに使えるでしょう。人間では満足に扱えぬ代物だ。鞘にしまい飾って置くだけにしといたほうがよいだろう。しかし、手入れはきちんとしてやらねば拗ねてしまうので気をつけた方が良いでしょう」
ラプラス様はそう言うと、今度はその鋭い視線を自分を訝しむ貴族達へと向けた。
「初めまして。私は南の地を国王様から任されているラプラスと申します。さて…貴方がたとは初対面のはずですが、何か気に触るようなことでもありましたか?」
そう言ってはっと鼻で笑うラプラス様に貴族達の額に青い筋が浮かぶ。
しかし、この場に居るのは選ばれた貴族。
声を荒立てるような事はせず、視線を逸らし素知らぬ顔をする者と「生まれつきの顔です故」などと誤魔化す者で、それをラプラス様は「そうでしたか」と更におちょくる事もしなかったから、何とかカオスな現場にはならないですんだ。
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